Last Update : 2004/11/11  戻る

五月連休の立山
2004年5月1日-2日
メンバー:梅原、蔵田他1名


5月1日(快晴) 雷鳥沢-剣御前小屋-剣御前岳-剣沢上部

中央線全席指定夜行快速電車の、大糸線乗り入れが二本になったせいか(昨年は一本は松本止まり)、間際でも指定が取れた。それでも茅野あたりまでは満席だった。信濃大町の乗換えはスムーズだったが、扇沢からごったがえした。今回は室堂に至るまでの各乗換えに、危険が満ち溢れていた。カバーやサックが無い、テープすら巻いていないむき出しのピッケルをザックに着けている登山者が、慌ただしくバスに飛び乗ってくる際、ピッケルが顔のすぐ側に飛んできた。
初心者のみならず、装備から判断してベテランと思われる登山者もこの有様で、その数はいちいち注意していたらきりが無いほどだ。マナーの低下の著しさは、登山界も例外ではないのだ。
10時半前に雷鳥沢ヒュッテに到着し、この日は雷鳥沢を先ずは登ることにした。扇沢では積雪が多く、針ノ木雪渓からバス停まで滑降可能の様子だったが、ところが室堂では昨年に比べて積雪が非常に少ないことが一目でわかった。例えば大走りルートの下部にハイマツがしっかり露出していた。
行列が出来ている雷鳥沢を汗だくで登り、稜線から更に尾根どおしに剣御前岳まで足を延ばした。この間白地の雷鳥が突き出た岩の上に立って室堂あたりを見下ろす姿は、悠然たるものだった。
剣沢の上部を滑降。登り返しを考え、標高で二百メートル以内に留めた。雪はグズグズであった。
剣御前小屋までまた汗だくになって登り、雷鳥沢を滑降。このまま下ってもまだ3時。それでは飲みすぎてしまうので、一人途中から室堂乗越までトラバース気味に足を延ばした。大日・奥大日と、雲海上の毛勝が素晴らしかった。
温泉で汗を流し、斜光に輝く立山連峰を眺めながら、ヒュッテの前の雪上で飲む生ビールは実に美味しい。すると、なぜか蔵田さんが下から登ってきた。ロッジ立山連峰へと下ってしまったそうだ。とにかく、明日は頼もしい先輩と行動できることになった。

〔コースタイム〕
雷鳥沢ヒュッテ11:00→剣御前小屋12:30/12:35→剣御前岳13:00/13:20→剣御前岳13:55/14:30→室堂乗越15:15/15:30→雷鳥沢ヒュッテ16:00

5月2日(快晴) 雷鳥沢ヒュッテ-浄土山-雷鳥沢
ガイドブックで見かけたことが無い、浄土山の東面を滑降することにした。8時にヒュッテを出発。室堂山荘の側から浄土山への広大な斜面を登った。この方面に向かうのは、ゲレンデスキーだけ担いで、展望台と称されている、浄土山の裏側の台地上の所から往路を滑るというのが、主なる人達であった(その展望台からは薬師岳辺りの展望が素晴らしいだろう)。俣、標高二千六百mを越えたら直に、浄土山の北西面に滑り降りていくパーティーもあった。
我々は展望台へのルートから左に離れ、浄土山の南西面の急斜面に取り付いた。ここまでは雪は柔らかかったが、この斜面は硬かった。我々がまだその下部を登っていた際、ストックだけで登っていたスキーヤーが危険を感じてか引き返してきた。そして下降中に転倒し、下部に岩が露出していたので少しヒヤッとした。我々もアイゼン・ピッケルは備えていなかったので、左のハイマツの中のトレースにルートを替えた。反省点として、アイゼンは携行すべきであった。
浄土山は、この時期にしては訪れる人が少ない、静かに憩うことが出来る山頂だった。また、スキーの対象としてもあまり人気が無いようだ。どちらへ滑っても、そそられるような斜面は滑り出しの僅かな時間だけだからなのだろう。
昨日剣御前から眺めたところ、西によりすぎると岸壁になるが、北東面を一ノ越より僅かに西側に滑るのが楽しそうであった。
下部に視野が届かないのでゆっくり滑っていくと、雪面はかなり雪崩の名残で凹凸になっていたが、僅かに30メートル幅の滑らかな斜面の隙間があったので、底を突破した。下部に露岩があったので、転倒しないよう緊張したが、雪はそれほど悪くなかった。
この一滑りには満足できたが、この跡の雷鳥沢のテント村への滑降は惰性となってしまった。まだまだ陽は高いので、途中で室堂山荘まで登り雪壁を滑ってみたりしたが、重く湿った深雪であった。これはこれで嫌いではないが、何度も登り返すほど楽しいわけはない。
小屋の夕食時、庇に作った巣に岩ツバメが帰るところだった。驚くほどの数であった。そして、茜色に染まった立山のパノラマを眺めながらの夕食は最高だった。特に真砂岳の頂を眺めると、わが心も感傷に浸って、茜色に染まってしまう。
まだ二十代の頃、ある女性に思いを寄せていた。彼女の名”まさこ”は「真砂」と書いた。そこで、「今度立山に登るから、その山の頂上の石を拾ってきてあげよう」とかいって、5月の霙と風に叩かれながら登頂した。けれども、そんな努力は、結局は無に帰したのだった。今となっては、それはビールにBittersweetな味を添えるのであった。

〔コースタイム〕
雷鳥沢ヒュッテ8:00→浄土山南西斜面下部10:50/11:15→浄土山頂12:15/13:15→室堂山荘下部14:00/14:30→雷鳥沢ヒュッテ15:10

梅原記

 


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