Last Update : 2010/10/09  戻る

至仏山と燧岳

2005年5月4−5日

メンバー:梅原

5月4日 鳩待峠から至仏山−ムジナ沢−山ノ鼻−見晴 快晴

Y会計との取っ組み合いがゴールデンウィークに突入し、ようやく五月に終わった。翌四日早朝6:40発新幹線で、開放感に満たされて出発。上毛高原から戸倉乗換えし鳩待峠に10:45AM。料金3350円で2時間半のバス旅だったが、八重桜、林檎の花。戸倉辺りではソメイヨシノも賑やかに咲いていて、楽しい時間を過ごせた。

上天気に気が急いで、慌ただしくシール等セットして出発。眼下の真白な尾瀬ヶ原や日光白根などが白銀に輝くのを見るとテンションが上がってピッチが速まり、0:30PMに至仏山頂に到着した。

山頂は騒々しかった。ボーダたちは小ジャンプ台を作って繰り返し跳んでいた。滑降はほとんどの者が悪沢であった。連休も終盤なので尾瀬ヶ原へ向かうものはほんのわずかのようだが、私は山ノ鼻へ何処を滑るか検討しなくては。正面尾根は標高2000辺りで地肌が出ている。ムジナ沢も上部入り口はハイマツがかなり露出しているが、上端と下端は1m足らずの筋状の残雪があったので、下端からムジナ沢に入っていくと、広い斜面を快適に滑降できた。株は尾根へと回り込んで山ノ鼻キャンプ場へと滑り降りた。さて、今日の楽しい滑降はもうお仕舞いで、あとはだらだらのんびり尾瀬ヶ原を行くだけ。と思っていたら大間違いだった。

悪沢が流れ込む川上川は、山ノ鼻付近では水流になっていたが、それがさらに山ノ鼻と上田代を寸断する約8m幅の流れとなっていた。鳩待峠からダイレクトに山ノ鼻に入る橋はしっかりしていたが、上田代に向かう場合この橋を渡らず、水流沿いに右に進路を取るのがこの時期正解のようだ。私は山ノ鼻に入ってしまったので、水流を越えねばならないわけだが、まだ橋脚だけで橋桁もない。凸状の鉄板のでっぱりを、左右のスキー靴で挟み込んで進んでゆくのが実に恐ろしかった。

ヤレヤレ。ホッとして、前に燧で後ろに至仏という見事な山に挟まれた広大な雪原を、僅かに木道が露出した箇所もあるながら、シールでスイスイ歩いて行くと竜宮小屋。そこでまた橋脚だけの橋で水流を越えた。こちらの橋脚は傾斜があったがワイヤーが一本あったおかげで救われた。その晩、山小屋でこの件を宿泊客に話したら、「インターネットで事前に調べないのが落度」とバカにされた。また、この橋のデジカメ写真を他の女性パーティに見せたら、明日は東電小屋・ヨッピ橋(橋板も完備していたそうだ)経由で山ノ鼻へ向かうように、コースを変更すると言っていた。

さて、二番目の恐ろしい橋を越えると、宿泊する見晴は指呼の間に見えた。ところが疲労で歩みが鈍り、随分と時間をかけた後、茜色に色づき始めた燧のふもとに建つ弥四郎小屋に荷を解いた。連休の最後の晩故か混雑はなく、一人で一部屋を使えゆったりできた。夕食前に小屋のサンダルを借り、ベンチに座って柿の種で缶ビールを飲みながら、暮れゆく尾瀬ヶ原と至仏岳を眺める時間が実に良かった。

5月5日 見晴から燧岳、御池に滑降(桧枝岐に宿泊)曇りのち晴れ

7:15AM、見晴新道へと出発。樹林の急斜面は展望もなく、気が滅入りそうになった。標高2000mで雪が硬くなりシールは止め、スキーをロープでぶら下げキックステップに、アイゼンを使おうかとも考えたが、帰ってから汚れを落とすのが面倒なので止めた。(8割ぐらいはアイゼンを付けていた。)さらに痩せた稜線の標高2200m辺りでは、地肌が露出していてスキーを担ぐ。五十肩が痛み出した。

10:00AM燧・柴安ー登頂。まだ誰もいない静かな山頂を楽しもうと思ったが、俎ー都の鞍部の急峻な雪面に怖じ気づき、とても落ち着いてはいられなかった。アイゼンを付けてスキーをザックに固定すれば何ら問題ないのだが、俎ーでは何人かこちらを見ているに違いない。山スキー同志会員ともありながら、そんな醜態を見せることは許されないのだ。

「南無観世音菩薩」と"Aqui de Dios"など唱えて、何とかコケないで滑り降り、会の面目が丸立ちしたので安堵の吐息が漏れた。そして雪が消えハイマツが茂る斜面を、俎ーへとひと登りした。

こちらのピークは賑やかであった。御池から往復する人たちである。彼らのほとんどがここから引き返すらしく、柴安ーには向かわない。多分あの斜面が怖いのだろう。「ヤーイ、ヤーイ」

次第に雲が薄くなり、快晴となってきた。御池への滑りは、会津駒などの四囲の山々を眺めながら、大斜面あり林間ありと楽しかった。唯一不満は、終盤に夏道を辿ってしまったので、平地を御池ロッジまで数分歩いて到着したこと。フィナーレはロッジにダイレクトについて、カッコよく滑って降りたかった。

バスに乗り桧枝岐出下車した。村をのんびり散策し、宿泊して翌日帰ることにした。ソメイヨシノに八重桜。辛夷の驚くほどの白さが素晴らしかった。そしてミニ尾瀬公園では水芭蕉。何はともあれ、新緑の薄緑の斜面に、残雪の白さと山桜の淡いピンクが鮮やかな光景に一番惹きつけられた。

連休の最終日なので観光客も少なく、とても静かであった。夕方には民宿でもらった券で“アルザ尾瀬の里”を訪れ、誰もいないプールで螺旋状のウオーター・スライダーを何度か繰り返したが、初めのうちは楽しかったが、やがて虚しさを感じてしまった。

[タイム]
5月4日 鳩待峠11:00-0:30至仏山1:00-1:30山ノ鼻1:35-2:30竜宮小屋2:45-3:30見晴(弥四郎小屋)
5月5日 見晴7:15-10:00柴安ー10:10-10:20俎ー11:00-12:00御池

梅原 記


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