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ら・ねーじゅ No.258
1997.10−12月号


立山周辺 
御前谷、立山カルデラ上部一周、御山谷


                     1997年4月26日〜28日 
                        酒井 正裕、鈴木 鉄也 


 今年のゴールデンウィーク前半は、立山に静寂なルートを求めて雷鳥沢に定着し、3つのルートを滑る計画を立てた。その一つは、雄山頂上付近から御前谷を滑り、くろべたいらロープウェー駅に滑り込むもの。もう一つは立山カルデラ上部一周(国見谷)、残りは大日岳大日山谷だった。3日目に予定していた大日山谷は、天候が優れないため御山谷に変更したものの、ほぽ予定していたルートを滑ることができ、滑降高度差4000mに及ぶスキー滑降を楽しんだ。


4/26(土)(快晴)
室堂→一の越→雄山→御前谷→くろべたいらロープウェー駅

 早朝、アルペンルートを利用し立山室堂に着く。観光客がごった返す慌ただしい雰囲気の中で、不要な荷物をコインロッカーにしまい込み一の越に向かう。室堂から一の越までは、多くの登山者の往来があり、道には視界不良時に備え竹竿が等間隔でさしてある。今日は天気もよく、迷うことはない。唯々高みへ歩いていくだけである。一の越に着くと、槍・穂高等も見え、大変展望がよい。ここからシールに替えてアイゼンを履き雄山へ向かう。急登で息が切れ、みるみるうちに鈴木さんに置いて行かれる。毎度のこととはいえ、体カのない自分が情けない。

 やっと雄山頂上にたどり着くと、鈴木さんが寒そうにして待っていてくれた。展望は相変わらず良く、以前から地図で睨めっこしていた鹿島槍のコヤウラ沢もその詳細がよくわかる。面白そうだが、やはり谷の下部が見えないことと、雪崩が怖そうな谷である。この谷は、小林喜助が雪崩に遭い逝った谷でもある。下を見ると、これから滑ろうとする御前谷の広大な斜面が展開していた。

 さて、私たちは暫く休んだ後どこから滑ろうかと考えたが、雪がクラスト気味であることから、滑り出しの一番緩やかなサル又のコルに一旦向かうこととする。アイゼンが団子になり歩きにくいことこの上ないが、スキーをつけたまま滑落するよりましである。

 暫くでサル又のコルに到着する。もともとここを滑ろうとする山スキーヤーは少ないのであるが、今日はまだ誰も滑っていない。気分も上々である。しかし、滑り始めてみると雪の状態が悪く、滑っては転ぴの連続である。一時はどうなることかと思ったが、谷の中間から下はようやく雪も締まり、快適に滑ることができた。広々とした谷は大変楽しい滑りができ、また、立山東面をこれほど目の当たりにしながら滑れるのはここしかないだろう。やがて、御前谷は狭くなってきたので、御前谷右の尾根にトラバースして出る。ここまでくれぱ、本ルートの核心部は終わり、今度はそのままトラバースして送電線のある尾根に向かう。ここは、樹木が少なく傾斜の比較的強い斜面のトラバースであり、雪の状態が悪いときには雪崩が想定される。余り気分のよいものではないが、今日のザラメ雪であれぱそれほど問題はないようだ。この尾根のトラバースの途中から、登り着く尾根に小さな雪庇が出ているため、80m程登り返す。登り詰めたところは、尾根上にある鉄塔の少し上だった。ここからは、くろべたいらロープウエー駅が指呼のうちに望むことができる。私たちは、意識はしていなかったが、どうやらここからタンボ平に向けて滑るのが一番いい斜面を滑れるようだ。ここからは雪も締まり、あっという間にロープウェー駅に着いた。最終の便で立山室堂に戻る。室堂からは荷物をまとめ、室堂山荘の左脇から浄土川を経て雷鳥沢へ向かう。室堂から雷鳥沢の天場へは、ここを通るのが一番早く労も少ないようだ。

【ルート図】

4/27(日)(快晴)
雷鳥沢→一の越→御山谷→竜王岳と鬼岳のコル→国見谷→国見岳と室堂山のコル→弥陀が原

 今日は、本山行の最も重視していたルートである。このルートは、まだ滑られたという記録を私は見たことはないが、雷烏沢から日帰りで立山カルデラを一周できること、昨年、湯川谷支流松尾谷を滑ったときに滑ると快適そうなので眼をつけた谷である。

 早朝、雷鳥沢を発ち、一の越に向かう。ルートはほぼ浄土川沿いに雪上車で踏み固められた道を行き、途中からそのまま登り切る。荷物も軽く、昨日はよく睡眠もとれたことから比較的体が動く。比較的快調なペースで一の越に達する。まだ時間が早く雪も堅いため、転ぶと滑り落ちていきそうなので、雪が腐るのを待つがなかなかうまくいかない。仕方なく、慎重に御山谷を滑り始める。御山谷上部は広大な緩斜面であり、あっという間に竜王岳から派生する長嶋尾根の末端に到着する。一の越よりも風が緩いかと思ったがさほどではなく、そのままトラバース気味に鬼岳と竜王岳のコルから続く谷に滑り込む。ここで、暫く休み、これから滑る国見谷の雪の状態が良くなるのを待つが、寒いので少し休んでからまた登り始める。竜王岳と鬼岳のコルまでは、標高差にして200mもないので労せずして達する。ここでもやはり風が強く寒い。ここでまた雪の状態が良くなるのを待つが、あまり期待できなかった。仕方なく、アイゼンを履いて下ることにする。昨年観察したとおり、国見谷の上部は岩があちこちに露出しており、コルから直ぐにスキー滑降とはいかないが、それも僅かで広い雪面の広がる伸びやかな谷となる。途中の比較的急な斜面をやりすごしスキーを履く。上部を見ると、クラストしていなけれぱ大変快適なスキーができたと思うと、残念である。それでも、この谷のスキーは大変快適で楽しいものとなった。普段見ることの少ないカルデラの景色を欲しいままに滑る。なぜ、ここが今まで省みられていないのか不思議なくらいである。谷が狭くなり、斜面の傾斜も増す手前でスキーを脱ぐ。ここは、標高2050mの地点であり、ここから国見岳と室堂山のコルに向け登り返すこととする。ここからそのコルまでは、途中、台地状の地形となっており、一旦そこまで登ってから休む。誰一人人影を見ることはない。のんびり鈴木さんと二人で今し方滑ってきた谷や獅子岳、鍬崎山等を眺める。これからコルまではもう一登りある。十分休んでからシールで登り始めるが、斜面の傾斜は徐々に強くなり、最後はスキーを諦めてつぼ足で登る。最後は青息吐息でコルに立つ。

 ここからは、一般ルートに合流し、縦横無尽に付けられたスキーのトレースを辿って弥陀ケ原へ向かう。人の滑ったところは滑り辛く、また、弥陀ケ原まではトラバースの連続なのでそれほど面白いものではないが、天気もよく写真を撮りながらのんびり滑ることができた。

 弥陀ケ原からは、バスに乗り室堂へ出て、昨日と同じところを滑り雷鳥沢に着いた。

【ルート図】

4/28(月)曇りのち雨
<雷鳥沢→一の越→御山谷→黒部ダム

 今日は、天候が良くないと言うことで色々考えたが、車で下山するのも癪なので天候が悪くても確実に滑ることができる御山谷を滑ることとする。

 雨が降らない程度の時間に下山できればよい程度に考えていたので、朝は比較的ゆっくりする。おもむろに出発し、一の越から御山谷に滑り込む。上部はまだ雪が堅いため、重荷を背負い登山靴で滑る我々にはきつい滑りである。直ぐに足がくたぴれてしまい、少しずつ切って滑る。後から滑ってきた何人かのスキーヤーにも抜かれてしまう。御山谷は以前、標高2000mまで滑っていたのでそれ以後が少し問題があるかもしれないと考えていたが、この標高2000mからは右岸を滑る。多くの人が滑り、ルートファインディングなど殆ど必要としない。唯々滑るだけである。快適ではあるが、ある意味ではそっけないと思う。ルートはこの先もずっと右岸を通り、黒部湖が見えたと思ったら丸木橋があった。丸木橋を渡り、スキーをザックにくくりつけて1時間強歩くと黒部ダムに着いた。

【コースタイム】

4/26(土)
室堂(10:15)→一の越(11:10)→雄山(12:40)→サル又のコル(13:30)→御前谷→くろべたいらロープウェー駅(15:20)=室堂(17:00)→雷鳥沢(17:25)


4/27(日)
雷鳥沢(6:10)→一の越(7:30/8:15)→御山谷→竜王岳と鬼岳のコル(9:20)→国見谷2050m(10:15)→国見岳と室堂山のコル(13:00)→弥陀が原(14:10)=室堂(15:10)→雷鳥沢(15:35)

4/28(月)
雷鳥沢(7:30)→一の越(9:15/30)→御山谷→丸木橋(11:00)→黒部ダムトロリーバス乗り場(12:20)


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