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ノルウェーの山スキー(その1)

2002.4.30-5.4&2004.3.23-3.27

メンバー:岩夫妻

私は、ノルウェーの多くの山で山スキーを楽しんできました。最近はどうも山に行き自分のノートに記録は残すがそれをまとまった文にするのは後回しになりがちで、このノルウェーの山スキー記録もたまる一方でした。来月、初めての子供が生まれるのを良い機会に、大変恐縮ではありますが、私の、このノルウェー山スキーめぐりをご紹介いたしたいと思います。おそらく、何号かにわたると思いますが、お付き合い頂ければ幸いです。

まず、なぜノルウェーか?私がはじめてノルウェーに行ったのは、学生時代、1980年の夏でした。夏休みに1か月あまり、ヨーロッパ各地をめぐりました。もちろん、スイスアルプスにも。しかし、そのとき、私に強い印象を与えたのはスイスではなくてノルウェーでした。青く深いフィヨルド、濃く深い緑の森、さらに純白の氷河、そして濃青の空。その大きさはとても写真に収まるようなものではなく、ただただ圧倒される景観でした。そして、素朴な人たち、ちょっとシャイだが、打ち解けると、とても親切なひとたち。また、じゃがいもと鮭が食べ放題。私は、ふるさと北海道とどこか似ていると感じ、親近感を覚えました。当時、私は大学の山岳系クラブで山スキーをはじめたところで、いつか、この山で山スキーをしようと誓いました。それが、以後、実現し、1991年にスカンジナビア半島最高峰Galdhopiggen山(2469m)の山スキー登頂(ら・ねーじゅ191号、1991年10月号報告)以来、7回にわたりにノルウェーで山スキーを行いました。この7回も含め、ノルウェーにはすべてプライベートばかりで全12回訪れ、まあ、ノルウェーバカ状態であります。

ノルウェーはスキー発祥の地、オリンピックでも多くのスキー競技で活躍しているように、どんな山でも、必ずシュプールがあるほど山スキーは盛んです。また、ノルウェーの山は前述した最高峰が2469mであるように、山スキーの対象たる山は概ね1000m弱から2000m強までです。しかし、森林限界は低く、とくに、ノルウェー北部では200mも登れば大雪原となるだけでなく、ほぼ標高ゼロまで滑れるため、標高のわりに、ダイナミックな山スキーが楽しめます。また、ノルウェーはヨーロッパ最大の氷河がある国ですが、ノルウェーの多くの氷河は動きが鈍く、5月連休のころまでならば、氷河上を滑るのはとても快適です。

アプローチはレンタカーを使いました。人口が少ない(約500万人で千葉県とほぼ一緒、面積は日本とほぼ一緒)ため公共交通機関は少なく、登山口までは、レンタカーを使わざるを得ません。田舎はタクシーも少ないです。残念ながら、地形が険しいため、道路事情は日本より厳しく、幹線道路でも山岳地帯では片側1車線さえキープできない狭い道も多いです。また、山スキーシーズンは、アイスバーンとなることが多く、運転には最新の注意が必要です。また、フェリーを多用するため、クルマだからといって、フェリーの時間だけは予めホームページ等でよく確認する方が良いです。休祭日は極端にフェリーの本数が減り無事下山したは良いが行きたい所に行けないことも。

宿は地域の中心都市のホテルをベースにするか田舎のキャンプ場コテージを利用するかのいずれか。ホテルは高価なため、コテージで自炊するほうが安くつくことが多いです。コテージは冬でも使えるところが多いです。また、スーパーマーケットはどんな田舎にもあります。

山小屋は地域により異なりますが概して日本よりきれいで設備も整っています。また、一部の避難小屋以外はコンロ、鍋の類は不要です。山スキーシーズンと積雪量は地域差があるため各論で述べます。山スキールートガイドはここ数年、次々といい本が発売されはじめ、私も、それらを買い集めて10冊ほどになりました。

私はガイドレスで山スキーを楽しんでいます。5万分1地図による読図、現地山スキールートガイド、クルマを使ったロケハン、そして現地登行中の判断、これらを総合的に組合せてルートを選択してます。またツーリストインフォメーションで現地山岳関係者のご紹介を受け、その方のアドバイスも参考にします。私は、レンタカーを使っていること、また、安全上の観点から基本的には往復ルート(登行ルートを滑降する)で行っています。

図1


さて、いままで、私の行った山々は大きく分けて、図1に示す、北から、Tromso地域、Narvik地域、Lofoten地域、そしてJotunhaimen地域です。はじめの三つは図1にも示されるように北極圏内にあり、いずれも9月から3月はオーロラ観測に絶好の地域です。3月は昼は山スキー、夜はオーロラと、寝るひまが無くなります。最後のJotunheimen地域はスカンジナビア半島の屋根と言われ、前述したスカンジナビア半島最高峰Galdhopiggen山(2469m)をはじめ、多くの2000m峰やたくさんの氷河があります。では、これから、北から順番にご紹介していきましょう。

 (A)Tromso地域の山スキー

Tromso(図2のa)は、北極圏内にある、ノルウェー北部の中心都市で、人口6万人、世界最北の大学、世界最北のビール工場のある町です。また、アムンゼンが極地探検の拠点にした町としても有名で、また、オーロラツアーで多くの日本人観光客が訪れる町でもあります。また、この町は、いま、冬季オリンピックの立候補をめざして準備中です。 

図2


この町を拠点として、フィヨルドを織り成す周囲の山々で山スキーを楽しむことができます。山の高さはLyngen半島(図2のb)以外は1000〜1300m程度です。でも、5月上旬でもほぼ標高ゼロまで滑ることが可能なため、標高のわりには十分に山スキーを楽しむことができます。また、Lyngen半島は1800mクラスの山が連なり、氷河も発達しています。最高峰はJiekkevarre 1883m(図2のc)、この山は「北のモンブラン」とも呼ばれてます。

1月、2月は太陽がほとんど上がらないため、山スキーは3月から5月が良いです。一方、オーロラ観察は9月から3月が好ましい。従って、前述したように、3月は山スキーもオーロラも楽しめる月ということになります。積雪量はそれほど多くはないです(概ね0.5〜2m程度)。Tromsoより北ないしはLyngenより東は雪が少なくなります。このため、日本と違い、小川でも雪に埋まらない場合があります。氷河は前述したようにLyngen半島で発達しています。Lyngen半島の氷河はほかのノルウェーの氷河よりは動きが早く、クレパスには注意が必要です。

さて、図2の1から10は、以下のこれから紹介する山々です。日付は、私が登った日です。地図は全て上が北です。記録欄の=はレンタカー、++はフェリー、>>はシール登行、〜〜は滑降、・・・は歩行(スキーを担ぐ等)を示します。

1 Vannkista・・・・・・・・・・・・・・947m/2004.3.23

2 Kvannfjellet・・・・・・・・・・・1011m/2004.3.25

3 Stormheimfjellet・・・・・・1222m/2002.4.30

4 Stor−Kjolen・・・・・・・・・・・・790m/2004.3.27

5 Skitntinden・・・・・・・・・・・・1042m/2004.3.27

6 Litje−Blamannen・・・・・・・841m/2004.3.26

7 Rotenvikbreen氷河・・・・・1000m/2002.5.1

8 Gjerdelwatnet湖・・・・・・・・・810m/2002.5.4

9 Ullstinden・・・・・・・・・・・・・1078m/2002.4.28

10 Trolltinden・・・・・・・・・・・・・850m/2002.5.2

(1)Vannkista(Vanna島) 947m <図2、図3><写真1、2>

Tromso地域最北の島がVanna島(図2のd)です。北緯70度を越えている。当初、この島の最高峰、Vanntinden 1031m(図3、写真1のe)に登ろうと思ったが、私が行った年は、3月にもかかわらず、島の西部海岸Vannakammen付近(図2、3のf)は標高300m付近まで雪がほとんどなかった。一方、南部海岸はほぼ標高ゼロまで雪が付いていた。そこで、同島第二の山、Vannkista 947m(図2、図3、写真1の1)に登った。この写真1は図2のgから写したものである。写真1の左のピークがVanntinden 1031m(写真1のe)で、右のピークがVannkista 947m(写真1の1)である。

Vanna島のフェリー港、Skaninngsbukt(図2、図3のh)から300m、小川の橋を越えたあたりから、シール登行を始める。雪を拾いながら慎重に進む。標高200mを越えると、もう、森林限界を越えるとともに、大地は雪で完全に覆われて、純白の大斜面となる。読図しつつ山頂をめざす。帰路ガスられた場合に備え、ときどき、後方の景色を確認する。このときは、まだGPSを持っていなかった。ノルウェーの山はどこも純白の大雪原があるため、万が一、帰路に霧に囲まれるとかなり大変である。大概は行きのトレースを頼りに下るが、この年のTromso地域はどこもアイスバーンで雪面がガチガチのため、行きのトレースが当てにできなかった。数十年ぶりの寡雪の年で1か月近くたいした雪が降っていない。ノルウェーの山では、上部に行くほど純白度が増し、ダウンヒルに大きな期待が持てるが、この年のこの地域はそうではなかった。

<写真1>(左)、<写真2>(右)


ルートは、概ね山頂に向けて最短距離をとりつつ、帰路を考慮して、アップダウンの無い単調登行となるように選択した。雪崩の可能性はほとんど無いが、前述したように、アイスバーンが続くため、ルート取りも慎重にならざるを得ない。写真2は標高700m付近(図2のi)である。バックは当初狙っていたVanntindenである。写真からも判るようにとても700m程度の景色とは思えないような絶景である。写真には写し込んでいないが左方には海が見える。結局、最後、標高820mから上部100mが斜度30度のアイスバーンとなり、また、天候も悪化し、風も強くなってきたため、頂上は諦め、将来に持ち越すことにした。

下りはアイスバーンではあるが、適度な斜度の斜面を快適にダウンヒル、ほぼ標高ゼロまで標高差800mのダウンヒル。かつ、海に飛び込むような素晴らしい景色。なかなかの山スキーではあった。願わくば、アイスバーンで無いこと、山頂が踏めること、この二つが適えられればなお良かった。下山したあと、クルマでVanna島最北端、北緯70度15分のTorsvagfyr(図2のj)(今もって私の足が地に着いた地球最北点)に行く。ここから望む海はもう大西洋ではなく北極海か。私の持つノルウェーの地図ではNORSKEHAVET(ノルウェー海)とNORDISHAVET(北極海)の境目くらいである。でも、雪は無い。このVanna島は北に行くほど雪が無くなる。港にはたくさんのタラが干してあった。

記録:2004年3月23日、晴のち曇
Tromso520=620Hansnes(図2のk)635++740Skaningbukt=Vannakammen810(雪なし)=840Skaningbukt(小川の橋)900>>1045標高410m点1100>>1220標高820m点(山頂断念)1240〜〜1400 Skaningbukt=Torsvagfyr1500=Skaningbukt1600++Hansnes1645=1800Tromso

図3


(2)Kvannfjellet 1011m<図2、4><写真3>

この山は前夜、Tromsoの山岳会のNさんに紹介してもらったところ。Nさんには、メールでこの地域の山スキー情報をいろいろ頂くとともに、前夜は、お会いして一緒に夕食を楽しんだ。このとき、やはり、この年の寡雪についても話題になり、N氏から、南に行く方が雪が多くなると、アドバイスを受け、この山を教えてもらった。

Tromsoから南に30分ほど走り、Larseng(図2のm)からVikran(図2のn)までフェリーに乗り、対岸に渡る。たしかにTromsoより雪が多くなり、アイスバーンから圧雪路が増えてきた。とはいえ、くねくねかつ狭い田舎道が続くため慎重に、Balsfjorden(図2のo)沿いを1時間ほど走り、登山口のFjellskardet(図4のp)へ着く。周囲はたっぷり雪がある、2m程度の積雪か。たしかに、南に行くほど雪が増えるようだ。丁度、大西洋から吹き付けた風がLyngen半島の1800m級の山々にぶつかり降雪をもたらすエリアになるようだ。写真3はこの登山口からのKvannfjellet山です。

牧場入り口の除雪の邪魔にならないところにクルマを止めて出発する。はじめは牧場脇の疎林の中を行くが、30分ほどで樹林限界を超えて、めざす純白の山をのぞむ。もうどこでも滑れそうだが、ともかく、先行トレースのある方向に進む。登山口を出て1時間強、かなりの大人数のグループに会う。昨日から幕営していた学校野外活動グループとのこと。さすが、ノルウェー、学校の野外活動で、幕営の山スキーをするとは。この幕営点(図4のq)から本格的な登りになる。純白の大斜面にいくつかのトレースがあり、適度にそれを使いながら登る。登るに従い、眺望は開け、湖の点在するフィヨルド景観が俯瞰されるようになる。この山はテーブルマウンテン的で西面はかなり切り立っていて、大きな雪庇になっている。西側の景色も拝みたいがそれは我慢して、頂部の台地を最高点に向かって歩む。登山口からおよそ3時間、快晴の中、Kvannfjelletの山頂(図2、4の2)に到達。素晴らしい景色を一望にする。 下りは快適と思ったが、部分的にウインドクラスト、かつ途中からもなか雪化。なかなか楽しませてはもらえない。変な自意識は捨てて無理に回すより大斜面を斜滑降と大山回りターンのほうがラクな場合もある。妻はすでに適当ボーゲンでどんどん下っている。野外活動グループの幕営跡地を右に見つつ途中からほぼ直滑降で下る。

図4


帰りは、行きと反対側、Nordfjorden(図2のr)沿いを走る。Larsengのそばの岩絵を見てからTromsoに帰る。今夜もオーロラを楽しんだ。

記録:2004年3月25日、快晴
Tromso715=745Larseng815++830Vikran=930Fjellskardet(170m)945>>1240Kvannfjellet山頂(1011m)1310〜〜1420Fjellskardet1440=Vikran1545++1615Larseng=1700Tromso

<写真3>(左)、<写真4>(右)


(3)Stormheimfjellet 1222m <図2,5><写真4>

この山は、前日、悪天だったので、登山は休んでクルマで山スキーが出来そうな山をロケハンしたときに見つけた山です。

この日は快晴無風。早起きして、このStormheimfjellet(図2の3)に向かう。前日チェックしたとおり、Hov(図2のs)からUllsfjord(図2のt)に抜ける道の途中のStormheimen(155m)(図5のu)にクルマを止めてシュプールの跡を頼りに登りだす(写真4)。適度な登りが続き快適である。途中でイタリア人の12人パーティーに追いつかれる。彼らはLofotenに行ったが雨続きで雪がなく転戦してきたそうだ。陽気に彼らと話しをしながら登る。昨日、ロケハン時に、悪天の中、Stor-Galten山(1224m)(図2のv)に登っていたのが彼らだった。

山頂からの眺めは眼下に濃いブルーのフィヨルドを眺め、前方にはLyngen Alpsの鋭い峰々、素晴らしい眺めである。この快晴無風の山頂に1時間もいた。この山の頂は二峰に分かれていて、北峰が1181m(図5の3)、南峰が1222m(図5のw)、この間は鋭い岩稜帯のため、この北峰でやめて来た道を滑ることにする。イタリア人のうちの5人は山頂から東面の急斜面にダイブして行った。残りの7人は私と一緒に来た道を滑る。5月はこの地域も日本と同じように大概ザラメとなり楽しい滑りができるはずだが、昨日の雨と今朝の冷え込みで少し雪面が固い。それでも、快晴無風、快適好調にガンガン滑る。あいかわらず滑りはあっという間だった。

記録:2002年4月30日、快晴
Skoglund(図2のx)715=Svensby(図2のy)745++Breivikadet(図2のz)810=Stormheimen(155m)820>>1215Stormheimfjellet北峰山頂(1181m)1315〜〜1415 Stormheimen=Breivikadet1505++Svensby1530=1600Skoglund

図5


<写真5>(左)、<写真6>(右)


(4)Stor−Kjolen 790m <図2、6><写真5〜7>

Tromso(図2のa)は海峡の真ん中の中洲みたいな島が中心である。その島の西側(図6のac)に空港があり、ダウンタウンと港は島の東側(図6のad)にある。この町から望む顕著な頂はTromsdalstinden(図2のaa、写真5)である。この山はTromso島の東の対岸にある標高1238mの山である。私はまだ行ってないがいつか山スキーしたい山の一つである。一方、島の反対側、Tromsoの空港の対岸、Tromso島の西の対岸にある山がこれから紹介するStor-Kjolenである。

図6


Tromsdalstindが男性的容貌であるのに対して、Stor-Kjolen(図2、6の4)は女性的である。写真5の中央部がTromsoのまち、同右上のもっとも高い山がTromsdalstindenです。

昨日、一ヶ月ぶりにTromsoに雪が降った。今日はかなり寒いが快晴。休養日にしようと思ったがこんな最高の日に山を休むわけには行かない(昼は山スキー、夜はオーロラで、少々へばり気味)。 クルマでダウンタウンから30分、登山口(図6のab)に着く。この登山口まではクルマで行ったが、都市郊外の住宅街のためノルウェーには珍しくバスの便も良い。30分程度に一本出ている。登山口と言っても、分譲住宅街のタウンハウスの脇を横切るように登り始める。すぐに純白の大斜面になる。背後にはBalsfjorden(図2のo)の青い海。絶景である。家の庭先から純白の大斜面というのは羨ましい。

この山の標高は790mだが標高ゼロから登るため標高のわりに登り甲斐がある(もちろん滑り甲斐も)。そして、この山はTromsoの高尾山的存在のため、天気がいいと、老若男女、多くの市民が山スキーをしにくる。ノルディックが多いがテレマークやアルペンもいる。2004年当時はボーダーは見なかった。途中、比較的長い水平移動があるのでボーダーはつらいかもしれない。ゆるゆると登る。いい加減飽きるころ、前方右手に電波塔が見えてくる、そこが山頂(図2、6の4)である。

今日の山頂は快晴だが風が強く寒い。北側はフィヨルドの向こうに大西洋を望み(写真6)、また、南側はフィヨルドの青い海と、織り成すように屹立した白い峰々のコントラストが素晴らしい。ここも絶景である。山頂にはいろいろな方向から人が登ってくる。前述したようにこの山は女性的山容のためいろいろなルートから登れるようだ。

下りは久しぶりの乾燥新雪粉雪。もう最高である。青い海に飛び込むようなダウンヒルを楽しむ。しかも軽い新雪。時々、空港を離発着する飛行機を見ながら滑る。町のすぐそばでこんないい山スキーができるなんて羨ましい限りである。写真7は標高400m付近から登山口に向かってフィヨルドに飛び込むように滑りおりる斜面である。

記録:2004年3月27日、快晴
Tromso900=930Kvaloysletta(登山口35m)1000>>Litje-Kjolen(659m)>> 1310Stor-Kjolen山頂(790m)1345〜〜1400鞍部(620m)1415>>1440Litje-Kjolen1455〜〜1520Kvaloysletta1540=1600Tromso

<写真7>(左)、<写真8>(右)


(5)Skitntinden 1042m <図2、7><写真8〜10>

この山行は今でも悔しい山行のひとつである。Tromsoの西隣、Kvaloya島の顕著なピークがこのSkitntinden(図2、7の5)である。おそらく山頂からは大西洋も含めてとんでもない絶景がみられると思う。ただし、手強いのは、山頂まで急斜面が続くこと。このときは東斜面を狙ったがこの斜面は山頂直下から標高差300m斜度30度の斜面となっていて、しかも、このときはこれがガチガチのアイスバーン(図7のap)。写真8の中央は標高820m付近で粘る妻だが、結局、断念した。次回、ぜひ、今度は西尾根から狙いたい。しかし、820mといえどもその景観は素晴らしい(写真9)。快晴の中、ゆっくり一時間景色を眺めていた。ちなみに、写真9の斜面上部にシュプールの跡がある。

図7


このようにノルウェーでは到る所にシュプールがあり、ときどき驚かされる。下りはクラスト気味の斜面を慎重に滑った(写真10)。

記録:2004年3月24日、快晴
Tromso740=820Kartfjordeidet(160m、図7のaq)845〜〜Kartfjordvatnet湖(151m、図7のar)>>300m点930+++400m点1000〜〜Trollskardvatnet湖(508m、図9のas)1100〜〜1205Skitntinden東斜面820m点(Skitntindenn山頂断念)1310〜〜 Trollskardvatnet湖(写真10)1330〜〜1400Kartfjordvatnet湖1410・・・・1430Kartfjordeidet1500=1830Tromso

<写真9>(左)、<写真10>(右)


(6)Litje-Blamannen 841m <図2>

記録:2004年3月26日、曇時々雪
Tromso810=835Hakoybotn(10m)900>>Rundfjellet(472m)>>1200Litje-Blamannen山頂 (841m、図2の6)1210〜〜 1300Hakoybotn1315=13400Tromso

(7)Rotenvikbreen氷河 1000m <図2、8>

Lyngen半島(図2のb)の氷河は雪線が低く、この氷河も700m付近まで降りてきている。登山口はLyngen半島の中心地のLyngseidet(図2、8のae)から北に行きRottenvik(図8のaf)から、未舗装の林道に入る。この林道の終点が発電所(図8のag)でここの駐車場にクルマを止める。駐車場といっても、裸地に数台止められるくらい。

発電所からの登りは山道をスキーのつけはずし三回のあと、結局、シートラーゲンして20分ほど登り台地にあがる。3月だとたぶん発電所からスキーがつけられたかもしれない。もっとも3月だと発電所までの林道もクルマでなくスキーかも。

台地からの眺めは素晴らしい。正面右にFastdalstinden(1275m)(図8のai)、正面左がRotenvikbreen氷河(図2、8の7)、奥にIstinden(1495m)(図8のaj)、左にStor-Kjostinden(1488m)(図8のak)、登攀欲ならぬ山スキー欲をそそる山が並ぶ。ただ、IstindenとStor-Kjostindenの頂は切り立っていて文字通り攀じ登る必要がありそう。山スキーするならFastdalstindenだが、標高差がありかなりストレッチである。ほぼ相前後して登ってきた、Tromsoの大学生カップルに、Fastdalstindenに登るのか、と聞かれ、思わず、May beと言ってしまったが、彼らが、Rotenvikbreen氷河の真ん中を行くのを見て、私も、氷河を行くことにする。結局、Fastdalstindenは次の課題にしてしまった。彼らを追いながら、氷河を行く。氷河湖のRotenvikvatnet(図7のah)はまだ雪の下だが用心してへりを回る。標高750m程度で広い氷河の真ん中を歩むというのはなんか変な感覚である。まるで、標高3000か4000mの高峰にいるような景色だが750mしかない。ノルウェー人ペアはRotenvikbreen氷河から、さらに、Istindenに向かって氷河のクレパスの間をスキーでどんどん登って行っている。私はやはりクレパスが気になってしまい、Rotenvikbree氷河のどんづまりで諦める。標高はちょうど1000mである。氷河からはLyngenフィヨルドの向こうに遠くフィンランドの山なみを望む。下りは氷河末端までは素晴らしい斜面だったが、台地から下は難行苦行だった。

駐車場であったノルウェー人に5月のLyngen半島の山は雪崩が多いから注意したほうがいいと教えられる。

記録:2002年5月1日、晴のち曇
Skoglund830=910発電所(125m)925・・・台地(400m)1100>>1400Rotenvikbree氷河(1000m)1440〜〜台地1540・・・1640発電所1700=1730Lyngseidet1810=1840Skoglund
図8


(8)Gjerdelwatnet湖 810m <図2、8>

記録:2002年5月4日、曇時々雨(上部は曇時々雪)
Skoglund715=755 Lyngseidet=登山口(Eidebakken、60m、図8のay)805・・・945Marieslett(125m、図8のaz)955>>1040Skhytta(320m、図8のbb)1100>>1310Gjerdelwatnet湖(810m、図2、8の8)1315〜〜1415 Skhytta1455〜〜 Marieslett1530・・・1600登山口1615=1625Lyngseidet1730=1800Skoglund

(9)Ullustinden 1078m <図2、9><写真11>

この山は岳人2002年3月号(657号)に紹介のあった山です。Tromsoからクルマで1時間ほどで登山口(図9のam)につく。ホピョラーな山らしく、登山口には50台以上停まれるくらいの大きな駐車場がある。この日も20台以上駐車していた。3月の栂池天狗原のようにノルウェーでは珍しく人が連なって登ってる。

登山口から標高300mの樹林限界まで切り開きがある。樹林限界を越えると眼下にフィヨルドの青い海、そして右手にLyngen半島の鋭い峰々を望め(写真11)、気持ち良い登りとなる。その後、Ullustinden(図2、9の9)の前衛のSvarthamart(図9のan)の北面、標高700m付近をトラバースして行く。ここをあまり手前からトラバースしHestedalen(図9のao)の沢に近づくのはあまり気持ち良くない。この日、行きは標高620m付近でトラバースしたら雪崩そうになった。

トラバースのあとこのSvarthamartとUllustindenの間の鞍部で小休止してから、Ullustinden南西面大斜面の登りにかかる。標高差約360m、斜度20度、幅約1.5kmの無立木の大斜面である。私は右から登った。この大斜面を沢山の人が取り付いている。この大斜面を1時間程度で登り切り山頂に着く。私が山頂に着くころ、10人程度のパーティー、2組、滑り始めた。でも、まだ山頂には20人ほどの人がいた。下りはやや重い雪質だが楽しく滑れた。

記録:2002年4月28日、快晴
Tromso1010=1100登山口(Snarhyeidet、110m)1130>>鞍部(720m)1400>>1510Ullustinden山頂(1078m)1535〜〜1555鞍部1610〜〜1630登山口1650=1750Tromso

図9


(10)Trolltinden(Arnoya島) 850m <図2、10>

Lyngen半島の沖に、純白の顕著なピークを持つ島が二つある。その一つが(1)のVanna島だが、もうひとつがこのArnoya島(図2のat)である。そのArnoya島の、山頂に巨大な電波塔のあるTrolltinden(図2、10の10)に登る。

この日は、折角早起きしたのにジャケットをキャビンに忘れて取りに戻り危うくフェリーに乗り遅れるところだった。天気は下り気味でTrolltindenのたもとAkkarvik(図10のau)に着くころには空は真っ黒だった。登りだしてまもなくポツポツと雨が降り出す。ここは山頂の電波塔まで真冬でも雪上車が行けるように10m間隔程度でポールが立っているので、たとえガスられても大丈夫。積雪は5月でも2mかそれ以上雪がありそうだ。途中から雪になったが、なんとか、このポールをたよりに山頂に辿り着く。山頂は完全に雪+ガスの中で視界はまったく無い。

下りは実に快適な斜面。雪質は降り始めではあるがほぼザラメで滑りやすい。視界が開けるまでは慎重に下る。視界が開けると眼下に海が。まるで海に飛び込むような錯覚におそわれ少々怖さを感じるくらい。なかなかダイナミックなダウンヒルが楽しめた。天気はいまいちだったがとても満足できる山スキーができた。

帰りに、北緯70度12分のArviksanden(図2のav)に寄り、北極の海を望んだ。

記録:2002年5月2日、曇時々雨(上部は雪)
Skoglund645=Lyngseidet715++Olderdalen(図2のaw)800=Storstein(図2のax)900++Lauksundskaret(図2のay)925=1000Akkarvik(3m)1020>>1300Trolltinden山頂(850m)1310〜〜1420 Akkarvik1445=1505Arviksanden1515=Lauksundskaret1550++Storstein1620=1630Skjervoya1730= 1835Olderdalen1845++ Lyngseidet1940=2010 Skoglund

図10


<写真11>


(つづく)

岩 記


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