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ら・ねーじゅ No.261
1998.6−7月号


蓼科山(2530m)               

                          1998年3月14日〜15日 
                                    岩崎正隆 


 2月に車山の北にあるエコーバレーへちょっと遅い初滑りに行った時に、白樺湖から正面に見える蓼科山が例年になく雪も多く滑れそうだと思った。富士山と同じ成層火山で端正な姿の蓼科山は、山頂部がわずかに森林限界となり、冬は帽子をかぶったように雪がつく。その山頂部からたぶん火山性の土壌の為と思われが、木が生えないかもしくは疎らな縦に縞状の斜面がいくつかある。そこで今回、縦じま状に雪の付いた斜面にルートを求めて出かけてみることにした。

 14日(土)あずさ1号で新宿を発つ。茅野からバスで白樺湖へ。ここから佐久平駅行きのバスに乗り換えて、白樺高原スキー場着。風はあるもののまだ見通しのきく今日中に山頂を往復しようと、急いで身支度をする。

 谷川の天神平のものをちょっと小さくした様なゴンドラに乗り、スキー場上部標高1800mへ出る。この周辺にはクロカンのコースがいくつかあるようで、「七合目へ」という標識がある。一緒に来たかみさんには悪いがスキー場で遊んでいてもらい、ひとり山頂を目指す。(12:00)
 スキー場の積雪は190cmと十分だが、雨でも降ったか雪面はバリバリで滑りには苦労しそうな予感。林間をしばらく進むと、大河原峠への道に出る。それに沿って進むと、鳥居のある登山口に着く。屋根の付いた休憩所に10人程のクロカンのパーティーがいた。

 今日一日は天気ももつと思い出発したが、だいぶ風も強まり山頂も見え隠れするようになった。急ぎ先へ進む。トレースに沿って七合目、馬返しと進みしばらく行くと沢状の開けた斜面に出た。ここより上部はトレースもない。当初蓼科山の北面、蓼科山荘直下の木の疎らな斜面に目星を付けて、そこを登下降するつもりでいたが、南東に延びるこの斜面が快適そうに思え、詰めることにする。スキーアイゼンを利かせて快適に登る。夏道はこの斜面がくびれて細くなる手前を右手の林間へ入るようであるが、スキーを脱いでラッセルして進まねばならないため、沢を詰めることにする。次第に傾斜も増し、アイゼンにはきかえて進むが、沢が左右に分かれる約2200m地点でこれ以上上からの滑降は困難と判断、スキーをデポして山頂を目指すことにする。右俣にルートを取り、トイ状の35度ほどの斜面を両手のストックを短くしてバランスを取りつつ登る。雪は十分締まっているので雪崩の心配はなかった。眼下に女神湖が小さく見える。源頭部の吹き溜まりを乗越し、山頂から大河原峠へ続く尾根の一角に這い上がる。

だいぶ大河原峠寄りに出てしまった。山荘のあるコルまではまだ500m程ある感じだ。その右側に登路に予定していた樹林のはげて雪面の開けた斜面が見える。既に2時となり、一度下ってあの斜面を登り返している余裕はない。明るいうちにスキー場下の宿に帰るためには、3時過ぎには山頂に着きたい。しかしここから尾根上までの樹林の吹き溜まりは、下手をすると胸まですっぽりともぐる所もあって苦労する。それでも久しぶりの冬の八ヶ岳の深雪を結構楽しんでいる所もあって、自分は滑ること以上に登ることが好きなのだなぁと思ったりする。普通のラッセルでだめな所は、熊のように四つん這いになって進む。

 1時間近く雪と格闘して尾根上に出ると、幸いにも数人のパーティーが通ったトレースがあった。正面向こう側には北横岳から大岳へ延びる城塞のような連なりが望める。いくつかの火山から構成される八ヶ岳の中でも、北横岳が一番新しく出来たものといわれ(約1万年前)、黒い地肌に雪をまとった姿は荒々しく感じられる。行動食のパンとテルモスのお茶で一息いれ、山頂へと飛ぶような気持ちで進む。雪に埋もれた蓼科山荘の前には、夏道が十字に交差していることを示す道標があるが、今は雪面にわずかな踏み跡があるだけだ。3時をまわったが、山頂への視界もはっきりしているので最後の登りにかかる。北横岳から南は権現、編笠にいたる八ヶ岳の主だったピークは冬期に全て登っているのだが、一つ離れている蓼科山には、実はまだ夏冬含め一度も登っていなかったのだ。

樹林を抜けると強風のためトレースも消え、のっぺりとしたドーム場の斜面が広がる。クラストしているので慎重に進み、左にやや回り込むように登って山頂小屋の前へ出た。後で知ったのだが、この日が今年の春一番と言うことで、南寄りの風が強い。残念ながら山頂でゆっくり休んでいる余裕はなかった。微かに天狗岳まで望める視界を写真に納め、一人だけの山頂を後にする。また、天気の良い日にゆっくりこようと思いつつ。

 翌15日は曇り時々小雪。かみさんと一緒に初めてのクロカンで、女神湖のほとりをスノーハイクする。北八ヶ岳にはここ以外にも、ピタラスから雨池や麦草峠方面などスキーで歩きまわって楽しい所が多い。

コースタイム
ゴンドラ上12:00→鳥居のある登山口12:20→2200m地点13:30→尾根上14:50→山頂15:30→2200m地点16:30→スキー場下18:30





                                  (岩崎 記) 

                                (作野 電子化) 


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