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ら・ねーじゅ No.260
1998.3−5月号


南アルプス(三伏峠〜荒川岳〜赤石岳〜聖岳〜西沢渡し) 
                       1997年8月11〜15日 

                               武部 慎  


97年8月11日 曇り                          

 始めは小渋川から明石岳を目指す計画であった。前日宿に泊まったところ、そ 
このおやじさんが山好きで以前に小渋川に行ったこともあり、“渡渉は二十数回、
渡渉するときは上流を向きカニ歩きをすること、長めの杖を持ってバランスをと 
りながら渡ること、渡渉深さは腰まで”といろいろと教えてくれた。      
 車で湯折れに入る。途中マイクロバスとすれ違い、親切にも増水のため遡行は 
不可能で引き返すところだという。こちらが一人だとわかると危ないから止める 
ようにと教えてくれた。“自分で確認して止めますよ”と言って進む。湯折れの 
駐車場には何台も止めてあった。そこから歩きで立派な橋まで林道を行く。川幅 
は広く傾斜もあまりなくなんとか行けるかなと思い、まず、橋の下で練習がてら 
渡渉にチャレンジしてみた。水流が強く膝までで真剣になる。やはり行けないか 
もしれないと思いつつ、でも遡行するに従って枝沢がどんどん入るから、もしか 
したら行けると思った。いつ本流の水量が半分になるかが大きなポイントであっ 
た。そう思いつつ橋を渡る。川に降り、少し行くと上から高巻いて人が降りてき 
た。意外と人は入っている。待っていたがなんとか岩の上をトラバースできるの 
で進む。少し行くと右から顕著な枝沢が入りこれで水量は3/4になった。さら 
に行くと岩にシュリンゲがぶら下がっていた。その通りに高巻くが降りるのがピ 
ンに両足を乗せワイヤーに頼りながらで緊張する。さらに行くとついに渡渉が出 
てきた。赤ペンキでここを渡れと明示されてはいるものの水流が激しい。幅8m 
でも3mまでしか進めない。水深はももだがしぶきは顔にもかかる。こらえてい 
るのがやっとで、あと一歩進むとどこまで潜るか?流されそうだ。宿の親父さん 
の言いつけを守って覚悟を決めて3回チャレンジ。でもやはり怖くてダメ。渡ら 
ずに水流の上を進むことも3かいチャレンジ。こちらのほうが可能性はあったが 
突破はならず。もう寒くて凍えていた。やっぱり撤退。            
 鳥倉林道から三伏峠に向かう。なかなか車道終点に着かない。大きな駐車場に 
ぎっしり車が止めてあったのでそこに自分も止めて歩き出す。が、歩けど歩けど 
登山道入り口が出てこない。しまった、もっと車で行けばよかった。40分位歩 
いたころで上がってきた車をヒッチハイクした。なんと犬2匹が乗っていた。す 
ぐに着いた。わりととばして、でもしっかり休憩しながら登る。なんとか暗くな 
る前に水くみとテント張りを終えた。なんと車に乗せてもらった兄ちゃんは僕が 
寝る頃テン場に着いた。ご苦労様。犬は元気だった。             

 コースタイム                              
湯折れ   9:00         橋      9:30/10:00 
撤退   11:00/12:00   湯折れ   13:40       
駐車場  15:00         登山道入り口15:40       
三伏峠  18:20                           


8月12日 晴れ 曇り 霧 雷 小雨 晴れ                

 今日は行けるところまで。意外と荒川方面に行く人がいるのに驚く。天気も良 
く縦走は気持ちがいい。小河内岳までは快適。ここからの富士山はなかなかきれ 
い。荒川の稜線も堂々と遠くに見え、なかなか大変そうだ。高山裏まではお花が 
割と多い。高山裏でそうめんを作りパワーアップする。小屋から10分行った、 
コース上にも水場があり2.5L水を入れた。前岳の登りはガレで見えているか 
ら余計なかなか進まない。雲が急速に出てきて稜線に着く頃は雷が遠くで(明石 
方面で)鳴り出していた。稜線から前岳まではナイフリッジのところがあり、近 
くで雷が鳴ればビクッとして落ちそうで雲に雷を落とさないように心の中で願っ 
た。荒川小屋への分岐まで来て悪沢岳へも行きたいけどどうするか。すぐそこに 
テントが張ってあったのでそばに僕も張った。標高3000mの稜線から5m位 
下のテラス。雷も鳴っているしまあいいか。テントを張り終えるとパラパラと雨 
になった。                                

 コースタイム                              
三伏峠   5:30          小河内岳   8:10/25   
高山裏  10:50/12:10    稜線    15:10      
天場(荒川小屋分岐のそば)15:30                   


8月13日 晴れ 霧雨 曇り 晴れ 曇り                 

 寝坊してしまった。稜線を歩く人の声がして目を覚ます。テントからは日の出 
がきれいに見える。さっさと支度してデイパックで悪沢岳にアタックする。荷物 
が軽いっていいことだ。間ノ岳が大きい。農鳥岳は稜線上の小さなピークの感じ 
がした。さてこれからどこに降りようか。車は三伏にあるが、明石まで行けば来 
た道を戻らず聖を越えて伊那側に降りてもほとんど時間的に変わらない。問題は 
西沢渡し。何気なく登山者に聞いてみたら、増水しても渡れるとのことで今日は 
のんびり百間洞まで行くことにした。大聖寺平の先で広河原小屋(小渋川)への 
指導標があり、だれでもいつでも行けそうに書いてあった。本当はここから来る 
はずだったのになあ、と思った。ここから明石岳まで小渋川が多少雲があるが見 
渡せる。やはり残念。明石の下りはガレでいやになる。昨日の疲れか休んでばか 
りいた。                                 

 コースタイム                              
テン場   6:10          悪沢岳    7:10/20   
分岐    8:50/9:00     荒川小屋  10:00      
明石岳  13:00/10       百間洞   15:40      


8月14日 曇り、霧、雨                         

今日はできれば下山するから行程が長く早立ち。でも大沢岳経由の遠回りのルー
トをとってしまった。今日は曇りで聖は雲の中で見えない。もう縦走も4日目と 
なるとだんだん胃拡張になってきて休むたびに何かを食べていた。小兎では近く 
(5分と書いてあった)に水場がありテントも張れた。でも昨日はバテテいたか 
らムリ。なかなかのアップダウンに苦しみつつも聖まであと一本のところで、相 
変わらず休んで食べているとなんと当会の岩崎さんに会いビックリした。暫くしゃ
べって寒くなったから出発。やっと聖に着くが何も見えず。岩崎さんのお薦めで 
奥聖にも行く。あとは下るのみ。これが大変。膝を休ませながらやっと西沢渡し 
の分岐まで来た。もう一日聖平でテントを張るかとも思ったが、西沢渡しに向か 
う。意外と登ってくる人がいるのには驚く。下るのもいやになって霧から小雨に 
なってきたしテントを張るかと思っていると道端にテント一張り張れるスペース 
がありここで今日はテン張ることにした。水は1L。ちょっと少ないけども、ま 
だ2時過ぎで時間的には行けるけれどもくじけた。              

 コースタイム                              
百間洞   4:40          兎      8:20      
聖    10:30、(奥聖10:50)11:15            
テン場1860m                             


8月15日 雨                              

 雨は夕立ではなくずっと朝になっても降っていた。さすがに増水が心配になっ 
た。でも林道に着いてから雨の中3hも林道を歩くのか、それともうまくタクシー
が上がってくるかと思っていた。パンを食べてまたシュラフに入って寝ていると 
降りてくる足音がしてその人とテントの外と中で話をしてその人の車に国道まで 
ということで乗せてもらうことにしてもらった。ラッキー!さっさとテントを撤 
収して後を追う。こんな雨の中でも登ってくる人が結構いる。必死に下っている 
つもりでも、彼らに前の人はどの位先に下ったかを聞くと5〜10分と全く縮ま 
らずあせる。西沢渡しで追いついた。きっと待っていてくれたのだろう。ワイヤー
ロープに付けられたカゴに乗って濁流をひとっ飛び。さすがにこんなに土砂降り 
でも渡れる。でも次の小さな奥青岩沢の増水で靴の中に水を入れてしまった。無 
事に車に着いた。なんと飯田まで乗せてもらった。飯田では曇りだった。    
 伊那大島からは鹿塩行きのバスを待っていると中高年の登山者が来て“相乗り 
しないか”と言ってきて“ルートは?”と訪ねると“自分と同じ鳥倉林道”との 
ことで実にラッキーであった。駐車場ではまた雨になった。          

 コースタイム                              
テン場 6:40   西沢渡し 7:50   車道 8:40       


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