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ら・ねーじゅ No.259
1998.1−2月号


白馬岳〜雪倉岳〜栂池周遊ツアー         
(白馬ミニオートルート)              

                          1997年4月26日〜29日 
        メンバー:岡坂(企画担当)、小森宮、手塚、加藤(康)、山崎、藤田 


 例年になく雪が少ないシーズンであった。北アルプスなら雪がまだ豊富だろうとゴールデンウイークは白馬岳周辺のツアーを計画してみた。滑降を目標として、一度滑ってみたいと以前から思っていた、白馬岳柳又谷源頭と雪倉岳北面を目標に帰路は平岩に下山せず、蓮華温泉より天狗の庭経由で白馬乗り鞍岳山頂より栂池に戻る周遊計画を立てた。白馬岳へは大雪渓より登ることも考えたが、何年か前のこの時期の大雪渓での大規模雪崩のことを思うと1日余分に時間はかかるが、安全を考慮して栂池より入山することとした。初日は栂池ヒュッテ泊りなので、朝東京を出発すれば遅くとも15:00には小屋へ入れるはずだ。入山初日をゆったりとした行程に出来るメリットもある。以下はその詳細な記録である。

4月26日(土) 快晴 
 前夜自宅を車で出発した、私と加藤氏は栂池ロープウエー乗り場横の栂池ロッジ「やまご」にて午前中をゆっくりと過ごし、午後あとから来る他メンバー4名を南小谷駅まで迎えに行き、宿にて合流、昼食をロッジにてとった後、栂池ロープウエーを13:20に乗車した。ゴールデンウイーク前半なのでスキー場は、スキーヤーやスノーボーダーで賑わっているかと思ったがゲレンデには雪が全くなく、スキーヤーはまばらで閑散としたものであった。雪が消えたゲレンデは殺伐としたものだ。宿の主人の話では、昨年の同時期は宿前まで滑れたと言っていたことを思うと今年の雪不足が実感できる。

 ロープウエー上部のゲレンデ(栂の森ゲレンデ)も急斜面は所々土が出ているほどであった。 ロープウエー終点からリフトを1本登り栂池ヒュッテに続く林道に降り立ったのが14:00。栂池ヒュッテまでは約1時間の登りである。林道をゆっくりシール登高で予定通り15:00過ぎに栂池ヒュッテに到着した。古い割りには清潔な小屋である。予約していたおかげで我々6名は6畳の個室を与えられた。部屋の窓からは白馬岳へ続く白い稜線が望まれる気分のよい部屋だ。予想に反して小屋はスキーヤーというより中高年(我々も立派な中年だが)の登山者でほぼ満室であった。小屋の食事もまずまずの内容であるが不満が一つ、男性用の大トイレが一つしかないのである。水洗方式で山小屋の割には驚くほど清潔であるが、これでは明日朝のトイレ集中が心配になる。


4月27日(日) 晴れ
 小屋の朝食は6:00からであったが、予想通りトイレの集中もあり、栂池小屋を出たのは、7:00を少し過ぎてしまった。昨日小屋から稜線を見ると小蓮華岳直下までトラバース気味に登れるように思ったが、もしかすると稜線直下は雪庇が出ているかもしれない。稜線直下も急斜面のようだ。予定通り白馬乗鞍岳を経由して稜線通り歩くことにする。まずは天狗原までの標高差330mをシール登高する。標高1950m地点で小休止を取った後、天狗原に8:17、乗鞍山頂付近は9:28に通過し、白馬大池9:41に到着。天候はいいのだが風が強い。この辺りからシール登高からスキーをシュリンゲにて引張る。今山行のガイドブックとして北田紘一氏の日本スキーツアールート図集の白馬岳編を参考にさせてもらったが、この本の中で「小蓮華山は長い稜線の一番高い所、という程度の頂上。この辺りで昼食なら標準ペースだろう。」と記されていたが、小蓮華山頂での時間がまさに標準ペースの11:45であった。今日のような風の強い雪稜歩きは気が抜けないが、白馬岳から五竜岳に続く稜線の迫力は本場ヨーロッパアルプスにも匹敵する景観だと思う。昨年のゴールデンウイークに登ったイタリアの最高峰、グランパラジッソの記憶が呼び戻され、再びヨーロッパアルプスへの誘惑が脳裏をかすめる。年々体力も落ちているが、何とかいつまでも山岳スキーを楽しむ体力を維持したいものだと思う。三国境へは少し下り、白馬山頂に続く最後の稜線を登りきると白馬岳山頂である。全員で記念撮影の後、本日唯一の滑降を白馬小屋前まで滑り込む。予定していたより30分遅れたが15:00に小屋に到着することができた。小屋管理人より暖かい豚汁のもてなしのサービスが嬉しい。登山者は栂池ヒュッテから比べると極端に少ない。20名程度ではなかったか。小屋番の話では、この宿泊人数ではとても採算は取れないが、サービスで開いているとのことであった。小屋にはテレビもある。夕食後、明日の天気予報を確認すると降水確率50%とのこと。明日は停滞することになるのか。早々と眠りに就くが小屋の布団が湿っているせいか布団が暖かくなるのに時間がかかり、暫く寝付かれなかった。


4月28日(月) 曇り後雨
 5:00過ぎに藤田氏の「視界はあるよ。天候は高曇りで思ったより悪くないよ。」の声に起こされた。昨夜の天気図の配置から考えると雨が降らないのが不思議であったが、天候悪化が遅れているだけのことかもしれない。6:50白馬山荘前より、いよいよ柳又谷源頭部の滑降開始する。思っていたほどのアイスバーンではないのに安心。斜度も適当である。標高差450mを15分で滑り、標高2400m辺りに雪に埋まった長池上部より這い松帯が混じった急斜面をシール登高して三国境から続く稜線にあがる。ほぼ北へ針ヶ岳をトラバース気味に進むと雪倉岳避難小屋が視界に入ってきた。時間はまだ8:20。時間はたっぷりあるが今にも崩れそうな空模様を見て、ゆっくり休む気になれない。我々のパーティの他、テレマークの2パーティが相前後して続く。夏道が雪倉岳山頂に続いているが、スキーをシュリンゲにて引張り最後の登りを頑張る。丁度1時間で雪倉岳山頂に到着した。時間もまだ9:20だ。幸いなことに視界も悪くない。予定通り未滑降の雪倉岳北面を目指すことにした。雪倉岳山頂より北面経由して蓮華温泉に戻る詳細なルートは意外とガイドブック等に紹介されていない。大まかなルートは分かるのだがガスると地形が複雑なので迷い易い。ルートは山頂よりほぼ真北に1Km程滑ると夏道横の岩峰に出る。ここから沢状の斜面を少し滑り2002mのピーク左を目指す。あとは1367mのひょうたん池を目標に滑りトラバース気味に瀬戸川のブリッジに出るのだがガスるとルートを誤り易い。今日はザラメ雪の適度な斜面が続く。よくスキーが滑る。瀬戸川にかかる橋は、予想通り雪崩にて折れ曲がっており今にも倒れそうな破損状況であった。一人づつ慎重に橋を渡る。後は平馬の平に続く急斜面をひと登りして蓮華温泉に無事到着した。改築された蓮華温泉は食事も美味しく、寝具も清潔でトイレも水洗と旅館と変わらない立派な温泉ロッジである。一風呂浴びた後、予想通り雨が降ってきた。幸運な一日であった。


4月29日(火) 晴れ
 今日は最終日、天狗の庭を経由して白馬乗鞍山頂から栂池に戻る日だ。幸い昨日午後から降っていた雨もすっかり上がり快晴の空模様。7:00に宿を出る。暫くはシールを着け登っていたが、天狗の庭に続く斜面が急なのでスキーをシュリンゲにて引張り登る。休みたいのだが、斜面が急でゆっくりザックを下ろして休む気になれない。登にしたがって雪が硬くなってきているので、アイゼンを付けたいがもう少し、もう少しと思いながら頑張って2時間近く休みなく登り続けた。天狗の庭着9:00。初めてザックを下ろしゆっくり休憩。ここからは斜面も緩くなるはずだ。再びシール登高にて大池山荘を目指す。白馬大池は雪のグランドだ。山頂へは這い松が所々顔を出している斜面をスキーを担ぎ登る。乗鞍岳山頂には11:25に着いた。白馬大雪渓は何本かの雪崩れのデブリが残っている。やはり大雪渓を登るのは危険だと確信した。本ツアーで最後の斜面になる乗鞍岳東斜面は大バーンだ。小森宮氏が先頭で美しいテレマークターンを描く。天狗原で賑わっている一般スキーヤーが我々の滑りを下から見ている。こんな時はテレマークスキーのターンは優美で目立つ。各自思い思いのシュプールを描き、スノーボーダーや一般スキーヤーで賑わっているゲレンデ化した天狗原で一呼吸入れ、出発点の栂池ロープウエー乗り場へ各自のペースで滑り降りる。サングラスを取るとツアーを終えた心地よい疲れと安堵感に雪面が眩しい。よき仲間に恵まれた今回の山行に感謝した。この周遊ルートは白馬岳の展望とスキー向きの斜面が続く素晴らしいルートであったことを報告します。

【コースタイム】

4/26(土):栂池ロープウエー終点発 14:05       
        栂池ヒュッテ着     14:50       

4/27(日):栂池ヒュッテ発      7:05       
        天狗の庭着        8:20       
         同 発         8:30       
        乗鞍岳山頂付近通過    9:15       
        小蓮華岳通過      11:45       
        三国境着        12:40       
         同 発        13:05       
        白馬山頂着       14:20       
         同 発        14:40       
        白馬岳山荘着      14:50       

4/28(月):白馬岳山荘発       6:50       
        雪倉岳避難小屋通過    8:10       
        雪倉岳山頂        9:20       
        瀬戸川のブリッジ着   11:30       
         同 発        12:15       
        蓮華温泉着       13:40       

4/29(火):蓮華温泉発        7:05       
        天狗の庭着        9:00       
         同 発         9:20       
        乗鞍岳山頂着      11:25       
         同 発        11:45       
        栂池ロープウエー    12:30       
        ロープウエー下山    13:00       

【周辺概念図】

                                   (岡坂記) 


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