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ら・ねーじゅ No.251
1996.11月号


戸隠西岳                
                          白沢光代他1名  


96/9/15(日)                           
 前夜は中社付近のペンション戸隠小舎に泊まった。フルコースの洋食がでた。 
夜はご主人の佐々木徳男さんがリーダーだったという、ダウラギリ2峰の登攀時 
のビデオを上映してくれた。登頂者の3人は全員後に他の山で遭難死されたそう 
だ。西岳に行く予定だと話すと「根曲がり竹の薮がひどいから、やめたほうがい 
い。」と言われた。                            

 5時に起き5時半に出発した。奥社の駐車場に小林さんの車を置いて登った。 
真っすぐな広い参道が随神門まで続き、太い杉の参道が奥社まで延びる。でも奥 
社はささやかな社だった。                         

 山道にかかるといきなり急登だった。猛スピードで追い付いてきた地元の男性 
群に道を譲る。50軒長屋の前で休憩して居た彼らを追い抜くと、先行していた 
大パーティに追い付いた。なんと広島から100名山の一つである戸隠に登るた 
めに、バスを仕立てて来たのだそうだ。20数名の団体は道を空けてくれない。 
鎖場で、ビデオを撮りながら登るほどのんびりしてるのに。イライラが募る。蟻 
の戸渡りの前で、先に行かせてくれと頼む。ここで小林さんが、蟻の戸渡りを立っ
て歩いて彼らを仰天させた。                        

 すぐ八方睨みに着いた。そこで地元の人らしい男性が、昨年の経験を仲間に話 
していた。曰く「西岳までは竹の薮がひどく、微かにしか道は分からない。道が 
南面の急なガレ場に付いている所は、薮が覆いかぶさって危険だ。P1からの下 
りの鎖場は、短くて足が届かない所や、下りでハングしてる所、トラバース部分 
で鎖がハングして付いている所がある。腕力が必要で、用心の為ハーネスを付け 
てシュリンゲを伸ばし、鎖にカラビナを架けて行った方が良い。牧場から鏡池ま 
でもルートが分からなかった。快適な岩稜を期待してたけど全然違った。」   

 ハーネスがいるなんて考えた事も無かった。ここは昔からあるコースだ。そん 
なに悪いはずが無いと思う。薮と聞くと我々二人は、丹沢の沢の詰めを思い浮べ 
た。あれが続くなら辛いなあ。行く?止める?でも目的は西岳だったし、戸隠の 
コースだとあの団体と一緒になるし−−                   

 八方睨みから道は細くなった、が草が生えていない道の部分がはっきりと分か 
る。脅かされた程ではない。昨日の雨が草に残りずぶ濡れになる。仕方なく雨具 
の上下を着る。道も濡れてるので転ばないように草に掴まりながら歩く。背より 
笹が高い所もあって笹のトンネルのようだったけど、丹沢を思えば楽だ。    

 紫のりんどうや白い蛍袋、梅鉢草、トリカブト、鮮やかで大振の秋の花が沢山 
咲いている。ごごめぐさも大きい。                     

 本院岳で休んでいると、がさがさ音がする。なんと男女二人のパーティがやっ 
て来た。94年版山渓の付録秋山ブックに紹介されてるコースだからと改めて安 
心する。きっとそんなに悪くない道だ。                   

 西岳の辺は紅葉が始まっていた。P1は小さなピーク。晴れていれば北アルプ 
スが見えるらしいけど今日は展望無し。                   

 鎖場が次々現われる。確かに3mほどハング気味の鎖があった。ハシゴも一番 
上はハング気味かな。でもトラバースのハングは無かった。ハーネスが要るなん 
てオーバーだ!                              

 草付きの中に頻繁に現われる鎖付きの岩場は、高度感はあるけれど爽快感が無 
い。どろ場混じりの感がある。でも飽きるほど沢山在った。昨年行った上越の荒 
沢岳の方が気分が良かったなと思う。戸隠は標高が低いので稜線でも薮がある。 
上越だったら、豪雪が稜線に薮を育てないけど。               

 岩場が終ると、雰囲気の良い苔むした樹林帯になった。太いぶなの樹も、太い 
樺の樹もある。岩かがみの葉が繁る。                    

 望岳台はP1尾根が見渡せる小ピークだ。P1尾根は樹が繁茂し、あれほどの 
痩せ尾根には見えないが、細い細い尾根だった。紅葉になればさぞ奇麗だろう。 

 緩やかな樹林帯になる。茸が沢山生えている。小林由利子さんが松茸に似た栂 
茸を2本見つけた。登山道にあるなんてさすが人の少ない山だ。        

 地図には無い牧場に出た。端を歩いて行くと、牧場が終る手前から、沢に降り 
る道標があった。道は再び薮になるが、時々登山道と書かれた道標があった。沢 
の渡渉は飛び石伝いで靴が少し濡れる。                   

 少し登ると、奥社左中社右の道標があった。車へ戻るべく左へ行く。地図によ 
るとしばらくは緩い登りが続く。ここで再び茸狩り。沢添いになると日当たりが 
良いので草の背が伸び、うっとうしい薮になる。ようやく鏡池に着いた。観光客 
が大勢居る。随神門までは整備されたハイキングコースで深山の雰囲気がある。 

 心配そうに送り出してくれた戸隠小舎に、無事帰った旨挨拶する。      

 戸隠蕎を食べて帰ろうと蕎家に入る。「蕎麦はもうお仕舞」と言われる。次の 
店も同様。車に乗り次々店を尋ねる。奥社は全部だめ。中社も終わりだった。さ 
らに下った一軒でやっと天ザルを頼めた時は嬉しかった。           


コースタイム                               
    奥社入り口5:40−奥社6:20−八方睨み8:20/40−    
    本院岳10:20/11:08−P112:20/35−       
    鏡池16:10/20−奥社入り口17:00            



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