Last Update : 2011/8/23  戻る

あるぷすカンタービレ
2011年 7月12日〜21日

メンバー 作野

第一楽章 (アダージョ) ベルニナアルプス

7月14日朝8時過ぎガイドのTさんとサンモリッツ駅で待ち合わせ。9時ごろのベルニナ特急に乗車。9時40分ごろオスピツィオ・ベルニナ駅に着く。ここから薄いグリーンの湖水をたたえた氷河湖「ラーゴ・ビヤンコ」を右手に見ながらアルプ・グリュム駅までハイキングが始まった。残念ながら周りのベルニナ山群の頂きは雲に覆われ見えない。今日は雨模様、景色は望めなさそうであるが、登山道の左右は高山植物が今を盛りに咲き誇っている。日本では見たことも無い花がいっぱいである。ガイドは凄い。花の名前が次々に出てくる。特に印象に残ったのは「悪魔の爪」「スプリング・ゲンアチン」「バニラアイスのような香りのする花」。もちろんアルプスの代表的花である「アルペンローゼ」「トランペット・リンドウ」も。ビヤンコ湖の中ほどから急に雨が降り出した。ガイドの予想では今日は降ったり止んだりするが、ひどくなることは無いとのことで、皆の了解を得たうえでハイキングを続けることになった。峠を越えるころから雨は止み、イタリア側の湖が見えた。アルプ・グリュム駅に11時40分着。今日は御花見ハイクであった。駅からはパリュー氷河が間近に迫って見えたが、氷河の末端ははるか上で温暖化のせいかと思われた。

12時10分のベルニナ線に乗ってサンモリッツ方面デアボッレッア駅まで。そこからロープウェイでモンテラッチ氷河を見に行く。ベルニナアルプスの主峰ピッツ・ベルニナ(4049m)の山頂は拝めなかったが、そこから出るモンテラッチ氷河は雄大であった。ロープウェイの中で出合った女性の話では山頂駅からのスキー滑降は素晴らしいとのこと。私も若ければやってみたいと思った。

サンモリッツに3時頃帰れたので、ピッツ・ネイル(3057m)に行ってみることにした。全山スキー場といった感じ。そこここに穴があいている。マーモットの巣穴である。あちらこちらからマーモットのつがい、子供が見られた。我々はロープウェイであるが、マウンテンバイクで頂きを目指している二人が目に入った。ヨーロッパではマウンテンバイクが盛んのようだ。至る所で見かける。電車もバイクのしるしをつけた車両があり、停車してドアが開くとステップが出てくるのには驚いた。頂のシュタインバーグ(野生のヤギ)像は立派だ。雨もパラパラ降っているのでそそくさと4時半の下りの箱に乗る。雲の間から見えるサンモリッツ湖は神秘的だった。

第二楽章 (アンダンテ)ツェルマット

7月15日サンモリッツ10時02分発氷河特急でツェルマット行きに乗車。かの有名な世界遺産ランドバッサー橋を通りアンデルマットまで約5時間弱の列車の旅である。アンデルマットからバスでフルカ峠へ。運転手は急勾配の所々片側一車線になるような狭い道のヘアピンカーブをぐんぐん登ってゆく。途中、下りの慣れない東洋人の運転する乗用車とのすれ違いにはヒヤリとさせられたものである。下りの車は谷側を走るのであるが、谷側には路肩も無く、日本のようなしっかりしたガードレールも無く数メートルおきに高さ1mにも満たないコンクリートの杭が立っているだけ、その外は垂直に近い牧草しか生えていない木の無いスロープが数百メートル落ち込んでいる。そのはるか下方には牛が数頭のんびり草を食んでいる。恐怖ッ!!また、ここでもたくさんのマウンテンバイクにお目にかかった。フルカ峠を少し越えた駐車場にバスを止め、ローヌ氷河を見に行った。雄大な氷河である。しかし、温暖化の波は明らかで、現在氷河は「1996年氷河入り口」の看板から遠く後退していた。(まるで、俳優西村某のおでこのごとし。) 午後6時20分テーシュからツェルマットへ。その車窓から初めてマッターホルンにお目にかかった。ツェルマットに午後7時ごろ到着。夕食後、午後9時半、教会の横の橋の上から赤く染まるマッターホルンのアーベント・ロートを見にいった。きれいだ。晴れてくれて良かった。

7月16日午前6時、やはり昨日の橋の上から金色に輝くモルゲン・ロートが見えた。8時半ごろのゴルナーグラード鉄道の登山電車でゴルナーグラード展望台に向かう。右手にマッターホルンを見ながら、ゆっくりと登って行く。天気は素晴らしく良く、気持ちいい。途中、シュタインバーグ(野生のヤギ)が草を食んでいる姿が見えた。ゴルナーグラード展望台に9時過ぎに到着。360度の素晴らしい展望である。スイス最高峰のモンテローザ(4634m)、リスカム(4527m)、ブライト・ホルン(4164m)のどっしりとした質感が素晴らしい。モンテローザからのゴルナー氷河と合わせこれぞアルプスである。クラインマッターホルン(3883m)頂上はマッターホルン・グレーシャー・パラダイスとなっており、スキーリフトが掛かっている。スキーで来たいという思いが募る。そして、マッターホルンである。孤高を誇っている。先の山より標高は低いのであるが、さすが、スイスのランドマークである。美しい姿に惚れぼれする。目をさらに右に移すと、オーベル・ガーデルホルン(4063m)、ヴェルケンクルッぺ(3903m)、ツィナールロートホルン(4221m)、ヴァイスホルン(4505)が美しい。ツエマットの谷を挟んで、テェーシュホルン(4490m)、アルプウーベル(4206m)リンプフェシェルホルン(4199m)、シュトラールホルン(4190m)、まさに天空の楽園である。見とれてしまった。

10時10分ローデンボーデンへ向けて乗車。ローデンボーデン(2815m)からリフェルベルク(2582m)までの約1.5時間のハイキングが始まった。左手にモンテローザ・リスカム・ゴルナー氷河を見ながら、足元にはお花畑が広がる。日本では味わえない、まさに『アルプス』の景観の中でのハイキングである。リッフェル・ホルンではマッターホルンへガイドするため、岩登り技術を見極める試登が行われていた。我々のガイドの話では、マッターホルンに登頂するのに3〜4時間だそうで、ガイド料は10万円位とのこと。そうこうするうち、リッフェルゼー。 かの有名な逆さマッターホルンが映る湖である。残念ながら風が出てきて湖面に波が立ち、かつマッターホルンにも東面に雲がかかり「逆さマッターホルン」は見えなかった。しばらく待っていたが、諦めてウンター・リッフェルゼーに向かう。しかし、ここでも「逆さマッターホルン」は見えなかった。まさに天空のプロムナードを楽しみ、リッフェルベルクへ11時30分ごろ到着。マッターホルンを眺めながらビールで乾杯。ホテルで作ってもらった「おにぎり弁当」を食べる。至福の時である。

ツェルマットに2時前に降りたので、スネガ展望台へのケーブルカーに乗る。展望台は風が強くなってきており天気の変化が予想された。正面には東壁に雲のかかったマッターホルンが迫って、コーヒーを飲んでゆっくりする。3時に下山。

第三楽章 (アレグロ)シャモニー・モンブラン

昨日は良く降った。しかし、夜には止み午後9時ごろホテルからアーベント・ロートに輝くモンブランの雄姿が拝めた。

7月18日朝、シャモニー針峰群(2308m)はガスに覆われている。しかし、朝食時には時折エギュー・デュ・ミディの頂上が顔を出す。もしかして山の上は晴天か?と淡い希望を持つ。シャモニーのゴンゴラ駅を9時頃出発。下界は曇り、途中ガスの中、エギュー・デュ・ミディの頂上は晴れ。理想的な雲上の空中散歩になった。エギュー・デュ・ミディ(3842m)へのエレベータは3776m(富士山と同じ標高)から3842m展望台へ瞬く間に運んでくれる。ヨーロッパ人は凄いことを考えるものだとつくづく思う。展望台からは、ヨーロッパ最高峰のモンブラン(4810m)、そこから流れるボゾン氷河、グランド・ジョラス(4208m)、ドリュー(3754m)、ベルト針峰群、ダン・デュ・ジュアン(巨人の歯)(4013m)が手に取るように眺められた。また、遠くマッターホルンの雄姿も見えた。眼下には、3年前に滑ったバレーブランシュ、右手にジェアン氷河が広がっている。絶句、ただただ目を楽しませるだけである。そのあとは、モンブラン・パノラマ・テレキャビン(三連のゴンドラ)に乗ってジェアン氷河の上を移動する空中旅行としゃれこんだ。セラックや氷河のクレバスの上を渡る途中でゴンドラが何度か停止する時、目前にそびえる切り立った針峰群を霧が適当に覆い幻想的な景観を楽しんだ。イタリア側のポワント・エルブロンネ(3462m)まで素晴らしい空中遊泳であった。
クール・マイユールで昼食をしてモンブラントンネルを抜けてシャモニーへ帰り、ローヌ谷の展望を楽しみスイスへ戻った。

第四楽章 (アレグレット)グリンデルヴァルト

7月19日朝4時半ごろホテルの窓からアイガーを見てみる。昨日の雨は上がり、中腹から上がガスに覆われているが、映画「アイガー北壁」で恋人が待っていた「アイガー・バンドの明かり」が見えた。ラッキー!!雲が上がりつつある。朝食を終えた頃アイガーは山頂まで現れた。

8時半ごろの電車に乗りグルント駅へ。メンリッヒェン(2229m)までゴンドラに約30分乗る。メンリッヒェンでのベルナーオーバーラント三山であるアイガー(悪魔)(3970m)、メンヒ(尼僧)(4099m)、ユング・フラウ(乙女)(4158m)の展望が素晴らしい。残念ながらユング・フラウは恥じらってか顔(山頂)を見せてくれない。しかしユング・フラウ(乙女)の乳房に見られる真白な雪の三角のシルバー・ホルンが美しい。目をベルナーオーバーラント三山の左手に移すと、サイの角の形のヴェッター・ホルン(3692)、谷を挟んだ右隣のメッテンベルク(3104m)、シュレック・ホルン(4078m)が展開している。また、ベルナーオーバーラント三山の右手には遠くブライト・ホルン(3782m)、シルト・ホルン(2960m)も見える。

ハイキングはメンリッヒェンを10時ごろ出発した。クライネシャイデック(2061m)まで、アイガーを左前方に見ながらの約5kmの雲上のプロムナードである。ここでもアルプスの花の大群落にお目にかかった。目を遠くにやれば、背景にアイガーを従え、ユングフラウ鉄道(登山電車)が緑の牧草地をゆっくり走って行く様はまさに絵ハガキのような光景である。次第に雲が出てきてクライネシャイデックに着くころは雨がパラパラときた。(クライネシャイデック着12:00頃)

昼食後登山電車でスフィンクス展望台へ。その電車の中のDVDで「アイガー北壁を2時間47分で登った男」の放映があった。信じられない。ダブルアックスで北壁を攀じる姿はまさにスパイダーマンそのもの。途中アイガー・バンド駅に停まるも窓からは絶壁に雪が舞う他何も見えず残念。ヨーロッパ最高所にある駅ユングフラウ・ヨッホは気温−2°C、吹雪、期待したアレッチ氷河も何も見えない。ヨーロッパ最高所で絵葉書を出して、グリンデルヴァルトに帰った。

下の写真は、ハイキングコースからのアイガー、メンヒ。



作野 記


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