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ら・ねーじゅ No.259
1998.1−2月号


ロッキー山脈 CORORADO    
Hut tu Hut         


                       97年12月20日〜98年1月1日 
                           メンバー:鈴木鉄也 他1名 

 やりがいさに欠ける日々の仕事から解放されて、少し息抜きでもしよう、かといって同 
じような中高年が犇めき合う日本の年末年始の山も息抜きにはならないし、近くて気軽な 
海外となると、韓国や中国は近くて遠い感じがするし、やっぱりアメリカが無難かな?そ 
んな気持ちで、インターネットでのスキーツアーが探せそうだというので、航空券だけ手 
配してもらった。そのインターネットが調子悪く、行き先もデンバーとなってしまった。 
「まぁ、いいか。」てな調子で、コロラド州のスキーツアー集なる最新の出版本が日本で 
入手でき、適当なコースを見繕い初日のデンバー泊とHutだけ予約した。       
 “KORORADO HUT to HUT”は、装備や心構えなどを記載した親切丁寧 
な案内書となっている。荒木さんの英語力にほとんど頼ったとはいえ、コースを決めなが 
ら、交通手段、拠点地その他のあらゆるコンディションを電話で聞き出すには、時間と経 
費の点でも割りの合うものではなかった。                      

 Hutは場所により人気の度合いがあるらしく、思い通りには取れなかった。実10日 
の日程で前半は一つのHutに定着し、後半2〜3ヶ所ツァーしながらHutを渡り歩く 
計画となった。                                  

 デンバーでほとんどの情報や必要な地図、装備類の調達が可能かと思われるがどこへ行 
ったらいいものやら、唯一事前に予約したホテルの所在すらよく分からない。夕方頃に落 
ち着いたこともあり、地図1枚探せないありさまで、より近いVailに期待を繋ぐべく 
シャトルバスを当たった。これまた、空港からしか出ていないとのことでデンバー市内か 
ら翌朝、もう一度戻った。                             

 ロッキー山脈の中央エリアであれば、VailやAspen等が拠点となるが各コース 
のトレールヘッドといわれる出発点の詳しい状況などはVailやAspenであっても、
必要な情報が得られるものではなかった。                      

 10th Mountain Division Hut Systemが各Hutの 
管理、予約手配などを行っており、 Vailで必要な地図や大概の山道具の揃うお店と 
2〜3のタクシー会社を教えてもらったが、Vailでは、地図は何とか手に入れたもの 
のガスボンベがなく、バスやタクシーを使って離れた場所でようやく確保。ジフィーズ類 
は全くと言っていいほどなく、持参した予備のもので代用、生鮮食料も同様であった。結 
局、Glenwood SpringsとAspenが拠点となりそうだ。 Vailで 
Meredithのことを聞いても都心で郊外のことを聞いているようなもので、名前す 
ら知る人がいなかった。                              

12月21日(SUN)快晴                         

 二軒の山道具店で2万4千分の1地図やとりあえず必要なものを買い揃えた。あっとい 
う間に時間が過ぎ、ホテルと同じ敷地内にある寿司バーヘ、階下のスーパーで食べ物を仕 
入れた。                                     

【コースタイム】                            

DENBER AirPort=シャトルバス 10:00 →    
Vail 12:20                       


12月22日(MON)快晴                         

 6時過ぎにタクシーが出発したものの、外はまだ漆黒。風体に貫禄のある毒舌の入り交 
じった年配ドライバーとの車内会話が成り立つのだから、荒木さんの英語は堂に入ったも 
のである。                                    

帰りも呼んでくれれば、迎えに来るとCamp Haleには電話もあるし、広げた地 
図を見て、あの辺がルートだとか教えてくれるが、私にはよく分からなかった。3台駐車 
してあるTrail Headで、シール装着しようとしたら、張り付けてあった紙が上 
手く剥がれず片方を予備シールで代用した。身体がまだ寒さに慣れていないのか半端な寒 
さじゃない。一体は大きなキャンプエリアとなっており、冬は川の両岸がだだっ広い開墾 
地といった様相である。                              

 対岸に向かうトレースがあり、浅瀬の雪の覆った所を渡り、スノーモービルの走る道か 
ら右の上流沿いに歩くと間もなく尾根に取り付く。 思わず“Very cold”と口 
走ってしまう。雪は例年になく少ないとのこと。山肌は地肌が見えているが、道の部分は 
雪が残っている。樹林の中のひたすら登りとなり雪も深くなるが、トレースはバッチリ。 

 草地状の切り開きから、再び樹林帯となり、やがて尾根の上部に出る頃には更に大きな 
切り開きとなり視界がよくなる。上から重い荷を背負ったスノーボーダーが2人、別々に 
下りてきた。最上部の高みに出て、すぐ下のHutへ下りた。             
 時間も早く快晴で暖かく感じられたが、動く気にもなれず、コーヒーやスーパーで仕入 
れたラーメンを食べたりした。2階の寝室には、他のパーティーのシュラフが広げてあっ 
た。                                       

 夕方になって、若いカップルと3人の男女のパーティーが戻ってきた。このHutは眺 
望もあり、設備共に整った最も快適な小屋と言われている。ストーブの燃える小屋のなか 
は暑いくらいだ。プロパンガスは説明書きでは少し判りにくかったが、他の人に教えても 
らい夕食となる。                                 

【コースタイム】                            

Vail=(タクシー)6:00 →                
SouthCampHale 7:00 →             
TrailHead 7:20 →                 
RanchCreek 9:20 → JackalHut 11:30


12月23日(TUE)快晴                         

7時過ぎにようやく明るくなる。Danという方が3人のリーダーらしく日本の白馬岳 
に登ったことがあるそうだ。この辺では有名な方らしく、Kokomo Pass周辺や 
Pearl Peakから北側の尾根が滑降に良いこと等を教えてもらった。後半の計画 
についても色々アドバイスしてもらう。2パーティーとも今日は下山らしく我々が一番早 
い出発となったが時間は予定よりオーバーしておりPearl Peakをとりあえず、 
目指した。 切り開きの広く緩い斜面をコルまで滑り、樹林の中をシール登高していく。 
Pearl Peakから上部は全く木のないエリアとなりクーパーマウンテンに続く稜 
線コースとなる。                                 

 天気の良い時には360°のパノラマが広がるビューポイントとなるがその分、風が強 
く雪庇や雪崩を誘発し易い。悪天時は迷い易いきわめてデンジャラスな地帯とされている。
今日も天気が良く無風なので今回の目標であるCorbett Peakのピークハント 
を行うことにした。一旦コルへの下りの後、3〜400mのやや傾斜のある登りとなる。 
雪はそれ程硬くもなくシールのまま上がることが出来た。               
ELK MountainとPeakの斜面をPearl Creekに滑り降りてい 
くいくつかのコースが滑降向きであると同時に雪崩注意箇所だ。ここに来てあまり無理も 
出来ないが、少し岩の露出した尾根を逃れて谷筋を滑った。晴天が何日も続けば氷化して 
しまう日本の山と比べれば、雪が飛ばされているとはいえ、滑るにはまぁまぁの雪質であっ
た。                                       

Pearl Peakからのびる尾根側に出ると斜度が落ち樹林の中を滑るようになる。
Creekに沿った切り開きを滑り、途中源流のせせらぎの水を飲んだ。下から上がって 
くるトレースと出合いそのトレースを使ってHutに登り返した。もう今日は誰もいない。
満天の星を3方向からガラス越しに眺められ、赤々と燃えたストーブの傍らのソファーに 
横たわって寛いだ。遥々来た甲斐があると言うものだ。                

【コースタイム】                            

出発 8:55 → PearlPeak 10:20 →      
CorbettPeak 11:25 →              
PearlCreek 13:10 → JakalHut 15:15


12月24日(WED)晴れ                         

もう一泊の予定だったが、ELK Mountainあたりのピークハントや予定外の 
滑降も出来たので、次週の段取りに備えて下山することにした。一滑りして、十字路から 
樹林の中を左に下りていく。例年ならば軽い雪の中を木々を絡めて滑っていけると思われ 
るが、トレースを少しでも外すと目印を見失ってしまいそうなので、スキーの板を操作し 
辛いが、トレースを忠実に滑る。 途中からはトレースのほうがスピードに乗って時間を 
稼げるようになる。樹林の斜面から谷筋となると一段と冷たい感じがする。       
 やがてスノーモービルが走る広い林道となる。電話はCamp Haleの中央にある 
とDanに聞いていたが、すぐ下のトレールヘッドに建物が見えたので、そちらに向かっ 
た。NOVA GUIDESと言うフィッシングやラフティング、スノーモービルを行っ 
ているオフィスだった。タクシーを呼びたいと言ったら、10分も待てば車で送ってくれ 
ると言われた。                                  
VailからGlenwood Springsへ移動。              

 クリスマスイブは文字通りのホワイトクリスマスとなり、イルミネーション以外は街中 
ひっそりと静まり返った。Danに教えてもらったDiamond Jを予約し、聞いて 
いた中華料理店で夕食。暖炉の燃えるホテルのロビーで、ピアノのグリーンスリーブスを 
聞いた。                                     

【コースタイム】                            

出発 8:45 → Pando 10:35/50 →       
Vail 11:45 → (シャトルバス) →          
GlenwoodSprings 15:30            


12月25日(THU)快晴                         

 丸一日、土産物や後半の買い出しを予定したが、クリスマスホリディとなった街中は、 
どこも開いていなくて夕食もホテルのラストの時間にテーブルにつくことが出来た。   


12月26日(FRI)快晴                         

 安くはなかったが、品揃えの豊富な山道具屋で買い足す。子供に頼まれたヨーヨーを探 
しに、2〜3マイル歩いてWest Glenwoodまで行ったが、帰りが嫌になって 
タクシーを頼もうとしたら、そんなもの聞いたことがないと言われ、迎えの待ち合わせ時 
間ぎりぎりのバスにどうにか乗ることができた。                   

 ASPENに向かう主要道を途中から左にそれてBasaltの街でこの先「ノースト 
ア」だと言われマーケットでまた少し買い物をする。                 

 夏は周りのキャビンもいっぱいになると言う、西部ウェスタンの民宿と言った趣のDi−
amond J。Glenwoodから1時間ちょっとだった。前のオーナーが新興宗教 
風の少し変人のような人で、暫く宿泊営業はしていなくて、数年前にオーナーが変わり、 
営業を再開したのだと後で聞いた。カウボーイ姿そのままのシェフが出迎えてくれ、今宵 
のディナーであるターキーを丸ごと入れたオーブンを開けてみせてくれ、お腹が空いてい 
るだろうとツマミや飲み物を出してくれた。夕食まで部屋で寛いでくれと親切な歓迎を受 
ける。                                      

 子供連れの他の宿泊客とテーブルを囲んで、2度クリスマスをしているようだと、楽し 
い夕食だった。私がピーマンと勘違いしたスパイスを丸ごと食べてしまい、失笑を買って 
しまった。                                    


12月27日(SAT)晴れ後雪                       

 クリスがオレンジとスパイスをザックに入れてくれた。日に日に少なくなる雪のトレー 
ルヘッドを出発。2〜300m登ると、Mongomery Flatと言われる台地に 
出て、そこがくびれる所で右からの林道らしき広い道と合流。左の山腹を絡むように行け 
ば4時間ほどでGates Hut着。                       

 ダイナボット社に勤めて六本木に3年ほど住んでいたと言う方が、先に別のHutから 
到着していた。 この一体の最も典型的なHutと言われ、歴史は長く小ぢんまりとした 
Hutである。 後から2組とガイドらしい女性に連れられて数人の生徒が入ってきて、 
少し賑やかになった。                               

 3000m近くの標高にあるとは思えないが、2階の寝室はさすがに寒そうだ。1階の 
ストーブのそばのソファーに寝ることができて、ここも割と暖かかった。夕方から雪。  

【コースタイム】                            

DiamondJ 7:45 → Flat下 9:00 →     
Flat上 9:50 → HarryGatesHut 11:43 


12月28日(SUN)雪時々曇り                      

 4日かけてHutを繋ぎ、再びVail側に抜けるつもりだったが、最後のPolar 
Starが人気らしく29日しか取れなかった。Danに聞くと降り口のトレールヘッド 
には電話もないとのこと。30日にデンバーにたどり着いていないと帰りに間に合いそう 
にもないので2日のHut泊にし、ASPEN側へまた戻る計画に変更。        

 これまでと違ってトレースがなく、昨日あたりから雪が積もるようになった。Lime 
Parkの大きな草原や湖が広がる平地から長い小尾根を上がり、次のCreekを渡る 
所で、見事な銀髪のリサと言う名前の女性がいるアベックが追いついた。先行してくれる 
と言ったが、マークのある渡渉地点が倒木にふさがれ、少し上流を私達がまた先行するこ 
とになった。600m近くの斜度のある登りとなる。少し深めになったラッセルを続けて、
ひたすら尾根登りに終始。                             

 最後は切り開きとなり、別のトレースと合流すればPeter Esten Hutま 
では僅かである。昼を過ぎて日が射していないとやたら冷え込んでくる。雪の舞う中、ス 
トーブの燃えるHutへ無事到着。小屋のなかは賑やかだった。暫くして後発隊も到着。 
トレースを先行して感謝される。                          
 Gates Hutより一回り大きいが、寝室は満員となった。           

【コースタイム】                            

GatesHut 8:50 → LimePark 9:50 →  
Creek 12:00 → PeterEstenHut 15:13


12月29日(MON)曇り時々雪                      

 昨日苦労した登りは快適に滑る。 Creekを渡った所から歩きとなり、Gates 
Hutからの長い林道歩きは途中から下り気味となり、林道滑降は思いもよらず早い滑り 
となった。2じすぎにはDiamond Jに戻ることができた。           
今宵の同宿となった4人組みの男女は、あのJakal HutにいたDanと同じガ 
イド会社の人達とのこと。Danが社長だそうだ。持参のワインをご馳走になりながら、 
25日にはトレールヘッドに電話もないことだろうと、心配して我々のことを迎えに行っ 
てくれたことなどを聞いた。                            

【コースタイム】                            

PeterEstenHut 7:15 →             
LimePark 10:30 →                 
Flat下 13:30 → DiamondJ 14:10     


12月30日(TUE)快晴                         

 すっかりお世話になったクリスにGlenwoodまで又送ってもらい「また来て下さ 
い。」とお別れの挨拶。                              

 クリスマスの時に鉄道が走っているのが見えたので、機会があれば乗りたいと話してい 
た。聞けば、一日一本デンバー行きの便があるとのこと。シャトルバスは予約が必要だし 
遅くても夕方にはデンバーには着くだろうから、買いそびれた土産物もゆっくり買えるだ 
ろうと思った。                                  
 AmtrakのSalt Lake CityからDenberにつながるレールロー 
ドは西部開拓の歴史と言ってもいい主要な交通網であるから、さぞかし充実しているだろ 
うと思い込んでいた。窓口で聞いて唖然としてしまった。チェックが1時過ぎ、列車の入 
線が2時過ぎでデンバー到着が夜の9時過ぎとのこと。バスでさえ2〜3時間のコースで 
ある。                                      

 時間はかかるけど、景色は素晴らしいと言われる。荷物は3個まで預けられ、到着駅で 
受け取ることが出来る。駅舎には1人の女性しかおらず、すべての作業をこなしていた。 
 遅れて到着した列車から、乗務員が降りてきて再度チェックを受ける。車両番号の書か 
れた札を受け取り、ここで車両が振り分けられる。これがまた時間を要し、合理的なアメ 
リカらしくないなと思いつつも、見晴らしのいい2階席に駆け込んだが、満席で1階席と 
なった。フットレスの着いた余裕のある座り心地の良い座席でリラックスしながら、持ち 
込んだCoors Beerを開けた。プライベート室か食堂車以外はアルコール禁止の 
ようだ。2本も開けた頃、乗務員らしく、グリズリーを思わせるような怖い顔の大男が巡 
回してきて、とっさにビール缶を手で覆う。のろのろと走る中、景色は暗闇となる。売店 
で飲み物やスナックを買い求め、2階のサルーン車両で時々灯かりの見える景色や、ビデ 
オを楽しんだ。ディナーは最終時間の予約となり、最後の夜に列車の中で、ニューヨーク 
ステーキを食べることになった。ミディアムと頼んだのに丸焼けの状態だった。でっかい 
ステーキを添え野菜を諦めてお腹いっぱい食べまくった。               

 山間からデンバー市内に、回り込むように下っていく様子は、夜間飛行で降り立ってい 
くような幻想的な雰囲気だった。                          

 デンバーに着いても、車両の向きを変えたり入線をセレモニーのようにイラつくほどに 
時間をかけて行っている。もう10時となってしまった。駅舎にある電話帳の中から、迎 
えに来てくれると言う改装中で割引らしいホテルを取ってもらう。           
                                 (鈴木鉄也記) 

                                  電子化 作野 


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