Last Update : 2010/07/21  戻る

会津 小野岳
大内宿付近より往復


2010年3月20日(土)快晴

メンバー:梅原 秀一

19日金曜日は休みにして、1:05PM新宿発「特急きぬがわ」に乗車。栗橋でJRから東武に乗り入れ、鬼怒川温泉でAIZUマウント・エクスプレスという野岩鉄道・会津鉄道快速に乗り替えた。湯野上温泉駅到着は4:56PMと長旅ではあるが、北関東で満開の梅、会津に入ると春を間近にした残雪の村落。ビール500t三本とともに楽しんだ。 その晩は湯野上温泉の旅館に泊まった。温泉街というのはなく、散在している旅館のなかで、線路脇にある古びた安宿にとまった。客は私一人のみで、露天風呂にゆったり長々と浸かった。

翌朝8:15AM、宿からタクシーで小野岳方面へ向かった。小野岳南面は雪が僅かしかなく、山スキーは断念し大内宿を越えてすぐの一番ポピュラーな夏道から、スキーをデポして登ることになるかなと懸念したが、西側に回り込むと辛うじて積雪がありほっとした。大内宿の手前の送電線の更に手前約500m辺りに林道を見つけたので降車。料金は1,760円。

良い具合に地図に記されていない林道があった。樹木は密の上積雪も少ない。これを使わない手はない。インターネット等の情報で、山頂から西に延びる尾根に早目に取りつく予定だったが、林道は始めその尾根向かうが、すぐに右折してトラバース気味にその隣の尾根との間の沢に向かって登り消えた。標高約300mはスムーズに稼げたので良いだろう。

小沢は僅かに水流が出ているので、沢の右側の小さな尾根を登った。樹木が密でやや苦労したが距離は僅かで、そこを突破すると沢は広くなり水流も消え樹木も疎になった。再び沢に下りこの沢を詰めることにした。雨で硬くなった日陰の雪と次第に増す傾斜で、シール登高が辛い。稜線直下はスキーアイゼンの助けを借りようかと思ったぐらい辛かった。また左側のデブリが顕著で、多くのキックターンを必要とした。この時期は落ちるべき雪は既に落ちているが、もっと早い時期ならば雪崩の巣であろう。快晴で気温は上昇している中、汗だくになり喘ぎながら稜線に飛び出たら、緩いブナ林の尾根を僅かに登るのみで広い山頂に着いた。2時間で楽勝と思っていたが、密林と厳しいシール登高で2時間半を費やした。小さな祠が北側端にあり、そこから北側の展望が得られた。静寂極まる誰もいない山頂に立つのも、雪山の醍醐味の一つである。

滑降は往路を辿った。沢への下り口まではブナ林を気分良く、といってもほんの僅かな距離である。沢に入ると序盤はデブリとブッシュが煩わしいながらも、未だ左程は溶けていない硬い雪をまずまず楽しく滑降出来た。沢の中盤以降は雪が水っぽくなり、その上小石や木の枝も沢山あって、徐行しながら下った。

喉のような密林の狭い沢を苦労してやり過ごせば、後は林道をトロトロ滑るだけのはずだが、悪雪の狭いルートは手強い。林道の端っこの深雪にスキーが嵌り込むとコントロールが難である。昨年3月の蓮華温泉から下り木地谷にあと一息という所で、他のグループのメンバーの一人が自力では動けないような怪我をしていたが、自動車道僅か手前で集中力が途切れた状況の悪雪が原因かもしれない。最後まで気を抜いてはいけないと、肝に命ずるのだった。



タクシーから降りた箇所に戻りスキー用具一式を袋詰めして、約0.5km車道を歩くと大内宿。連休の著名な観光地には車がひっきりなしに到着している。幹線道路から左側に折れて進めば、ほぼ100%藁葺きという家屋が長々と続いている。

なるほどタイムスリップした気分になる車両進入禁止の宿場町に、スキーを担いで大勢の観光客の流れに呑み込まれた。重荷が肩に食い込み五十肩が悪化しそうなので、御土産物屋にスキーとスキー靴との宅配便をお願いした。スキーを頼まれるのは初めてだそうで、値段が分らないらしく手間取っている間、キジトラの子猫三匹と遊んだ。この子たちが店の看板猫らしく、何人もの観光客を引き留めていた。結局分らず仕舞いで、着払いとなった。

雪が疎らに残る里山に、長々と続く藁葺きの家屋は特異な景観であった。特に突当りの神社の階段を登った高台は、時代劇の撮影にもってこいのスポットだろう。大内宿では殆ど全ての家屋は食堂・土産物屋・民宿の営業を行っている。その一つに入って、朝食以降飲料しか摂っていない空腹を満たした。名物葱蕎麦は、湾曲した長葱一本そのものを箸替わりにして、時折葱をかじりながら食べる蕎麦。生葱の辛さは苦手なので敬遠。普通の蕎麦と納豆餅と当然ビールを注文した。納豆餅は餅を煮て納豆をまぶしただけの簡単なもので、納豆がご飯より餅に合っているとは思えないが、一人前が大きな餅が二つで満腹になる。飲食店は一人旅の旅行者にも見合った量を用意すべきだ。

大内宿からの路線バスはなく、携帯電話でタクシーを呼び湯野上温泉駅に。通常は駅周辺で気軽に入浴出来るらしいが、冬季は受け付けていない様子だ。会津鉄道は1時間おき間隔だが、殆ど会津田島行きである。下今市行きに接続され、更に浅草方面に乗り換えとなるが、JR乗り入れ「けごん」に繋ぎ大宮・池袋・新宿にも出られる。鬼怒川温泉から「けごん」という選択肢もあるが、接続時間で大きく帰宅時間が異なるので、事前にチェックしておいた方が良い。特に携帯のサイトを利用しない人は。

マイナーな小野岳を選んだのは、評判の観光地・大内宿に至近であり、この季節であれば単独でも実力相応の山と判断したからである。会津の地味な山で、標高からして大滑降は無いけれども、この日登ったのは私一人のみという静かな山も悪くはなかった。注目され始め観光客が訪れ出した頃の大内宿では、平穏な生活を乱されて不満を抱く住民も多かったそうだが、現在では殆どの世帯が観光に携わっている。決して批判する気はないけれど、この様に賑わった地を旅することに、淋しさも感じた。

記録:林道入口8:40−林道消滅9:20−尾根上に到達10:50−11:00小野岳山頂11:25−12:15林道入口

梅原 記


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