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ら・ねーじゅ No.261
1998.6−7月号


月 山                       
八甲田まで行って全く滑らず月山へ

                            1998年5月1日〜5日 
              L:岩崎、メンバー:矢野、小森宮、中西(岩崎の友人) 

5月1日(金)                               
 1日がかりで走った東北道に黒石インターで別れを告げて、一路酸ヶ湯を目指す。そこ 
で目にした八甲田の光景には、がっかりというよりは驚きという他なかった。八甲田が初 
めての私や矢野さんはもちろん、以前春スキーをした小森宮さんも言葉を失った。    
 既に夕暮れも迫っているので、酸ヶ湯温泉近くの野営場に天張る。夕食には、おでんに 
仙台の中西が仕入れてきたマグロの刺し身を肴に地酒を飲む。             
明日の予報は、曇り後午後近くから崩れるとのこと。                

5月2日(土)                               
 夜が明けてテントの外に出てみると、南よりの風が暖かく感じる。          
 小森宮さんが聞いた情報によると、現在滑れるのは大岳山頂の東面と睡蓮沼から南八甲 
田方面で、そこも下は薮が多く雪は少ないとのこと。この冬の雪は例年のようにだんだん 
に降り積もったのではなく、二回ほどどっと来たものらしく、こういう雪は融けやすいと 
いうことだ。                                   
 朝食にうどんを食べた後、スキーをする用意をして車で出発。            
 雪の回廊となる笠松峠付近も既に壁はなく、睡蓮沼周辺も雪は斑に残るのみ。無理をし 
て薮をこいで入っても、1200−3000mから上は強風とガスでスキーどころではな 
いだろう。猿倉、谷地と回って、北側の八甲田温泉へ向かい、途中八甲田東面から東北面 
にかけていくつかの滑れそうな「残雪」を発見するが、取り付きまで歩く気になれず。ロ 
ープウェーへ回っても強風のため運行中止。仕方なく酸ヶ湯に戻る。一周した結果、八甲 
田は諦め他に移動することに決める。                        
 まずは千人風呂に入って気分を新たにする。中西が焼石なら必ず雪があると提案する。 
移動する前にせっかくだから青森見物をしようと、三内丸山遺跡を見学、青森港近くの郷 
土料理店でホタテづくしの昼食をとる。窓越しにはるかに黒く見える八甲田の山並みがむ 
なしい。                                     
 降り出した雨の中を、東北道で南下する羽目となった。車内に流れる矢野さんご希望の 
演歌が切ない。雨は盛岡に着く前にひとまず上がるが、私は焼石の銀明水から上の斜面に 
あまり魅力を感じず、鳥海か月山を希望。結局、距離はあるが帰りの楽な月山にする。  
 高速道を飛ばしてはみたものの、青森から6時間を要して8時に月山スキー場の駐車場 
に到着。ここも異様に暖かい。急いでテントの設営と夕食の準備に取りかかる。今夕はす 
き焼き鍋。一杯やって御飯を食べている途中でポツポツと来た。あわててテントの中に逃 
げ込むと、間一髪して風雨共に強まる。その後は、メイ・ストームの一夜となった。   

5月3日(日)                               
 一夜明けると、私のテントの中は水浸し。矢野さんのツエルトは底を裂いて排水したが、
小森宮さんはシュラフが濡れてしまった。おまけに車の運転席側の窓が開けっ放しで、中 
がびしょびしょになってしまった。                         
 風雨共に弱まったが、午前中はダメ模様。そんな中、中西がこの雨で気が滅入ったのか、
仙台の家へ一度帰って、明日出直してくるから山形まで送って欲しいと言い出す。明日は 
天気も回復して朝から行動できそうだが、彼の到着を待っていては時間のロスになる。グ 
ループ行動を無視したなんとも自己ちゅうな考えである。この話の裏には、かみさんに小 
三と幼稚園の二人の子供を残して、G.W.中、山へ来てしまったという後ろめたさがあ 
るのだが、従うことは出来ず、帰るなら山形まで送るが、以後は別行動するというように 
言う。すったもんだした挙げ句、5日の早朝帰宅すればO.K.という承諾を電話でかみ 
さんからとって、結局そこに留まることとなった。                  
 昼近くなって雨もあがり、スキー場全体が見渡せるようになった。さすがに月山、雪は 
十分ついている。チャーシュウメンを作って腹ごしらえをして、スキー場周辺で遊ぶこと 
にする。                                     
 リフトに乗る頃また雨がちらつき出す。ガスもかかって見通し悪し。何分、月山に来る 
予定など全然なかったので肝心の地図がない。見通しがない以上、下手な行動には出られ 
ない。スキー場上部を姥ヶ岳方面へシール登高するも、スキー場の声が聞こえるところま 
で。結局ロープ塔の上部まで登って一滑りする。それでもガスが濃くてバラバラになって 
しまう。スキー場全体のコース状態もわからぬまま、他のスキーヤー(今やボーダーのほ 
うが多い)の後について滑り、リフト乗り場に着く。もう一本滑ってこの日は引き上げる。
 駐車場に戻ると、車の暖房をつけて濡れた物を乾かす。水浸しになった私のテントを荷 
物置きにし、車のシートを倒して二人分のベッドを作る。夕飯は豚汁と御飯、それに仙台 
名物、牛タンと笹かまで一杯やる。                         

5月4日(月)                               
 朝、天気予報を聞くと移動性高気圧がほぼ日本全体を覆い、4日から5日にかけては山 
形県地方も晴れの予報。やっと山スキーが楽しめそうだ。               
 リフトの上から姥ヶ岳を目指してシール登高する。他のスキーヤー達もロープ塔から上 
をツボ足で姥ヶ岳へ登っている。山頂で一服していると、月山山頂のガスも次第に晴れて 
きて、姥沢の広大な斜面が見渡せるようになった。しかし山頂直下、鍛冶小屋付近は雪が 
切れている。矢野さんはその下まででいいのではと言うが、山頂の向こう側にいい斜面が 
あると伝える。                                  
 姥ヶ岳から尾根通しには進めず、一度100mほど滑り込んで姥沢を詰める。沢は風も 
なく暑いくらいだ。山頂の方から多くの人々が隊列となって降りてくる。修験道の人達で、
随分早い時期から登るのだなぁと感心する。雪の切れたところで、スキーをザックに付け 
て急登する。背後には朝日連峰の山並みが美しい。鍛冶小屋の上、月山の南側の肩にあた 
る平坦地も今は全く雪がない。ここも雪原で視界がなかったら嫌なところだ。確か数年前 
のG.W.中にスキー登山したパーティーが遭難したことがあった。登山道の脇に松尾芭 
蕉の句碑が建っている。                              

   雲の峰幾つ崩れて月の山                    

 今回の我々の山行も、八甲田のことあり、その後の嵐ありで、やっと辿り着いた月山と 
いう感じでちょっとこの句の気分に浸る思いだ。                   
 山頂に着くと、北から東側にかけては一面の雲海で、鳥海山も山頂部だけぽっかり浮か 
んでいる。期待した通り、東側には大雪城の大斜面が広がっていた。混んでいたスキー場 
とはうってかわって、スキーヤーは我々を含めて数人のみ。まずは昼食をとり、月山神社 
にスキー滑降の無事を祈念する。まずはせっかちな矢野さんが飛ばしてあっという間に2 
50−60mほど滑り降りた。続いて小森宮さんがテレマークで華麗に滑る。私と中西は 
思い思いに自由に滑る。登り返しは正面左側の尾根伝いにルートを取って、私と小森宮さ 
んはもう一本滑る。また登り返して一息いれ、スキーをザックに付けて下りにかかる。矢 
野さんも登って来た甲斐があったと御満悦だ。姥沢の上部から再びスキーを付けるが、大 
雪城ほどの爽快さはない。途中から姥ヶ岳に登り返して山頂で暫し休息。ここから右に回 
り込むようにして、リフト乗り場までダイレクトに降りた。              
 駐車場に戻ると、まずはさっぱりしようと志津の旅館街まで風呂に入りに一度下る。  
 夜は満天の星空のもと、具沢山の鍋をつついて酒を酌み交わす。今日は充実した一日で 
あった。                                     

5月5日(火)                               
 朝、5時半に駐車場を出発。矢野さんが新幹線で帰るため仙台駅による。続いて多賀城 
の中西宅へ。小森宮さんは私におつきあい戴いて、東北道を一路、東京へ。郡山から磐越 
道を経由して帰京した。                              

 コースタイム                              
駐車場 8:30 → リフト乗り場 9:00 → 姥ヶ岳 10:00 →  
月山山頂 12:00/14:00 → 駐車場 16:00          


                                  (岩崎 記) 

                                (電子化 作野) 


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