ら・ねーじゅ No.256
1997.6月号
巻機山
1997年3月31日〜4月3日
武部 慎
3/31 晴れのち曇り
夜行バスで盛岡に行く。朝方は小雪がぱら、ついていたが八幡平に近づく頃は晴
朝、平塚を車で出発し昼に清水に到着する。清水の部落には雪は残っていたもの
の道路には雪はなく、標高700mまで車で入る。
一人で一週間分の食料をかついで登るのは大変。天気がいいせいか巻機山の家ま
でで汗だくだく。そこからの急斜面が第一関門。前半は雪がグズグズながらもキッ
クターンができてそれなりにペースがでたが、後半はキックターンもできないほど
ブッシュがひどくところどころ凍っている所もあってついに板をはずしてツボ足に
なる。するとこんどは荷の重みと急斜面のため腿まで潜りだし、一発ニーパットを
決めてそこを足場として一歩登るはめになった。なんとか急斜面を突破してスキー
を付けるとホッとした。そこから少し登った1150mにテントを張った。もうす
ぐ上は雲の中という感じだった。
4/1 晴れ
だいぶ寝過ごしてしまったのとパッキングに時間がかかり出発が遅れた。天気も
良く、快適な登りが続く。樹林帯を越えるとニセ巻機山の急斜面になり、6本爪ア
イゼンを付けてスキーを引っ張って登る。靴の前の方には爪が無いからアイスバー
ンの急斜面は登りにくい。滑落しないように慎重に登る。ニセ巻機山を越え巻機小
屋へ向かう。小屋は?屋根が雪の下で、前に入り口を掘った跡はあったがそうとう
埋まっていた。入り口の雪かきを少しやったが断念して、近くにテントスペースを
掘ってそこに荷物を出して出発する。なんと山頂への登りは途中から粉雪で信じら
れなかった。荷が軽くなったせいか意外と早く山頂に到着する。山頂付近はアイス
バーンで稜線上はずっとアイスバーンでところどころシュカブラになっていた。牛
ケ岳までシールのままで偵察に出かける。牛ケ岳北面はアイスバーン、南東尾根は
地肌が見えていてどちらもスキーには不適だった。積雪が少ないのだろうか。せっ
かく重い荷揚げをしたのに、と思いながら巻機山山頂に戻る。そこには米子沢を往
復する2人パーティがいた。そっちのルートの方がいいなと思った。でも計画書に
書いていないし沢に落ちたら事だし、ブロックが落ちてくるかもしれないし・・・。
今回は見送った。二股に延びる快適な斜面を滑っていく彼らを見ると、僕もつられ
てその斜面を滑る。粉雪で最高!途中から右に分かれて小屋へ向かう。一旦沢に降
り、沢床から5m程ニセ巻機山の北斜面を登った所をトラバースして小屋へ登る。
目の前は尾根からの雪庇が崩れた大きなブロックがいくつもゴロゴロしていて、絶
対にここまで転がって来ないとわかっていても緊張する。小屋へは5分だ。
4/2 曇り 夕方から雨
西の方は雲でこちらもうっすらと雲があって、いつ視界が効かなくなるかちょっ
と心配な天気であった。今日は山頂周辺を滑ることに決めた。一本目は小屋から見
ていいなと思った、山頂から米子頭山への稜線のはじめのピークから二股に滑るルー
ト。二本目は山頂の西の端から一気に沢に滑って最後は昨日と同じ小屋へ登り返す
ルート。三本目はニセ巻機山南面。一本目はアイスバーン気味でちょっと緊張した。
二股のすぐ上に出て昨日彼らが滑った尾根を登る。途中からダイレクトに巻機山の
西の端に向かう。二本目は締まった雪で快適。わりと急斜面で腿にくる。沢床をは
ずして昨日の自分のシュプールのところまで滑る。ブロックのそばはやはり緊張す
る。小屋を経てニセ巻機山に登る。平日なのに結構人がいるからびっくりする。自
分の滑ったルートを見て一人で満足していた。三本目は時間のせいかもうグズグズ
の雪でちょっと残念であった。
今日中に雨が降りそうなのでテントに戻って、雪洞を掘ることに決めた。初め、
ブロックを落している雪庇の端にしょうかと思ったが、壁の角度が緩くてやめた。
結局、小屋のすぐ西の吹き溜まりにした。ちょっと小さく、掘った雪は勝手に落ち
ていかないから放り投げなければならないが妥協した。10年振りのこともあって、
掘って50cmも進まないうちに木の枝にぶつかって結局5Hもかかってしまった。
木の枝のため右に進めずL字型の構造になった。テントの荷物の引っ越しをする前
に雨が降り出した。いつ猛吹雪になってもいいように入り口は掘ったでかいブロッ
クで囲んだ。
寝ようと思ってふと気がつくと天井が低いのが気になってまた手直しを始める。
4/3 雨一時 曇り
朝起きると入り口でポタポタ滴が落ちているのに気がついた。天井は甲斐あって
OK。入り口にでかいブロックを積んでおいたのはどこへいったのかおにぎりほど
になっていた。なんと雨でみんな融けてしまったのだ。テントでなく雪洞を掘って
よかったと思った。
9時の天気図をとると何時天気が回復するかわからず、へたすると日曜になって
も降りられなくなりそうなので降りることにする。丁度雨も止んできたし、ラーメ
ンでも食べてパッキングした。出発しようとしたときにまた雨が降ってきて少し迷っ
た。もう一泊雪洞に泊まる気はしなかった。視界が効くうちに降りる。これに尽き
た。
雪はグズグズで、ニセ巻機山の急斜面はスキーで降りられた。最後の20mは滑
落すると何百mも行ってしまうので、ツボ足でザックだけ始めに降ろした。またス
キーの所まで登って滑って降りようとしたがストックを一本ザックの所に置いてき
てしまった。で、ストック一本で右、左交互に持ち替えて2ターンしてザックの少
し下まで滑った。ザックを回収してどんどん滑る。初日のテント場にゴミを木の周
りの雪が20cmぐらい掘れたところに置いておいたのが完全に出ていた。雪融け
の早さにビックリする。最後のブッシュの急斜面はなんとか板を外さずに滑れた。
車に着き、着替えていると雨が降ってきた。いいとき降りてよかった。