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ら・ねーじゅ No.247
1996.6月号


小蓮華尾根 鑓沢         
 白馬猿倉周辺                        
 ’96.5.2〜5                     


 発電所のある二股で、サングラスを忘れて買いに戻った者。杓子沢を滑り降りていった者。二股から湯ノ入沢を直接上がって来た者。単独者が目に付く。私もその一人である。単独行は、どう考えても好ましいものではない。所詮、山登りは独裁的。体力、目的、休暇なにもかも一緒になるような仲間なんて、そうそういるもんじゃない。連れのいるパーティーを見ては、どちらが無理しているんだろうか。単独者を見ては、きっと我が儘なんだろうなと、いらぬ詮索をしつつ過ごしたGWであった。

5/2(木)
 唐松、八峰キレットから白馬を縦走する二人を、八方のゴンドラ乗り場まで送って、一人猿倉へと車を走らす。もしかしたらとは思っていたが、二股の所で無情の車のゲート止め。初日の猿倉〜雪倉避難小屋の行程は、ここで吹っ飛んでしまう。一週間前までのGWは全般的に好天という予報に、心弾ませていたが、間際になって、後半は良くなさそうということで意気消沈していた上に、気分はますます暗くなるばかり。小雨混じりの曇天の中、5日分の食料やら装備で膨れ上がった重荷のザックに、しっかり除雪してある林道のおかげで、スキーの板まで担いで、トボトボと歩き出す。猿倉山荘の頃には、少しづつ天気が良くなってきたとはいえ、この足取りでは、白馬山頂さえ危ういのではと、すっかり日和わってしまった。苦労して上がっても、明日以降のフル行動は無理と、白馬尻末端で、左手の台地にテントを張った。ドカッと腰を下ろすと、あざ笑うかのように陽が射し出す。


5/3(金)
 夜半からまさかの強風。一時は雷や雨までも降り出す。朝まで恐ろしいほどの風にテントごと煽られる。動こうものなら、そこからテントが浮いてきそうで、寝ながらテントの片側を手で押さえるしかなく、とうとう寝られず仕舞いだった。明るくなって、少しずつ風が弱まってきた。テントごと飛ばされても仕方ないような烈風だった。

 起きて、9時頃まで雪を掘り出し、テントがすっぽり入る大きさの穴を掘り出す。遅い朝食を済ませ、出発。大雪渓を登るパーティーや、主稜に取付くパーティーなど、一足先に動き出した様だ。今日は、とりあえず小蓮華尾根を登ろうと、白馬沢を横切って、小蓮華の小鼻のように張り出した、左側の小尾根に取付いた。その先の広い斜面を、10回程のキックターンで、尾根の樹林帯に続く際に到着。急斜面となり、アイゼンに履き替えた。雪面を左上すれば、また少し緩くなる。尾根の左側を暫く進む。やがて尾根筋の雪面を行くようになると先は雪の消えたザレ場となるが、構わずスキーの板を引きずった。岩場の際を右側から、はい上がり、一旦岩稜を越すと、乗鞍岳への稜線に合する。急に風が冷たくなり、薄手の手袋ではすぐ手がかじかんでくる。稜線は緩いが、クラストした斜面は、カリカリに近い。休む間もなく、滑降姿勢に入り滑り出す。小蓮華尾根の降り口に立つが、さすがに急すぎる。少し回り込んで、一つ下の岩の基部から、斜滑降で小蓮華尾根に入る。岩場の肩で、スキーを外し、ザレ場を両脇に板を抱え込んで歩く。金山沢に続く緩い雪面となり、また緩くなりほっとする。ここから思いのままのスキー滑降が楽しめる。白馬沢側になると、斜度が出てくるが往路からそれて、豪快なスキー滑降を味わう。少し崩れ落ちたりもするが、まず問題ない。白馬沢に降りる最後の急斜面では、さすがに2〜3m幅で表層が崩れ落ちた。白馬沢は大きなデブリに埋まっている。デコボコを避けて滑る。足に疲れがきてるが、滑りに大満足。今日、入山してくる合宿隊が、猿倉台地にベースキャンプを張っているはずだ。連絡を取るため、杓子尾根の斜面をシールを付けて登る。板の水分をしっかり拭き取らなかったため、途中で剥れてしまった。乗越しから、長走沢へ滑り込み、猿倉台地でビールをいただく。明日は杓子沢か鑓沢を滑ると伝えて、自分のテントに戻った。


5/4(土)
 大雪渓はここ例年になく、デブリによるうねりが少なく、登り易かった。白馬の主稜も今日は、階段状でノーザイルで登頂したとか。杓子の頂上付近も、夏山と見間違えるような賑いぶり。稜線上は思いの外、雪が少なく、ほとんど夏道が出ておりアイゼンなしで、トラバース道を歩けた。重荷の縦走パーティーと、杓子尾根を上がって来たというスキーの2人組とほぼ同時に、白馬鑓を目指す。ほんの一時、冷たい雪が降る。稜線上部は少し、ウインドクラストしており、天狗とのコルから滑り出す。二股、南股入、湯ノ入沢を直接上がって来たという単独者と、すれ違う。広い斜面に出ると、雪質はすぐ柔らかくなり、続いて滑り込む沢筋も滑りごたえのある斜面だ。

 鑓温泉は、雪の穴の中に、屋根の一部が見えていた。女性が入浴中ということで、少し待たされるが、2人組も降りて来て、男性タイムにして貰う。かなり熱めの湯だった。下から何人も上がって来て、さらし者になってしまう。さっぱりした気分で、鑓沢を再び滑り出す。杓子沢を過ぎてから、シールを付けて、小日向に向かわず、双子尾根の樺平に続く尾根を上がった。半分ほど登りかけた頃、単独者が湯ノ入沢にそのまま滑り降りて行く姿が見えた。六左エ門滝あたりを、右岸に残った雪をうまく使って、滑り降りていった様だ。樺平へは、少し急で雪が割れかけている場所もあったが、ほぼ尾根どうしにシールを付けたまま、小一時間程で登り着く。今日も長走沢から、猿倉台地へと滑った。冷えたビールをご馳走になる。明日は、どうやら天気が崩れそうだ。白馬尻の自分のテントを撤収して、猿倉台地に合流した。


5/5(日)
 霙で、小日向山ぐらいの高さの樹林が雪化粧したが、雨から晴れ上がり出すと同時に木々の白さも消えた。昼近くになって、下山。駐車場になるヘリポートの下まで、滑る。先週同様、大町温泉郷に出る。こぶし通り、満開の桜通り、釣り掘のあるあたりまで散歩したら、温泉で温まった体が冷えきってしまう。もう一度、温泉に入り直して、また同じ店で打ち上げ。採りたてのタラの芽を持って来てくれた人がいて、一部お店で賞味させて貰い、お土産に購入する。同様に、真夜中になって走り出す。まだ道路混雑はなさそうなので、高速道を使って帰った。


 コースタイム
5/2(曇りのち晴れ)
二股(8:15)−>ヘリポート(9:15)−>白馬尻(10:50)

5/3(晴れ)
起床(6:00)・出発(9:35)−>2,000m付近(10:55〜11:30)−>小蓮華山(14:00〜14:15)−>白馬尻(15:00) −> コル −> 猿倉台地(16:00〜16:45)−>白馬尻(17:10)

5/4(晴れ)
起床(4:00)・出発(6:45)−>小雪渓下(7:20)−> 鑓ケ岳(10:20)−>鑓温泉(11:30〜12:25)−> 樺平 −> 猿倉台地(14:45)

【概念図】

【ルート図】


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