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ノルウエーの山スキー(その3)

2005.5.6&2006.4.30-5.3

メンバー:岩 毅

今回は、前回(08年9月号、#316号、p23の「ノルウェーの山スキー(その2)」)に引き続き、ノルウェー北部北極圏の代表的山スキーエリアである、Narvik地域(図1;この図は、08年3月号、#313号、p16の「ノルウェーの山スキー(その1)」の図1に同じ)を紹介します。

図1


(B)Narvik地域の山スキー#2

以下に示す1〜4のは、前回ご紹介した山です。今回は、5〜8をご紹介します。日付は登頂日。記録欄の=はレンタカー、++はフェリー、>>はシール登行、〜〜は滑降、・・・は歩行(スキーを担ぐ等)、**はアイゼン使用(スキーを担ぐ等)を示します。

1 Storsteinsfjellet・・・・・・・1893m/2005.4.29〜5.02:08年9月号報告

2 Storsteinsfjellet北峰・・・1717m/2006.5.04〜5.06:08年9月号報告

3 Rundkollen・・・・・・・・・・・1019m/2005.5.07:08年9月号報告

4 Skavneskollen・・・・・・・・1196m/2006.5.01:08年9月号報告

5 Snφfjellet・・・・・・・・・・・・1119m/2006.4.30:今号報告

6 Kopparfjellet・・・・・・・・・・・911m/2006.5.02:今号報告

7 Novafjellet・・・・・・・・・・・・1281m/2005.5.06:今号報告

8 Frostisen前衛峰・・・・・・・1012m/2006.5.03:今号報告

図2


(5)Snφfjellet 1119m <図2、図3><Photo1-2>
このSnφfjellet山(図2、図3の5)は、この山域の北端、Salangen kommune(図2、図3のb)にある山である(Kommuneは日本の市町村に相当する)。登山口は、Narvik(図2のa)からクルマで1時間半、Salangen kommuneの北の端、Grφuli(図3のc)。

この日は、快晴、2006年5月連休、最初の山行、今日は、確実に山頂に登る、そういう気持ちでNarvikを出発した。登山口のGrφuliには1軒の牧場があった。その軒下に農作業の邪魔にならないようにクルマを置かせてもらう。出発の準備をしていると黒い牧羊犬が人なつこそうに寄ってくる。すると、牧場のおかみさんが出てきた。駐車させて下さいと頼むと快くOKしてくれた。

昨日のものと思われるトレースが残っており、しばらくそれに従う(Photo1)が、標高300m付近の森林限界で見失う。私は、読図から西から回り込むように標高700m付近の壁に挑む。ちょっとアルバイトだったがほどなく標高800mの台地に上がる。1044mのピークから北に伸びる尾根を巻いて山頂から北西に緩く下る雪渓様の沢に入る(Photo2)。正面に山頂を望む。とても1100m程度の山とは思えない景色である。ミニ氷河状になっている大雪原を、山頂と1044mピークの間のコルに向かって、ゆっくり登る。コルから山頂は一投足。森林限界からずうっとスキーアイゼンをつけていたので、妻は少々へばったようだ。

図3


Photo1


広い山頂に立つと、トレースが東から登ってきており、遠くゆっくり登ってくる人が見える。どうも、この山は、私の西回りではなく、東回りのほうがノーマルなようだ。山頂からの眺めは、西に大西洋、東に白い峰々がどこまでも続く素晴らしいものだった。

下りは、東回りも考えたが、安全を考えて来た道を戻ることにした。

雪質は少々硬いが、フィヨルドの濃青の海に向かって気持ち良く滑る。牧場ではあの人なつこい犬がしっぽを振って待っていた。牧場に下りてきたところで、後ろからノルウェー人女性が追いつくように滑りおりてきた。この方と話すと、やはり、東回りがポピュラーなルートとのことだった。
下山したあと、山頂から望んだより北方の山々が気になり、クルマでロケハンしに行く。いくつか面白そうな山があったが、少し雪が少なく登り出しが大変そうだ。3月のほうがいいのかもしれない。

記録:2006年4月30日、晴れ

Narvik600=730Grφuli(231m)750>>800m台地1000>>1220山頂1305〜〜800m台地1325〜〜1400Grφuli1420=(ロケハン寄り道多数)=1730 Narvik

Photo2


(6)Kopparfjellet 911m <図2、図4><Photo3-4>

このKopparfjellet山(図2、図4の6)は、Narvikから東へスウェーデン国境(図2のd)を経て鉄鉱石の町Kirunaに向かう国道E10沿いにある山である。登山口は、Narvik(図2のa)からクルマで30分、Skitdalsvatnet池(図3、図4のe)のそば、国道E10沿いにある。登山口のそばには3基の風力発電用風車が立っていて盛んに(?)発電していた。

ここは、とてもポピュラーなルートらしく沢山のシュプールが残っている。これらシュプールを追って登って行く。標高のわりに雄大な景色で、とくにコル(図4のf)を越えたあとは、とてもこれが標高900mの山とは思えない素晴らしい景色だった(Photo3)。頂上は易しい岩場となっていて、頂上直下の岩場の基部に板を置き、攀じ登る。山頂からの眺めは筆舌に尽くし難い。

山頂からコルへの東斜面の雪質は最高だった。気持ち良いシュプールを思う存分刻む。この山にはまだまだ滑りたい斜面がいくつもある。思った以上に充実感のある滑りが堪能できる山である。また来ようと誓い、コルから3基の巨大風車に向かって滑り降りた(Photo4)。

図4


記録:2006年5月2日、快晴
Narvik1030=1100Skitdalsvatnet(395m)1115>>コル(668m)1300>>1400山頂1445〜〜コル1500〜〜1525 Skitdalsvatnet1545=1615 Narvik

Photo3


Photo4


(7)Novafjellet 1281m <図2、図5>

このNovafjellet山(図2、図5の7)は、NarvikからOfotfjorden(図2のg)を挟んで対岸、Skanland(図2のh)にある山です。Skoddebergvatnet湖(図2、図5のj)を従えた、なかなか風光明媚な山です。登山口は、このSkoddebergvatnet湖の南端、Vassbotn(図5のk)です。

2005年5月連休後半は、前回(08年9月号、#316号、「ノルウェーの山スキー(その2)」)も述べたように、Lavangen kommuneのLapphaugen(図2のm)にあるHelarshytterというキャンプ場のキッチン付キャビンに3泊した。ここから登山口までクルマで40分ほど、Narvikからだと50分くらいだろう。2005年5月は、残雪が多く、Vassbotnからシール登行ができた。軍事関連施設らしい建物群を迂回して、Novadalen(図5のn)に入る。圧迫感のある巨大な岸壁に囲まれた広いU字谷を詰める。次第に傾斜が増しコルに達すると、右手に、山頂に突き上げる25度程度の広い斜面のたもとに至る。斜面を30分ほど登ったが、いっこうに天候が回復しない。それどころか、雪が強くなりだした。正午、登頂を断念する。振り返ると、フィヨルドの向こう、雲の下から、フィヨルド対岸Narvikの街を望むことができる。上を望むと、ガスの向こうに大斜面が続いてる。下りはあっという間。Novadalenをスイスイ下る。機密施設の脇を迂回するときだけ少々緊張するが、あとはラク。

2006年、再登しようとしたが、2005年と違い、寡雪で、登山口からNovadalenにかけてまったく雪がなく諦めた。

記録:2005年5月6日、曇時々雪
Lapphaugen610=650Vassbotn(120m)710>>910Novadalen(380m)930>>1200Novafjellet山に続く大斜面(750m)1245〜〜1510Vassbotn1530=1640 Lapphaugen

図5


(8)Frostisen前衛峰 1012m <図2、図6>

Frostisen山(図2、図6のp)は、Narvikの南西25kmにある最高点1724mの巨大な冠氷河である。その登路はいくつかあるが、Skjombotn(図2、図6のq)からVesterskardet(図6のr)のコルに上がり、そこから、Frostisen山頂(図2、図6のp)に至るのが代表的ルートである。今回は下見も兼ねて、Vesterskardetのそばの1012mピーク(図2、図6の8)まで登ることにした。

 NarvikからSkjombotnまでは、この地域で最も美しいフィヨルド、Skjomen(図2、図6のs)を行く。絶景ドライブをしながら、その最奥点がこのSkjombotnである。雪は無い。シートラーゲンである。いくつかの林道が交錯するが、どれがVesterskardetに至る登山道につながる林道かわからず2時間も行ったり来たりしてしまう。探した結果、電力送電線沿いの道を行くのが正しいルートだった。標高200m付近までこの道を行く。200m付近で右岸に渡る登山道が分れる。この登山道を登り、標高300m付近でやっと雪が出てきて、シール登行ができるようになる。

そこからは、手頃な斜面でグイグイ登ることができる。先行トレースも多い。広い谷(Vesterskaldelva、図6のt)に沿い、Vesterskardetのコルまでどんどん進む。この谷は電力送電線の鉄塔が続いており、ガスのときに心強い。いくつかの明瞭なトレースが標高600m付近から左手Meraftestinden(図6のu)に直接登っている。これを横目で見ながら進む。Vesterskardetのコルに近づくにつれて、風が強まるとともに雪面が硬くなる。スキーアイゼンを付け、上りきると、視界が広がりFrostisenの大氷河(図6のv)が望めるはずなのだが、雲とガスでよく見えない。電力送電線の鉄塔は西へ続いている。迷ったときのいい目印になる。コルから少し西へ進むと、左手にMeraftesfjellet(図6のw)を望む。この山も北面に良い斜面を持っておりぜひ登りたい山である。

さて、今日はどうするか?あまり天候も思わしくなく、また、すでに正午をすぎており、近くの手頃なピークに登って終わりにした。そのピークの標高は地図とGPSからは1012mであった。スタートがほぼ標高ゼロなので、1000m登ったことになる。満足、満足。

下りは少々悪雪だが、スイスイ滑る。Skjomenの美しいフィヨルドに向かって滑るのはとても気持ちがいい。標高300m点でスキーを担ぐ。スキーを担いでえっちらおっちらと下る。ここもまた来たいと思う。

図6


記録:2006年5月3日、曇り
Narvik615=725Skjombotn(10m)(登り口探索)915・・・1015標高300m点1030>>Vesterskardet(892m)>>1330標高1012mピーク1345〜〜Vesterskardet1405〜〜1430標高300m点1445・・・1530Skjombotn 1615=(途中寄り道多数)=1800 Narvik

岩 記


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