Last Update : 2000/11/27  戻る

SALOMON X-Adventure
2000年 岐阜大会出場報告(チームGOKU)
日程:2000年10月13日-15

●はじめに
 X-Adventure(クロスアドベンチャー)とは、SALOMON社が主催しているレースのことで、そのレース内容と長い距離が特長である。日本では昨年から行われており、その第1回大会にYSDから藤田、槙田、丸山、他1名が出場した。レース内容とは、オリエンテーリング、MTB(マウンテンバイク)、ロープアクティビティー、カヌーの4種類の競技で、総距離は約200km、2日間をかけて行われるレースである。
 第2回の今年、丸山、槙田、他2名で出場し、サポートとして鈴木(岳)さんにお願い頂いた。舞台は岐阜、総距離230km、夜を徹したレース展開となった。
(文中の人物紹介)
丸山(L):2年前にYSDに入会し、なぜか山スキー以外の活動が多くなった。去年もX-Advに出場。
槙田  :同じくYSD会員の女性メンバーで、丸山と同様X-Advレースは2回目。
堀内  :丸山と同じ会社の後輩。大学時代は探検部で、カヌーが得意。
かおっち:新宿の某高級ホテルで働いている帰国子女。フルマラソン3h48mで、体力はかなりある。
(槙田さんは「まきお」、「マッキー」になったりしてます。)

●報  告
今年は距離が長いので、去年と同様オリエンテーリングの要素が少ないものだと思っていたが、その予想は外れた。地図をもらって宿に戻り、さっそく確認してみる。ん?よく見るといくつかののステージで、CP(チェックポイント)をたどる道がない。こういう場所には1/25000地形図が別にあった。どうも地図読みが必要らしい。メチャメチャ楽しみー!!
興奮を押さえつつ、道筋をマーカーペンでなぞる。それからステージに出場する選手もあらかじめ決めておいた。その都度決めるのも面倒だし、選手もその方がいいだろうと思ったからだ。でも基本的に私と堀内は出ずっぱり、そしてMTBをマッキー、ラン系をかおっちとして交代することにした。

〈1日目〉
 スタートは乗鞍頂上付近の駐車場からの予定だった。宿を5時に出発し、車で乗鞍スカイラインを上がる。しかし悪天候と凍結のため、ステージA・Bはキャンセルされることになった。このため乗鞍南西の高根中学校に1時間強の移動となる。
スタートを待つレーサー


ステージC:オリエンテーリング 距離:12.3km 8:00スタート
 出場は丸、堀内、かおっち。高根中学校をスタート後、からだらだらとした林道の登りを走る。しかし2kmも行かないうちに堀内がつらそうだ。どうやら先週の槍ヶ岳の疲れが取れてないらしい。そう言う自分も風邪を引いていて、のどが痛くてしょうがない。早くも歩きモードになるが、第3集団くらいのチームはみんなこんなペースだった。
林道の終点からは地図上に道がない。ここからは沢を行くが、徒渉の連続で靴がびしょ濡れになってしまう。CP2からCP3は沢登りとなるが、ハーネスが必要なほどではない。不整地慣れしていないかおっちが少し遅れる。ヤブ漕ぎをしてCP3に出てからは、また林道だ。ここは車が通らないらしく、紅葉のトンネル、落ち葉のじゅうたんの中を走る。しばらく行くと地図に出ていない分岐があった。現在地は分かっていたので、方角的にそれらしき方を行く。すると1チームが戻ってきたが、無言のまますれ違う。
 不安になりながらもそのまま行くと、方角と道の曲がり具合から自分が間違った道に入っていたことが分かった。そこで引き返し、20分くらいロスしてしまう。堀内に「僕の失われた体力を返してください。」といやみを言われてしまう。
 CP4を過ぎると視界が開け、御岳がどーんと見える高原に出た。ここは牧場になっており、牛がかけぬける中を恐る恐るゴールに向かう。

(右はレース中使用する、1/25000地形図の一部。1Cから3Cまでは道がないので、いきなり迷ったチームもあったらしい。)



ステージD:MTB 距離:56.1km 11:15スタート
 出場は丸、堀内、まきお。このステージは今大会最も長い。千町牧場をスタートした後、ステージ前半はアップダウンのある舗装路だった。御岳北西の濁河温泉付近からシングルトラックに入るが、悪路だったので乗車率は10%くらいだった。下りも登りもMTBを担ぎっぱなしで、特に後半は急登でつらかった。それを終えると長い林道の下りが待っていた。思いっきり飛ばすが、何しろ距離が長いので腕が疲れてくる。マッキーはそのため3回もクラッシュし、両腕血だらけになりながらも頑張っていた。
 長い林道を下り終えてもまだステージの半分だ。ここからは下呂に向けての長い峠越えなので、だらだらとした登りを永遠と行く。その間、3チームくらいに抜き去られる。MTBは結構練習したのに、まだトレーニングが足りないようだ。
 峠を越えた後は、1/50000の地図には道がのってない。この部分は分岐が多く、複雑だったはずだ。しかしこの部分の1/25000を忘れてしまっていたので、他のチームについていくことにする。すると先行したチーム(たぶんエイトマンズさん)も自信がないらしく、止まって地図を確認していた。昨日マーカーした記憶によれば、この先に分岐があるはずだったので我がチームはそのまま進むが、道は工事中で行き止まりだった。タイヤの跡もなかったので、引き返すことにした。これでまた20分くらいのロスだろうか。エイトマンズに「行き止まりでしたよ〜」と伝え、そのときにさりげなく地図を見せてもらう。帰り道を頭にたたき込み、出発。エイトマンズはパンクのため、追い越した。
 それにしても地図がないというのは不安だ。方向的にあってるだろうという道を選択しながら、下呂に向かう。途中で外人チームに追いついたので、ついていくことにした。看板のない分岐をためらいもなく曲がっていったのでついて行くと、地元の人が何やら大声で叫んでいるのが聞こえた。これに外人チームも不安になったらしく、我々に聞いてきた。私がそのおじさんを探して聞くと、下呂温泉方面の道を教えてくれた。なんか人助けをした気分で気持ちいい。そのまま下りつづけるとゴールだった。でも次のステージの最終スタートまであと15分しかない。間に合って良かった。

ステージE:アブセイリング 距離:1.7km 17:30スタート
 出場メンバーは前と同じ。どうやら西洋では懸垂下降をアブセイリングと呼ぶらしい。スタート前にハーネスを着けてもらい、大きな橋のまんなかに向かう。大きな橋とは歩行者用のもので、丹沢の大倉にある風の大橋のような感じだ。しかし高度がある。
 下降方法には2通りあり、自分で速度を調節できるタイプと、ロープ固定でスタッフに下ろされるタイプだ。私は前者をやりたかったのだが、選択させてもらえず無理やり後者のタイプとなった。納得のいかないまま、つるべ井戸にぶら下がったバケツのようにブラブラぶら下がる。マッキーは運良く調節タイプをやっていた。
 高度差は50m程あるらしいが、まったく恐怖は感じない。新横浜大橋で模擬練習しておいて良かった。
降りてハーネスを脱ぎ、そこからは看板にしたがって温泉街を走るのみだった。沿道の方に「ガンバレー」と励まされてうれしかった。しかし堀内はここまでで力尽きたようで、ほとんど走れない状態になっていた。
 飛騨川沿いのゴールに着くが、サポートがまだ来ていないので休むことにした。日もとっぷりと暮れている。暗闇の中、他のチームの人が話し掛けてきて、「ここのアシスタンスポイントの入り口は分かりにくいですよ。もしかしたら迷ってるかも知れないですね。私も迷いましたから。」とのことだった。来そうな気配もないので、入り口に向かうことにする。次の最終スタート時間までは時間がないのに、どうしたんだろう。堀内は道端で寝始めている。15分くらい待ってようやく我がサポートカーが来た。
 「鈴木さん、どうしたんですか」と聞くと、
 「戻ってくると思って・・・」
 とにかく次のスタート地点まで急がなければならない。カヌーのステージFはとっくに終わっているので、ステージGに向かうことにする。

ステージF:カヌー 距離:17km
 最終スタート時間に余裕で間に合わず、スキップ。

 「じゃあ、ナビお願いします。」と鈴木さん。なに〜!?思わず、
 「サポートのリストの中に、次のポイントまでの経路確認ってありませんでしたっけ」
と怒ってしまった。いろいろおにぎりとか作ってくれていたのを忘れてて、言ってから「しまった」と思った。たぶん気を悪くしてしまっただろう・・・。
 ナビをしようにも、眠くてどうにもならない。なんか道が違うようなのでよく見てみると、やっぱり違っていた。かなり戻ることになってしまったので、もう次のステージはあきらめ、その次のステージHに向かう。一応ナビするものの、すぐ寝てしまう。たまりかねた鈴木さんが地図を取り上げて自分で見てくれた。20分くらいの睡眠だったと思うが、そのおかげでかなり回復した。

ステージG:オリエンテーリング 距離:12.3km
 上記のようなミスが重なり、最終スタート時間に間に合わずスキップ。このステージは、レース中最もオリエンテーリングが困難だったようだ。行かなくて良かったかもしれないが、やはり行ってみたかった。

ステージH:MTB 距離:19.4km 20:00頃スタート
 2ステージ連続でスキップしたので、まだトップチームも到着していなかった。
一般チームのスタートは、トップ3チームがスタートした後になるらしいので、しばらく待つことになった。トップチームが帰ってきて、ほとんど間髪置かずにスタートしていく。やはり気迫が違う。自分たちは同じレースをしているのだろうかと思うほどだ。
 堀内がダウンしていたので、メンバーは私とまきお、かおっちで行くことにする。コースの大半は国道256号だが、ところどころでわき道にそれる。CP1を過ぎた後、地図に示された点線の道が実際はつながっていないらしく、確実な道を行くことにする。それでもこの付近は地図と実際の道が一致しておらず、現在地を見失ってしまう。多くのチームがCP2を探すために迷っていて、あちらこちらにMTBのライトだけが見える。
 ある橋にたどり着いたとき、橋がかかっている方角から現在地を仮定できた。ここは左に行けばCP2があるはずだ。いくつかのチームが我々についていた。彼らも分かっていたかも知れないが、ゆっくり行っても追い越さないところを見ると、ついてきているだろうと思った。しばらく行くとそこにはCP2があったので、ホッとした。
 それ以降は特に迷うところもなく順調に進んだが、練習で顔面クラッシュをしたことがあるかおっちが林道の下りが恐怖症になっているらしく、歩くほどのスピードで下った。

ステージI:MTB 距離:21.5km 21:50頃スタート
 ここで堀内が復活し、まきおが連投。このステージはすべて舗装路で、特に難しい地図読みもなさそうだ。しかし途中で地図に載っていない分岐があり、そこで迷っているチームがいた。方角と地形から判断して、いちかばちかで道を選ぶ。するとそのチームもついてきた。かなり下ったので、引き返すとすると大きなロスになる。もう少し行ってもCPがなかったら引き返そうと思っていたとき、CPがあった。
 その後長良川沿いに出てCPを1つ拾った後、郡上八幡の少し北のゴールへ向けて飛ばした。

ステージJ:オリエンテーリング 距離:12.1km 23:10頃スタート
 この頃には風邪も完全に悪化し、声を出すのがやっとだった。でもこれで今日が終わりかと思うと気が楽になる、と思っていたら甘かった。
 堀内とかおっちでスタートする。CP2に向かっていると、またもや地図と実際の道が違う。もうこれが当たり前のようになってきた。これで15分くらいロスした。はやり、距離と方角を絶対的に信頼すべきだと痛感した。移動した距離を感覚的につかめれば、地図にない分岐に来たときにだまされなくてすむだろうと思った。
 CP2までは林道で、ここからは1/25000にも道が載っていない。途中まではサロモンの看板を頼りに登るが、途中からそれも消えた。なんかだまされた気分だ。看板を頼りに来たのでコンパスを見ていなかったのが災いし、尾根に出てもどこの沢を詰めたのかいまいち分からなくなってしまった。
 しかも配布された1/25000地形図は等高線も見えないようなコピーのもので、しかたないので1/50000を見る。行くべき方向を完全には確信できなかったが、先行チームがいたので今度は逆に頼ることにした。獣道のようなところをしばらく行くと、CP3があった。
 このCP3は林道沿いにあったが、地図上では林道から離れているところにポイントされている。いったいこの林道はなんなのだろうと思いつつ、地形と方角からこの林道が近道だと判断した。フィンランドのトップチームも迷っているらしい。CPにいたスタッフに聞いていたが、ちゃんと知らないふりをしていた。来た道を戻るチームもいた。私達がもう半分どうでもいい気分でブラブラ歩いていると、トップチームも結局林道を選んだらしく、走り抜いていった。それに刺激されて「走ろう」と言うが、堀内に「走ってください。」と冷たく言われてしまった。戦意喪失しつつ、長い下りの林道を歩くとCP4があった。このとき1:30頃だったが、CP5はまた尾根の上にあり、時間がかかりそうだ。
 ここからが一番つらかった。等高線と道のない地図はなんの役にも立たないので、方角と木についた赤ひもを頼りに尾根を登る。尾根にでても自分の居場所が特定できないが、今度はコンパスをずっと見てきたので大体は分かる。尾根を北に行けば、程なくCP5があるはずだった。
 しかし、行けども行けどもCP5は現れず途方にくれていると、後ろから先に行ったはずのトップチームが追いついて来た。かおっちが滑らかな英語で、「Did you find CP5?」と聞くと、CP5は中止されたと言っていた(と思う)。なぜかと聞くと、時間がかかりすぎるかららしい(たぶん)。どうやって知ったのかと聞くと、「ケータイ電話、いや、スタッフが途中にいたのでそのときに聞いた」。と言っていた。ケータイ?と不信に思いつつも(携帯電話はレースのルールで禁止されている)、聞き違いかも知れなかったのでそれ以上聞くのはやめた。しばらく行くと、CP5があった。
 「地図と位置が違いますよ」と文句を言うと、さっきのチームもそう言ってましたと言い、本部には抗議の意を伝えますと言ってくれた。途中から追い抜いていった別の外人チームが、「CP5を見つけるのに苦労しなかった?」と聞いてきたので、「しましたよー」と言うと、「地図上のCPとは2kmはずれてるからね」と言っていた。
 それにしてもこのステージは悲惨だった。もう4時だ。ゴールすると、鈴木さんが起きて待っていてくれたのには感激した。さっそくなっとうごはんと味噌汁を頂く。これが死ぬほどうまかった。バンガローに入り、5:00就寝。女性陣は睡眠よりもシャワーがよかったらしく、徹夜したらしい。

〈2日目〉
ステージK:カヌー
 距離:18km 6:30スタート
 出場は丸、堀内、まきお。朝、起きたら6:10頃だった。寝坊だぁー!急いでバンガローから飛び出し、ウエットを着る。すでにほとんどのチームが出発していて、閑散とした中を慌ててスタートした。メガネをかけるのも忘れていた程だ。
 スタート地点は郡上八幡の少し北だった。待望の長良川ラフティングなのだと思うと、だんだん目が覚めてきた。先行しているチームに程なく追いついてきたので、追い越そうとする。しかしこれがまずかった。瀬に入った時にちょっと前を行く艇が沈(転覆)すると、その艇が邪魔をするので落ち込みにのまれ、我々の艇もバランスを失って沈してしまう。これが原因で2回沈した。沈しているチームは他にもたくさんいた。みんなもがき苦しんでおり、地獄絵図さながらの光景だった。私自身も冷たい水に放り出され、流されながらボートの下敷きになったりして、寝起き&朝メシ抜きの身体には拷問だった。
 もう沈だけはカンベンしてくれと祈りつつパドリングする。しかし強烈なエディー(渦)がある「ぶつかりの瀬」でコース取りを誤り、あえなく沈。マッキーはいつのまにか対岸に流されていた。それ以降は沈せずに美並IC付近のゴールまで下るが、到着すると次の最終スタート時間まであと10分だと言われる。カヌーを引っ張り上げた頃にはあと5分だったので、次のスタートをあきらめた。それに、次のステージLは登りがきついらしい。でも今考えれば、ウエットのままとりあえず出発し、あとで着替えてもよかったかも知れない。

ステージL:オリエンテーリング 距離:12.5km
 弱気だったのでスキップ。

ステージM:MTB 距離:24.5km 11:00頃スタート
これは山の上から舗装路をかっ飛ばし、ちょっとした峠を越えるというものだった。
すべて舗装路で、地図も難しくないのでみんな飛ばしていた。特にドラマはなく、長良川SAの対岸付近に到着してゴール。
ステージM 山の上から舗装路を飛ばす ステージN カヌーで岐阜市街に入る

ステージN:カヌー 距離:16km 13:00スタート
 出場は丸、堀内、かおっち。このステージは岐阜市内に入るために無理やり設定したようなコースで、もはや小波すら立っていないような感じの川岸からスタートする。
 川幅の広い静かな水面を、ただひたすら漕ぐ。この単調な作業が眠気をさそい、半分寝ながら漕いでいた。2時間半もの間漕ぎつづけ、15:30ゴール。

ステージO:オリエンテーリング 距離:5.2km 15:45スタート
 出場は続けて同じメンバーで行く。周囲はもう市街地の風景だ。長良川沿いの小高い丘の上に岐阜城があるが、それがCPとなっていた。小高いといっても300m程あり、急登を登る。遅れがちな堀内に、「あと少しだ!!」と気合を入れる。愛のムチもつらい。
 下ってからは看板に従い、ゴールへと向かう。そして長良川メドウに入ると、そこにはゴールであるサロモンのエアゲートがあった。最後はお決まりの、手をつないでゴーール!


 長く、苦しかったが、終わってみると楽しかった。その夜は花火が上がっていた。聞くと、鵜飼の終わりを知らせるものらしい。これは「オレ達の長い夏が終わった」ってヤツなのか。
 数日後、レース結果が発表された。予想に反しての大健闘、17/50位だった。我々のチームは素人集団なだけに、6月から毎週末のようにトレーニングをしてきた。最後にそれが報われた気がして、涙が出そうになったほどだ。トライアスリートなどがひしめいているチームの中では、文句なしの結果だったと思う。それまでは今年限りでやめようと思っていたが、これに気を良くした勢いでまた来年も出場したいと思う。

記:丸山
スタート前のメンバー全員。左からまきお、堀内、かおっち、リーダー

 


山スキー同志会のホームページへ