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ら・ねーじゅ No.258
1997.10−12月号


富山・岐阜県境 白木峰            

                     1997年3月21日〜22日 
                              酒井 正裕 


 この3月下旬の休暇を利用して長い山行をしたいと思い、考えついたのは白木峰から金剛堂山、水無山、人形山を経て、下梨へ縦走するプランだった。こういう計画を立案する人はいないだけに楽しみだったが、体力のない私一人では文字通り荷が重すぎ、計画の3分の1程度の山行にしかならなかった。しかし、それでも久しぶりに山スキーの感触を充分に楽しめた。


《行動概略》

第l日 杉ケ平から白木峰山頂まで
 車で富山の実家から送って貰うが、途中の車窓から見る袖山や八尾御鷹山等の中級山岳に殆ど雪がないことに目を疑った。寡雪とは聞いていたがこれ程とは思わなかった。

 おかげで、杉ケ平先まで除雪されており、車は標高700mまで入ることができた。暫く林道をたどり、標高800m付近から大谷と杉ケ谷の間に延びる尾根沿いに登る。スキーを木の枝に引っかけて呻吟することも度々だったし、久しぶりに30kg近い荷物を担いでいたため、なかなか歩程は捗らなかった。

 標高も1150mを越し、林道を入れると尾根は開け一時的に傾斜も緩くなる。この登りに使った尾根も、やっと山スキーに適したものとなった。尾根上の標高1334m地点にはNTTの小屋(使用不可)があり、そこから上は樹木も少なく雪崩の危険性の高い場所となる。2、3度ハンドテストで雪崩チェックを行い通過する。100m程上部にある林道の上は特にいやらしいところであり、再度雪崩チェックを行ったものの緊張させられた。ここは、このルートのポイントとなるところであり、正面の登るべき尾根を右から回り込んで登るか、左からとするか、雪の状況を見計らって対処しなければならない。

 ここを過ぎれば、後は広く緩い雪稜の登りになり、頂上近くのパラボラアンテナも目の前になる。ただ、先ほどまで晴れていたのに、頂上付近に着いた時は視界がなくなっていた。アンテナの前で暫く休み、視界が回復するのを待ったが、結局諦めてテントを張ることにした。ここで張ってしまうと、翌日から 
の行動予定が全く狂ってしまうため避けたかったが仕方がなかった。ところが運の悪いことに、テント張ったとたん視界が回復し、素晴らしい展望となった。もう一度テントをたたもうかとも考えたが、余りにも時間が遅すぎ、仕方なく頂上付近を散策した。

 ここから見る景色は絶景であり、西は御岳や乗鞍を含む北アルプスのほとんどが、東は雲海に浮かぶ金剛堂山を手前に配し、白山山系が息をのむような迫力で迫っていた。今まででも最も展望の良い山の一つだった。


第2日 白木峰から小坂谷を経て大長谷
 早朝のクラストした斜面のスキー滑降を避けるため、8時頃に出発する。それでも、稜線は風が強いためかクラスト気味なので、最初はアイゼンを履いてスキーを引っ張る。暫くで、滑落の心配は少ないと判断し、緩斜面の尾根をスキーで滑り始めた。急斜面もなく、広くも狭くもない尾根である。特別快適という訳ではないが、まずまず楽しめるといったところか。ただ、標高1490m付近は迷いやすく、稜線を富山県側に外しやすいので注意が必要である。1427mの標高点辺りからは、岐阜県側に張り出している小さな雪庇を崩して、大坂谷支流に滑り込む。谷幅が狭いので暫く尾根筋を滑った後、谷に降りる。直ぐに、小さな堰堤が出たと思ったら、ここまで林道が延びていた(標高1200m付近)。

 林道は小坂谷から延ぴてきていることは明白であるので、小坂谷に向かって少し登り返し、小坂谷と大坂谷支流の分岐に着く。ここから見る小坂谷は穏やかであり、万波高原に続く林道もほぽ一直線に延びている。この林道の滑りは思いの外快適であり、楽しいスキーとなった。左岸につけられた林道は、標高1100m付近で右岸に移り、やがて平坦となって万波川を渡る地点に出る。開けた地形は明るく開放的な雰囲気を醸し出し、長居したくなるところだが、暫く休んだ後、橋を渡りスキーを引きずって歩く。ここから県境までも林道の滑りであったが、やはり林道の割に滑降斜面が広く快適であった。

 県境に着くと、原山本谷を経て楢峠に向かう道と、大長谷に向かう道に分かれる。当初の計画では、原山本谷へ行くことにしていたが、晴れてはいるものの金剛堂山の上部はすっぽりと雲がかかっており、広い稜線はルートファインディングに手摺りそうだった。大長谷方面を見ると、谷は険しく本来なら通過してはいけない場所だったが、雪が例年より極端に少ないことから何とか通過できそうだった。今朝、出発の準備中にマットが風に飛ばされて無くなったことも考えて、結局、大長谷に向かうことにした。予想どおり険しい道で、緊張させられる場面もあったが、何とかやり過ごし、大谷出合先まで滑ることができた。

【コースタイム】

平成9年3月21日(木)晴れ
富山=杉ケ平上(9:00)→白木峰頂上(15:00)(テント泊)(通常なら、頂上まで4、5時間程度)

平成9年3月22日(金)晴れ
頂上(8:00)→万波高原(10:00)→大谷出合(12:20)→庵谷(13:00)→島地(14:00)

【滑降距離等】

  滑降高度差 約1000m 滑降距離 約12.0km         
  滑降斜面の最大斜度 約12度                    

【山行適期】                            

  3月下旬〜4月中旬前半                       

【ルート図】


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