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ら・ねーじゅ No.246
1996.5月号


厳冬期の中央アルプス稜線から1,800mを滑降        

 ’96.2.24〜25                      

木曽駒ケ岳・黒川谷    

  藤田英明、三輪文一(ダンロップスポーツ)、梶浦(ダンロップスポーツ)



 中央アルプスでの山スキーはあまり馴染みがないのではないだろうか。もともと雪の少ない地域であり、また3,000m級の山岳だけに条件も厳しくなってくる。ただ今年は雪は多いので狙い目ではないかと考え、木曽駒に向かった。
 23日(金)の夜に車を走らせ木曽駒山麓の黒川平の駐車場に停め、テントを張って寝る。ここで芦屋から来た三輪氏と合流。ちょうど1週間前に伊那谷でもかなりの積雪があったようで、20cm程度積もっている。翌朝は見事に晴れ。北アルプスと違い、この時期でも晴天が多いのはありがたい。身支度を整えて8時14分発の朝一のロープウェイ行きのバスに乗り込む。バスの運ちゃんに上ではスキーはできないよと声をかけられ、あらためてこの時期にスキーを持ってくる人は珍しいことを実感。ロープウェイに行く途中道が1ケ所崩れており、200mほど歩いて別のバスに乗り換える。昨夏の豪雨で崩れたようだ。9時発のロープウェイで千畳敷へ。ここでも係員にどこへ行くのかと聞かれてしまう。

 千畳敷といえば、昨年ロープウェイ駅のすぐ前で雪崩が起こり数名が亡くなった事故があり、1週間前にも遭難があったので係員も神経質になっている。駅からはその雪崩を避け、下に迂回して稜線を目指す。トレースがあるかと思っていたが、誰も稜線を目指す人が無くバージンスノーにトレースをつけていく。雪はある程度締まっていて比較的雪崩の心配は少なそうだが気は抜けない。途中まではシール登高で、斜度がきつくなり雪も固くなってきたので途中からはシートラーゲンに切り替え、アイゼンとピッケルで登る。ようやく稜線に出て一息つく。幸い風もほとんどなく気持ちの良い冬山の景色を堪能する。眼下には千畳敷のカールが意外に近くに見え、伊那谷をはさんだ向こう側には甲斐駒、仙丈など南アルプスが連なりその後ろには富士山が顔を出している。宝剣山荘の横に荷物をデポし明日滑る黒川谷の源頭を見ながら空身で木曽駒山頂を往復する。

 この日は宝剣山荘横でのテント泊。ダンロップの超軽量ゴアテックステント、XGシリーズのフィールドテストでもある。食事を早めに済ませると、昨晩あまり寝ていないせいもあり早々と眠りにつく。・・・が10時過ぎからであろうか、風が出だした。ごうごう、ビュービュー、ばさばさと騒々しく、寒気も手伝って安眠できない。もうそろそろ夜明けかなと思って時計を見てもまだ日付が変わるか変わらないか、といった時間。本当に冬山の夜は長い。徐々に風は強くなり、テントを揺さぶる音と揺れで、まるで地下鉄の中で寝ているようだ。いい加減寝ているのに飽きた頃、ようやく夜があけ出す。幸い天気は悪くない。
 朝食を済ませ、いよいよ滑降にかかる。黒川の源頭に滑り込んで行くが、クラストした所でスキーが走りすぎ、シュカブラに突っ込むと引っかかるという状態で、快適には滑らしてくれない。ただ岩峰に囲まれた広大な源頭部を滑る快感はアルプスならでは。実はこのルートは10年ほど前に、私がまだ山スキー初心者だった頃、滑り出しのアイスバーンに歯が立たずあきらめて千畳敷に戻り返したことがあり、今回はそのリターンマッチなのである。10年前と違い、着実に谷を下っていく。途中2ケ所、夏場は滝になっている狭い急斜面を下るが、雪が適度に柔らかく無難に通過する。このあたりはアイスバーンだとかなり緊張感がありそうだし、雪の状態では雪崩の危険もある。

 急な箇所を過ぎればあとは沢身を下るだけ、と思っていたらこれがヤブスキー。そんなに混んではいないものの、枝をかき分けながら高度を下げる。もう少しで林道、林道に出ればあとは勝手にスキーが滑ってくれる・・・と我慢して下る。ところが林道に出たものの、これがひどいモナカ雪。斜度もあまりないので、ほとんど砕氷船のようにサンクラストした表面を砕きながら歩くような状態。愛用の板イエティはトップベントが少なく、板が思うように雪面に抜けずに苦労させられる。こうなると、滑りの楽しさなど無く、ひたすら高度を下げる事だけしか考えない。三輪氏が以前来たときは林道がカリカリで滑りすぎるような状況で、あっと言う間に下ったとのこと。雪質による所要時間の違いを痛感する。ようやく宮田高原への分岐を過ぎ、なおも我慢して七曲がり上部の1、100m地点まで滑り込んだ。ここからは昨夜とめた車が見える。つづら折れの急坂をスキーをかついで下り山行を終えた。

コースタイム
2/24
ロープウェイ千畳敷駅(10:00)−>宝剣山荘(12:30〜13:00)−>駒ケ岳山頂(14:00)−>宝剣山荘(15:00)

2/25
宝剣山荘(8:30)−>林道終点(12:00)−>宮田高原分岐(13:30)−>七曲がり上1,100m(15:00)−>黒川平駐車場所(15:30)

【概念図】


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