Last Update : 2010/09/22  戻る

表大雪〜トムラウシ

2010年8月8日(日)〜13日(金)

メンバー:菅澤秀秋他2名

昨年の7月に悪天候のため登り損ねたトムラウシを目指した。前回は短縮登山口からの往復予定だったが、今回は層雲峡からの縦走を計画した。最終日は天候が崩れ、トムラウシ山頂からの眺望を楽しむことはできなかったが静かな山歩きができた。

【行程】
層雲峡七合目(1,510m)〜黒岳(1,984m)〜北海岳(2,149m)〜白雲岳避難小屋(1,990m泊)〜忠別岳(1,963m)〜五色岳(1,868m)〜化雲岳(1,954m)〜ヒサゴ沼避難小屋(1,690m泊)〜トムラウシ(2,141m)〜トムラウシ温泉(660m泊)
                      
8/8 岩槻IC 4:30==(東北道)==11:30青森IC==12:00青函フェリー・青森ターミナル18:00・・・・・21:50青函フェリー・函館ターミナル==23:30落部IC= (晴)

Aさんの車で早朝に岩槻を発つ。渋滞が心配されたので出発時刻を繰り上げたのだが、青森まで渋滞は一度もなく12:00には着いてしまう。青森は強烈な暑熱の中だった。1〜2便早いフェリーのキャンセル待ちを申し込んでみたが可能性がないと言われ、フェリーターミナルで半日待ち、当初の予約便に乗船。

函館からは国道5号線で八雲インターに向うと手前に落部インターが完成していた。函館から直通の高速道ができるのも時間の問題だろう。

8/9 ==04:00旭川北IC==5:15層雲峡ロープウェイ駐車場6:00・・・(ロープウェイ)・・・くろだけ五合目 6:30・・・(リフト)・・・七合目6:40―8:00黒岳8:15――8:30黒岳石室――10:00北海岳――白雲分岐――11:30白雲岳避難小屋 (曇り)

旭川北インターから旭川紋別自動車道を利用して層雲峡到着。無事にここまで車を回収に来れることを願う。

月曜日のせいかハイキング客は10名前後と少ない。始発のロープウェイで出発し、リフトを乗り継いで七合目から歩き出す。初めから急な道でテント泊のフル装備のザックが重い。雲が低く、いつ降りだしてもおかしくない天候で黒岳山頂は風があり寒い。西には北鎮岳が見えるがほかのピークはガスの中。眼下に見える岩室まで少し下り、私たちのパーティだけが北海岳へ向った。

赤石川と北海沢を渡渉してからは急坂となり、相次いで早稲田と近畿大学のパーティと行き会う。十勝岳から縦走してきたという学生たちはとても元気そうに見えた。北海岳山頂も雲は低く、周りのピークはガスに隠れている。広大な尾根を歩き、雪渓を渡る。白雲分岐から仰ぐ白雲岳もガスに包まれているので、往復一時間半ほどの山頂行きはやめにして急な下りを白雲岳避難小屋に向う。

小屋は空いていたので迷うことなく小屋泊まりにする。一階に4名、二階は私たちを含め7名。天幕は二張りだけだった。若い管理人さんに尋ねてみると、今年は団体ツアー客は半減以下だという。持参のアルコールを半分以上飲んで酔っ払ってしまい、テント場へ散歩に出た時にはコケまくる。夜半に屋根をたたく大雨の音に目覚める。

8/10 白雲岳避難小屋5:00――5:55高根ヶ原分岐――7:40忠別沼――8:35忠別岳8:50――9:35忠別岳避難小屋分岐――10:30五色岳――11:50化雲岳12:10――ヒサゴ沼分岐――13:00ヒサゴ沼避難小屋 (晴)

起きてみると雨はやんでいて青空ものぞきはじめた。今日は晴れそうだ。はるかに忠別岳、その奥にトムラウシの王冠のような頂も見える。

朝食を済ませ予定時刻に出発。今日はヒサゴ沼まで16kmの行程だ。

東側が深く落ち込んでいる広大な溶岩台地の高根ヶ原をゆったり下って行く。この広さと景観はまさに北海道だ。一部区間だけ平たい瓦状の石が堆積しているスレート平は不思議な光景だった。振り返ると白雲岳が大きく見える。高原温泉に下る三笠新道は「羆出没のため通行禁止」と注意書きがあった。途中何度もトンボの大群に出会うがまだ赤くなってはいなかった。花のピークは過ぎていたがそれでも砂礫地にはコマクサが、チシマリンドウやシオガマも咲いている。チングルマのほとんどは綿毛になっていたが咲き残っている花もあった。左前方の石狩連山の青いシルエットが美しい。

ゆっくり下ると忠別沼が現れ、水面に忠別岳の影を写している。ゆるくハイマツ帯を登って忠別岳山頂に着く。西側の忠別沢へストンと落ち込んだ断崖から湧きのぼってくるガスに向って両手を挙げてみると、ブロッケンがきれいに現れた。

ハイマツの中を五色岳とのコルまで下ると左下に忠別岳避難小屋の三角屋根が見えてきた。五色岳周辺の登山道は背丈以上のハイマツが濃く、掻き分けながら歩くのが大変だった。その密生したハイマツの中で蝉が鳴いている。急な登りの五色岳を越え、化雲岳に向う木道の回りはあちこちにお花畑が結構残っていて、楽しみながら歩くことができた。「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と言われるのもうなずける。日向なのになぜかキノコがたくさん生えている。化雲岳山頂には「化雲のへそ」と呼ばれる化雲岩があって、登ってみたが下りがやっかいそうなので途中でやめた。ヒサゴ沼分岐から左にトラバースしていくとヒサゴ沼が下のほうに見えてきた。木道と階段を下ってヒサゴ沼到着。

早く着いたせいか避難小屋の先着は一人だけで、テント場も1張りだけだった。ここも小屋泊まりとして1階に場所を占める。せっかく担いできたテントは使わずじまい。沼の水は温かかったので泳いでみようと裸になったが、水深は膝くらいなので水浴びで我慢する。ヒサゴ沼避難小屋周辺のロケーションはすばらしく、静かでゆったりしている。東南にはニペソツ山がきれいに見える。テントサイトの砂地には鹿の足跡が一杯あった。
小屋から200mほどの雪渓末端にある水場の水は要煮沸と聞いていたが、とても旨い水で、そのまま水割りにして何杯も飲んだが何ともなかった。小屋前でゆったりトカゲ。夕方までに学生パーティや単独の人たち20人ほどが到着し、静かだったテント場がにぎやかになる。防虫スプレーや虫除けネットを用意していたが使う必要はなかった。この晩は星空。

8/11 ヒサゴ沼避難小屋4:50―5:40稜線――天沼――北沼――8:15トムラウシ8:25――トムラウシ分岐――9:50前トム平(1,730m)――10:30コマドリ沢分岐(1,380m)――12:15カムイ天上――13:00温泉コース分岐13:10――14:35トムラウシ温泉(東大雪荘泊) (曇りのちガス・風・雨)

今朝も昨日と似たような夜明けで期待したが、後で裏切られる。沼畔を400mほど歩き岩場から雪渓を登り、ショートカットしようと適当に左にトラバースしたら行き詰って10分ほどロスしてしまう。さらに登ってヒサゴのコルから正規のルートに戻る。天沼あたりから美しい日本庭園が広がり、まもなく巨岩ゴロゴロのロックガーデンとなる。登りにくい岩の間を歩いていると、ピーピーというナキウサギの声があちこちから聞こえてくる。ガスで暗い岩の間に目を凝らしてみたが姿を見ることはできなかった。きつい登りを過ぎると北沼に出た。昨年7月の大量遭難の時には沼の水があふれて登山道まで広がったと聞くが相当の降雨量だったのだろう。

ピークを一つ越えたところで大粒の雨が降り出し、雨具を着ける。高知大学パーティ15名ほどとすれ違う。風が強まる中、岩場を捲きながら狭い山頂に到着。ガスガスで周囲は全く見えない。標柱には献花がされていた。風雨が強いが気温が高くて助かった。

写真を撮るのもそこそこに、岩場を慎重に下山開始。十勝連峰への分岐を左に下り、途中少し登り返して岩場を過ぎると前トム平に出た。トムラウシは岩の多い山という印象だ。

今日泊まる予定の東大雪荘からは「前トム平に着いたら連絡して欲しい」と言われていたのだが、雨と強風でとても携帯を取り出して電話するほどの余裕はなかった。こんな天候でも短縮登山口からの日帰り登山者数名と出会う。コマドリ沢まできてようやく風は収まったが雨の止む気配はない。カバーを付けてはいるもののザックが少しずつ重くなっていく。コマドリ沢分岐からの登り返しは木の根が張り出していて歩きにくく、木の根が無いところはどろどろで、場所によっては20cmも潜って足を抜くのが大変なところもあった。途中、30mほど先の笹薮が不規則な動きをするので立ち止まり、何度もホイッスルを吹いてみる。様子を伺いながら慎重に進んでみると、先行の単独者がどろどろを避けて笹薮の中を歩いていたのだった。少し緊張した。コマドリ沢分岐からカムイ天上を過ぎ温泉コース分岐までがとても長く感じられた。

温泉コース分岐まで下ると雨も止み雨具を脱いだが、アカエゾマツの枝から落ちる水で結局濡れてしまう。あまり休まずに歩いたせいか予定より30分ほど早くトムラウシ温泉到着。

どろどろの靴やスパッツを洗ってチェックイン。温泉につかってやっと一息つくことができた。風呂は広く、お湯も良い。渓流沿いの露天風呂も良かったが、渓流は雨で濁流となっていた。昨年改装したという国民宿舎「東大雪荘」は温泉、食事、施設、従業員マナーともとても良かった。

8/12 東大雪荘8:30== (タクシー)==9:30新得10:12==11:34富良野11:45== 12:55旭川13:43== 14:57上川15:00== (バス)== 15:45層雲峡==比布JTC==落部IC==22:00青函フェリー・函館ターミナル23:30・・・・(曇り)

台風4号の影響によるフェリー欠航を気にしながらタクシーで新得駅に向う。昔、営農者だったという運転手さんはとても80歳近いとは見えないほど若く、エネルギッシュな方だった。駅までの1時間の車中、開拓民たちの苦労話から最近の町や学校の話、過疎・高齢化の影響や訪れる人のいない大規模公園を作った行政、補助金漬けの農政など批判めいた話がとてもおもしろかった。下車する時に「話したことはすべてオフレコ」と言っていた。新得町は日本一の蕎麦の産地だというので駅で蕎麦を食べてみたがそれほど旨いとは思えなかった。

乗り継いだ列車は大雨の影響で時々停車し心配したがなんとか上川駅に到着し、駆け乗ったバスで層雲峡へ戻る。車を回収し6時間の道のりを運転を交代しながら函館に向う。私は北島三郎の歌を聞きながら運転したが全く眠くならず4時間以上も運転できた。長距離ドライバー必携のCDかもしれない。

予定より5時間以上早く到着したので、一便早いフェリーに変更を申し込んだら今度は簡単に変更できた。時間があるのでちゃんとした食事を摂ろうと街中に戻るがたいした店は開いてなく、結局、松屋の牛丼で済ませる。フェリーでは買い込んだ日本酒で乾杯し、そうそうにドライバールームにもぐり込んで仮眠。

8/13 ・・・・3:30青函フェリー・青森ターミナル==4:00青森IC==11:30岩槻IC (晴)

青森から岩槻まで、帰りも渋滞には会わずにすんだ。

一年越しのトムラウシに登ることができ、100名山も99座目を数える。満足できた山行だった。次の機会にはカムエク、石狩岳、ペテガリ岳などを登ってみたい。

菅澤 記


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