Last Update : 2006/9/16  戻る

薬師岳から前穂高岳-2006年夏の記録
2006年 8月31日(木)から9月4日(月) 夜行泊4泊5日

メンバー 菅澤秀秋(単独)

薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳(黒岳)、黒部源流、三俣蓮華岳、双六岳、槍ヶ岳、大喰岳、中岳、南岳、北穂高岳、涸沢岳、 奥穂高岳、前穂高岳

8/31日(木) 5:30富山6:00=6:47有峰口7:00=8:05折立8:30―12:30太郎平小屋13:00−14:00薬師岳山荘

晴れ時々ガス 風は冷涼で秋を感じさせる
夜行バスは三人掛けの車両の予約ができず四人掛けとなってしまったため少し窮屈でゆっくりとは眠れなかったが、夜行寝台列車に比べると運賃が半額程度なのでやむを得ない。富山で地方鉄道に、有峰口でバスに乗り換え、折立に降り立った登山客は30人ほどであろうか。太郎平までは初日なので早く歩いたりゆっくり歩いたり調子を見ながら行く。三角点からは北ノ俣岳方面がずっと良くみえるが薬師岳はガスがかかっている。剣岳が一度だけ立派に見えた。途中、左太ももが痛み出し前途に不安を感じる。太郎平から薬師小屋までつらい登りをがまんし小屋到着。時間が早く迷ったが、初日でもあり薬師岳もガスの中なので自重し行動打ち切りとする。ただちにビール。小屋の食事は協定料金の中では貧しい感じだったが、オーナーとおぼしき女性(下界ではピアノの教師らしい)の清楚な挨拶姿で我慢する。小屋の天井裏には多数のポリ袋が吊り下げられており、泊り客(20名ほど)たちが口々に私物入れか、靴入れじゃないかなど言い合ううち、屋根の雨漏り防止と判明。でもその様子は壮観であった。小屋は天水のみで水不足。

9/1日(金) 薬師岳山荘4:15―5:00薬師岳5:30―6:00薬師岳山荘6:35―7:30太郎平小屋−9:35北ノ俣岳―11:35黒部五郎岳―13:30黒部五郎小屋13:45―14:55黒部乗越−15:55三俣山荘

曇りガス一時雨 時々遠望
ヘッドランプを点け薬師岳山頂へ登る。すごい朝焼け。雲は低いが剣、後立山、目の前に赤牛岳がどかんと座っている。槍、穂高も遠望できたが、あんなところまで歩くのかと思うほど遠く見える。小屋に戻り朝食後出発。ハイマツの中、北ノ俣岳を越えるのが意外と長く感じる。池塘が美しく高山植物もまだまだ咲いている。木道が多いのは植生保護のためやむを得ない。二人連れの背の高い外国人としばらく前後したが歩くスピードがとても速い。膝が悪いとかで急な下りは後ろ向きに下りていたがそれでも速い。黒部五郎岳の山頂はガスの中、ほかに誰もいなかった。稜線通しにそのまま下ったがこれが以外のアルバイトとなり、カールに下ればよかったと大後悔。黒部五郎小屋でさきほどの二人連れが休んでいるところに追いつく。予定ではここに泊まるつもりだったが時間が早すぎる。三角屋根の小屋は新しくとてもきれいで後ろ髪をひかれるが、ビール一杯飲んで三俣小屋まで足を伸ばすことにした。小屋からはすぐ樹林帯の急登で飲んだビールがすぐ出てしまった。途中、黒部乗越あたりで薬師岳から黒部五郎岳の稜線が目の前に広がったが、一日でずいぶん歩いたもんだと我ながら感心する。小屋まであと200mぐらいの登山道の真中に大量の熊の糞があり存在を身近に感じる。その後何回か目撃した(糞だけ)。小屋の食事は満足できるレベル。渇水で水不足。小屋についてまずはビール。

9/2日(土)  三俣山荘5:45―6:50鷲羽岳―7:40ワリモ北分岐―8:15水晶小屋―8:45水晶岳―9:20水晶小屋9:45―10:15ワリモ北分岐―11:00黒部源流―11:40三俣山荘12:05―13:00三俣蓮華岳―14:25双六岳―15:15双六小屋

快晴
昨夜は隣の女性(なんと若い美人)のいびきがなかなかのもので、寝付かれず朝寝坊。鷲羽岳を快調に越え水晶小屋にザックをデポし水晶岳往復。山頂は1人だけで景色を独り占め。水晶岳というぐらいだから水晶が一杯取れるのかと探しながら歩いていると本当に水晶の結晶を発見。ポケットに入れ記念に持ち帰る。天気が良いのに登山道の真中に雷鳥がいて近づいても逃げない。水晶小屋に戻りビールで水分補給。小屋の若い女性アルバイトたちはとても感じが良かった。ワリモ北分岐から黒部源流までの下りは長く感じられたが誰もいない別天地の感。三俣山荘に登り返し昼食。三俣蓮華、双六を越え双六小屋につくと、水晶小屋とは違い売り手市場のせいか小屋の対応はぞんざいだった。でもビール。今日は一日中好天で北アルプスの全貌はもちろん、遠くは富士山、浅間山、白山などを眺めながら楽しんで歩くことができた。小屋は水洗トイレで水が豊富。食事も三俣山荘より良かった。台風発生の報。

9/3日(日)双六小屋5:35―8:15千丈沢乗越−9:20槍肩―9:40槍ヶ岳―10:00槍肩―10:35大喰岳―11:00中岳―12:00南岳―12:05南岳小屋12:40―15:00北穂高岳―15:10北穂高小屋

晴れ後ガス、夕刻快晴
双六小屋から西鎌尾根に向かう登山者はわずかで、ほとんどは鏡平方面に行く。西鎌尾根から見る槍ヶ岳は立派で近づくにつれ圧倒的な迫力を感じる。手前の赤茶けた硫黄尾根は異様な感じ。槍ノ肩への急な登りを過ぎ、槍の穂先へ登る。高校生らしい男女の団体がジャージー姿で下るところにすれ違ったが、登り下りとも事故者が出ないのが不思議なところだ。順番待ちもなく登れた山頂には4名ほどで、最盛期と比べると閑散という感じ。山頂からは本当に360度の展望が満喫できる。肩に戻り槍岳山荘でラーメンでもと思っていたら10:30からだというので仕方なく南岳へ向かう。南岳小屋でビールとラーメン。ここからキレット越えだが、ガスがかかって陰惨な感じの中進む。飛騨泣きのあたりで先のほうからガラガラと岩の崩れる音がするので見上げるとヘルメット姿の四人パーティが岩を落としながら下ってきた。ザイルを結びながら下ってくるが、ラストのリーダー(プロガイドらしい人)が注意を与えている。だけど前の三人の誰かがスリップしたら止められるとは思えず他人事ながら心配。滝谷が目の前に拡がるが今日は誰も登っていないようだ。30年前にはここで岩登りのトレーニングに励んだことが懐かしく思い出された。行動時間が9時間を超えているせいか北穂への最後の登りがつらかった。北穂小屋前のテラスのにぎやかな酔声にいやけがさし、水を飲んで穂高山荘まで足を伸ばそうと小屋裏手の北穂山頂への石段を登り始めたが足の限界であった。北穂小屋泊まりとし、ただちに生ビール。水を飲むんじゃなかった。17:00ごろからガスが上がり、すばらしい展望が拡がり泊り客全員が歓声を上げっぱなしで山座同定している。富士山をのぞけば日本で一番高所の小屋だと思うが、こんな夕景が楽しめて泊まり正解であった。小屋の夕食は今回山行中で一番すばらしく、クラシックが流れるなかでの食事はポークジンジャー(大きく厚い豚肉がなんと二枚)、新鮮な野菜サラダほか二品で大満足。小屋の各部屋には滝谷の岩のぼりルート名が冠せられていて、割り当ては「グレポン」だった。

9/4日(月)  北穂高小屋6:00―7:35涸沢岳―7:50穂高岳山荘―8:30奥穂高岳―9:35紀美子平−10:05前穂高岳―10:40紀美子平−12:10岳沢12:25―14:05上高地14:40=15:50新島々16:08=16:37松本16:59=19:35新宿

快晴
北穂山頂からの日の出も大展望で皆さん感激。山頂まで1分もかからない北穂小屋のロケーションは売り。今回歩いてきた薬師岳から今日越す奥穂、前穂まで見える。ここからは一昨年の逆コースを歩いたが印象はずいぶん違う。天候も時間帯も違うのだがそれよりも年のせいか、北穂から涸沢岳の間が悪く感じられた。途中追い抜いた単独の人がなかなか姿をあらわさず気にかかっていたが、そのうちくるだろうと先を急ぐ。A沢のコルから涸沢に下ったのかもしれない。奥穂からは一昨年登ったジャンダルムから西穂への岩稜が続いていて、そちらへ進むか迷ったが予定どおり前穂へ向かう。奥穂から前穂への吊尾根もキレットと同様急峻で、登山地図などで一般コースとして紹介しているのは事故の誘因ではないかと思う。紀美子平にザックをデポして前穂の登りにかかると3日前の二人連れの外人と出会い「やあ、やあ」とすれ違う。このころ上空を県警ヘリが旋回し始め、先ほどの単独の人のことがまた心配になってくる。重太郎新道の急坂をゆっくり下り岳沢についたがヒュッテは雪崩で崩壊したまま。売店だけやっていた。すこしぬるいビールで水分補給。気温がどんどん上昇する中、上高地への下りでは気がゆるんでしまったせいか二度も木の枝に頭をぶつける。途中の風穴の天然クーラーで体を冷やし生き返るが、明神からの道に出たとたん大勢の観光客にげっそりとしてしまった。

後記:今回はたまたま一週間の休暇が取れたので、久しぶりにロングをしてみたくなり出かけてみた。テン泊も考えたが一人だし自信もなかったので小屋泊まりとし、そのかわりできるだけ休まず歩き続けるようにした。結果的には体の故障もなく7日の予定を5日で歩きぬいたので満足感がとてもあった。それと登ったことのなかった鷲羽岳、水晶岳に登れたことも。なにより天候に恵まれ展望を十二分に楽しみながらの山行でラッキーだった。途中、97座目という65歳の男性、99座目という68歳の男性、100座完登している40歳ぐらいの女性など100名山病(?)の人たちとの会話から、「今、山を歩いている楽しさ」を感じながら歩くすばらしさを教わりました。

菅澤 秀秋 記


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