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ら・ねーじゅ No.258
1997.10−12月号


和名倉沢・市ノ沢          

                           1997年9月20〜21日 
                               鈴木鉄也、(大木) 

 奥秩父の沢に魅せられて懲りもせずに、また大洞川に入る。正丸峠のトンネルから秩父 
経由で、三つ峰観光道路の入口になる二瀬ダムの上に夜中到着。台風一過の秋晴れの夜空 
ではあったが、秋雨前線が残り、日中の晴天は期待できない。             

【和名倉沢】                     

9/20(土) 曇り                          
                                         
 大洞林道入口になる広場に車を置いた。1グループが先行し、山払いをするという夫婦 
を下降路で追い越す。大洞川に降り立ったところで先行の3人グループが身支度をしてい 
るので先に和名倉沢へ入る。                            
                                         
 出合いの小滝を左からへつって登り、ゴーゴーとした大水量の中、沢はいきなり薄暗い 
感じとなる。帰りに判ったのだが、大洞川を渡渉せず少し上流の釣り橋を渡った和名倉沢 
右岸を巻く道があった。                              
                                         
 その道が和名倉沢を渡る木橋に出合うのが10m滝の少し上である。橋のところには炭 
焼きにつかったと思われる石だけで組んだ頑丈な釜が残っている。           
                                         
 最初のゴルジュ帯の終了間際で、2人の釣り師を追い越そうとしたら、「俺達が先に入っ
たんだから、1時間くらい後に歩いてくれないか。」と頼まれる。「魚が釣れなくなる。」
とか、挙げ句の果てには、「釣り師の論理だ。」とか、「お金を払って入渓している。」 
だとか、少しムッとしたが、先を急ぐと先行した。石津窪がやや平凡に出合い、第2ゴル 
ジュ帯の入り口である15m逆S字滝を右から越えると、上の連続する小滝は全て直登可 
能。                                       
                                         
 また、ゴーロ状の平瀬になり一休み。滝がよい感覚で続き、氷谷との出合いや美しい場 
所が続く。途中の15mナメ滝は白濁の勢いのある流れを渡れば左側が快適そうであるが、
右側の斜度のあるナメを登ってみた。一旦は流れに押されそうになりながらも、途中のテ 
ラスまで立った。それ以上の直登は無理そうなので右へ斜上しようとしたが、ツルツルと 
した足場にあと一歩が踏み出せずにしばし立ち往生。大木さんはもう巻いて滝上から様子 
を見ている。ザイルを放り上げる程のスタンスも良くないし、どうしても1ムーブが出来 
ずに結局降りることにした。なんとか降りたと思ったが、斜度の無くなった取り付きの所 
で、足を取られた感じでスッ転んでしまう。                     
                                         
                                         
 釜の縁にはまってしまう。左手膝の裂傷と左足モモを打撲。たいした痛みでもなかった 
が、登るにつれジワジワと痛みが増してきた。膝を見たら肉が少しはみ出し、血が出てき 
ているようだった。                                
                                         
 上は、10mナメ滝が2つ続き、ここは快適に直登。その先の小滝をいくつか越して、 
見上げるような大滝の下に出る。                          
                                         
 ここが「通らず」かと思わず納得。例によって遡行図丸暗記のはや合点、「通らずは、 
左の高巻き」とだけ思い込んでいた。右が易しそうに見えたが考えもせず左の巻きに入る。
踏み跡は途切れ途切れで、浮き石の多いガレ場や最後は岸壁が立ちはだかり、後少しで尾 
根に上がれそうだったが帰りも下るのでどう見てもここが巻き道とは考えられずにもう一 
度滝下まで戻った。遡行図を再チェック。                      
                                         
 40m滝下で、右の枝沢から巻くとしっかり書いてある。大滝上の舟小屋沢の40m滝 
は木に隠れて見落としそうである。その先がシダ畑の丘のビバーク適地である。     
                                         
 和名倉山を一度は登ってみたいと思ってはいたが、今回は当初から日帰りの予定だった 
ので、ここにザックを置き少し釣りに興じる。やや小さ目のイワナがすぐ釣れた。キープ 
サイズの2匹だけ夕食のおかずに持ち帰る。 帰る時間になって、朝追い抜いた3人パー 
ティーが上がってきた。ここでビバークの様子。                   
                                         
 下りはなるべく巻き道を利用した。大洞川にかかる吊橋の手前、山払いで利用する休憩 
小屋で一休みし、駐車地点まで登り返した。                     


コースタイム                            
出発 7:20 → 6m吹き出しの滝手前 8:38 →       
平瀬 9:40 → シダの畑 11:15/12:30 →      
平瀬 13:30 → 休憩小屋 14:30/14:40 →     
駐車地点15:00                         



【市ノ沢】                      

9/21(日) 小雨後曇り                       
                                         
 霧雨に近い小雨。もう1本くらい沢登をしようと大木さんが言うものの、どういう訳か 
話の種に三峰神社を見学してくると言い出す。                    
                                         
 市ノ沢に決めて、後から大木さんが追う事にした。荷物運搬に使用するモノレール敷き 
の脇の道を下って大洞ダムに降りる。対岸からトラバースして行くと、市ノ沢第一堰堤の 
下に出たが、堰堤の上に出る道もあった。昨日拾った手網を使い川虫を取りながら、今日 
は最初から釣り遡行とする。大木さんもすぐ追いつくだろう。             
                                         
 小滝が続きゴーロ帯となる。2〜3m滝が殆ど。顕著な滝もしっかりした巻き道があり、
釣り用に整備されたような沢である。おかげで魚影は薄く、かわいらしい子イワナばかり 
釣れる。右に大岩のある二条に流れる滝。その先は3〜4mだが釜を持つ滝が2つ。さら 
に進むと、岩を斜めにえぐったように流れ落ちる滝で、沢は右に屈曲する。ナメとゴーロ 
の平凡な沢が続きトイ状の小滝が連続するゴルジュ帯となる。中に入れば水流通しに楽し 
く登れる。また平凡になると、左手に崩壊地が2つ続く。1つ目は小石状のガレ場。2つ 
目は上の岩盤が大きく崩れ落ちたと思われる大きな石が沢の対岸まで埋め尽くしている。 
その先、7〜8mある1条に流れ落ちる滝が左手に出合い、右からは、階段状に枝沢が出 
合う。岩穴沢のようだ。水量は1:4:1である。                  
                                         
 4m程の滝を越えると下から見て二段に見える美しい滝に魅了される。黒い岩肌に白濁 
した流れは、落差6m。右側、取り付き上に打ち掛けたような新しいハーケンが1枚あっ 
たが使わずに少し水に浸かって一段下のリスを斜上する。               
                                         
 滝は一旦途切れ、上は3mほどの滝だった。その先、また平凡な感じだったので引き返 
す。でもあとで遡行案内を見ると、ここから芝沢付近までが最も美しいと書いてあった。 
小雨の中また下り始める。小一時間で大洞ダムに戻った。               
                                         
 堰堤の手前でツェルトが1張りあったが、まさか大木さんとは思わず、朝追い越した2 
人組パーティーのものと思った。                          
                                         
 車のある林道まで戻ったら、大木さんが居らず、さっきのツェルトの所まで、下り登り 
を繰り返した。                                  


コースタイム                            
林道 7:45 → 岩穴沢出合 11:25/12:04 →     
大洞ダム 13:00 → 林道13:30 →            
堰堤上13:50/14:40 → 林道15:00          


 大洞川の支流でありながら、ドカドカと騒々しいまでに流れ落ちる迫力。キンチジミや 
本流通らずの明るさに比べ、黒く滑りやすい、暗さが一段と重厚な趣がある。      


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