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ら・ねーじゅ No.250
1996.9月号


岩木山  蔵田道子、白沢光代              
 ’96.3.26〜29    計2名                 


3/26(火) 岳Aコース                  
 夜行のノクターンで弘前バスターミナルに定刻より早く7:00に着く。
国民宿舎岩木荘行きは8:00なので朝食を食べられる所を探す。近くに 
ビジネスホテルを見つけ、朝食を食べさせてもらった。         
 岩木荘に着いてスキーを受け取る。空いているからとすぐ荷物を部屋に 
置かせてもらえた。スカイラインスキー場まで送迎を頼む。       
 麓から見ると頂上付近に雪煙が上がっている。雪上車の切符売り場の人 
に「今日は風が強くて駄目だよ。」と言われたけれど晴れているので、登っ
てみる事にする。弥生コースに行くと一応届ける。           
 雪上車を降りてリフトに添って坪足でスキーを引きずって登る。7割ぐ 
らい登ると、風が強く、雪もかちかちになり登るのも恐い感じになる。リ 
フトの鉄塔の裏の平地に入り込んで、やっとスキーを付ける。リフトの終 
点付近まで滑り降りて見上げると、天候はさっきより良く思える。再挑戦 
しようと今度はアイゼンを始めから付けて登る。しかし、始めと同じ辺で、
再び強風と硬い雪に会い、今日はあきらめる事にする。         
 雪上車の通っていないAコースを滑る事にする。上部は粉雪もあり楽し 
めた。でも2万5千の地図にはAコースが無いので現在地も判らず、シュ 
プールを辿って行くと、昨年泊まって見覚えのある岳温泉に出てしまった。
岩木荘に「岳温泉のバス停にいます」と連絡する。フロントに居た人が迎 
えに来てくれた。                          


3/27(水) 弥生コース                  
 今日は稜線まではっきり見える穏やかな日だ。雪上車の切符売場の人に 
「昨日はどこを降りたのか。2時過ぎにリフトの近くに居たそうだから山 
越えはしてないとは思ったけど。」「岳温泉にでました。Aコースです。」
「心配して探したけどAコースの入り口には跡が見つからなかった。岩木 
荘に電話したら、連絡があって迎えに行ったと言われて安心したよ。」  
「すみません。今度は必ず連絡します。昨日は風が強く駄目でした。」  
 アイゼンを付けスキーを引きずって登る。好天を逃すまいとリフトの塔 
に付いた雪を落している人々がいる。もうすぐ春スキーがオープンする。 
バスとリフトが動くのだ。鳥の海の上の辺りで先行する人を1名見る。彼 
の足跡はゲレンデスキーの靴でも無く兼用靴のでも無い。何をはいている 
のだろう。                             
 山頂に中年の男性が居た。彼は見慣れないゴムの雪靴を履いている。写 
真を撮るために来たという。雪上車の乗り場に車を置いているので、元に 
戻るそうだ。ザックからゲレンデスキーの靴をだして履き換えている。弥 
生コースについて、教えてもらう。「登って来たルートはシュカブラだら 
けだけど、北側に山頂から滑れる斜面がある。1段降りてからトラバース 
して行くと、蝙蝠が羽を広げたような形の沢の上部に出る。沢を滑ると良 
い。今年は雪が多く最後の橋が分かりにくいかもしれない。橋の所で左に 
上がって滑ると集落にでる。」                    
 上部は本当に急だ。下が見えないくらい。彼が下着いたのを確認してか 
ら、後に付いて行く。1段降りて傾斜が少し緩くなった所で彼と別れる。 
 斜滑降を続けると、白い尾根が見えてきた。「この尾根かなあ?近すぎ 
るね。これじゃないね。」二つ目の尾根が見えた所で谷の源頭に出る。ま 
さに蝙蝠が羽を広げた形の、木が一本も無い大斜面。          
 この大斜面にたった二人とはなんと贅沢なことか。源頭で一休みして行 
動食をとる。蔵田さんは「どこを滑ってもいいのについ似た所を滑ってし 
まう。」と苦笑。滑る時に削った雪が雪煙になって斜面を這う。我々は点 
のようだ。                             
 谷に入ると狭く、向きも頻繁に変わり×印が付いた木が何本もある。× 
印の下に危険と書いてあるのを見つけた。忠実に谷を下る。谷が終わる辺 
から、トレースが何本も現れた。雪を被った橋の所から左に上がる。トレー
スについて行くと、林檎畑に出た。そこまで車1台分の幅だけ除雪されて 
いた。                               
 林檎の枝を避けながら、道に添って行くと、神社のある集落に出た。電 
話を借りて岩木荘とスカイラインスキー場のパトロールに連絡した。   


3/28(木) 百沢コース                  
 晴れてはいるけれど、頂上付近に雪煙が上がっていて、風が強い。長平 
コースに行きたいけど駄目かも。                   
 雪上車を降り頂上を見上げる。晴れているけれど、風が強い。まだ滑っ 
ていないBコースを降りてから、再チャレンジと決める。雪上車の後を滑 
るはずなのにコースを外して滑っているうちに、ルートを見失ってしまっ 
た。雪上車の古い跡を見つけ辿ると、見慣れぬ集落に出た。人が居る気配 
は無く別荘地らしい。影から野兎が飛び出したのにびっくりした。地図を 
頼りに歩く。川に遮られ、道路に出るとぶなこ食堂の横に出てしまった。 
 再び雪上車に乗る。終点から見上げると、風が強いが晴天だ。アイゼン 
を着けスキーを引きずり、トラバース気味に、西法寺平を目指して登る。 
リフトのある斜面から沢に入ると、下から吹き上げる風が強い。この風が 
山頂に雪煙を作っているのだった。リフトの終点の高度に近付いた辺りで、
あまりの風に長平コースを断念し勝手知る百沢コースに向かう。鳥の海の 
火口から鳥海山側に回り込め、強風から、やっと抜け出せた。      
 坪足の跡を見つけ、鳥海山に登る。山頂は広い。百沢の斜面を見ようと 
端まで行った蔵田さんが「スキーを着けて立った時に、強風でバランスを 
崩したら危険だ。どうしよう?」と言う。「晴天なのに風でスキーが出来 
ないなんて、独立峰は恐いね。」風の弱い所を探して戻る。頂上部分を半 
分程戻り小さな谷になっている所にくると、少し風が弱い。雪壁を背に座 
り込んでスキーを着ける。                      
 シュカブラが少ない谷の部分を横滑りで鞍部まで降りる。ガチガチの雪 
と強風に負けそうだ。谷に入るとさすが風も弱まり、シュカブラも減る。 
なんと岩木山の本峰に向かう斜面にスノーモービルの跡がある。山越えを 
せずスノーモービルで登って来たグループに、この斜面はかなり荒らされ 
ていた。                              
 でも大斜面。まだまだ滑る所はある。そして人影は無い。二人してスノー
モービルの跡を避けて滑っているうちに、スキー場に出る尾根にトラバー 
スする地点より下に来てしまった。姥石に出る尾根はシュプールだらけ。 
真ん中の小さな尾根を楽しく降りていると、急な狭い尾根にはいりこんで 
しまった。腐った雪に階段下降と横滑りを混ぜとにかく下る。      
 すぐ横に見えるスキー場に出るには、谷を登り返さねばならない。下る 
方が楽と林の中を降りて行くと右側にトレースが現れた。辿るとスキー場 
にでた。                              
 パトロールと岩木荘に連絡する。                  
 明日の帰り便を確保すべく夜行バスの会社に電話する。弘前発、青森発、
大館発、青森発の1席だけしか無いそうだ。JRの夜行八甲田は廃止。昼 
間の東北新幹線で帰るしかなさそうだ。もう一泊を岩木荘に頼む。「食事 
が1日目と同じになるけれどいいですか?。」と聞かれる。       


3/29(金) 長平コース                  
 蔵田さんが、ボランテアでパトロールをしているらしい男性(前日にも 
会った)にコースを詳しく聞く。樹林帯に入ると指導標が付いている。コー
スがオープンすれば竹竿で上部も道標を付けるが今は無いとのこと。   
 雪上車の終点からトラバース気味に登り、西法寺平を目指す。風が無く 
快適。リフトから離れて登り、広い谷の上部を緊張して渡ると西法寺平に 
着いた。なんと本峰頂上直下までスノーモービルの跡がある。そしてスキー
の跡もある。                            
 北面で雪はガチガチに硬い。スキーが自由に停められないのではと恐れ 
る。転べば西法寺森までずるずる落ちてしまいそうだ。仕方なくスノーモー
ビルの跡を回転と横滑りを混ぜて降りる。半分ほど降りると傾斜が緩み、 
自由に滑れるようになった。                     
 ば西法寺森は右側が雪庇になっていて巻けない。仕方なくピークに登る。
ピークから見下ろすと、右の尾根の下部の木に指導標らしき物が見え、ト 
レースもそちらに向かっている。地図でみると其処からは少し平地を歩か 
ねばならない。                           
 滑り降りて道標に添って行くと、トラバース気味にコースは採られ、歩 
かず行けるようになっていた。尾根の端に出てスキー場への一滑りはなん 
と深雪の新雪だった。北面の樹林帯なのだ。              
 鯵ケ沢スキー場はひたすら広く緩く長い。「東北の山スキー100コー 
ス」の評価 星5 に期待していた蔵田さんはかなりがっかりしていた。 
スキー場になったら駄目だあ。                    
 コース以外滑降不可の看板が沢山あり雪も腐っているので、ほとんど直 
滑降でどんどん下る。途中に椅子を並べた休憩所さえあった。ホテルの横 
のレストラン兼売店に入り、岩木荘に連絡する。前に高野さんと来た時は、
遠いからタクシーにしてくださいと言われたのに、今回は迎えに来てくれ 
ると言ってくれたのだ。                       
 パトロールに連絡すると「ごくろさん」と明るく答えが返ってきた。朝 
届けを書く時、前日の我々の届けの後にボールペンでOKと書かれていて、
昨日も心配させたのかなと思った。今日は天気が良いので心配はしていな 
かったらしい。                           
 春休みの岩木山3回目にして初めて全コースが滑れた。もう思い残すこ 
とは無い。毎日スキー場に送迎してくれた岩木荘のサービスもとても有り 
難かった。                             
 蔵田さんとどのコースが最高かの話題になる。広さと斜度からみると百 
沢かなーと意見は一致。スカイラインスキー場の届けに百沢コースに日参 
している二人パーティがあったけど、今思うと納得。          
 岩木荘で新聞を見ていると、飛行機の空席状況を報せる欄があり、なん 
と本日も空席ありだった。一泊して新幹線で帰るなら料金は同じ。昨日気 
付けばね。                             
                           白沢光代記  


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