Last Update : 2010/09/23  戻る

ノルウェーの山スキー(その5)
Lofoten諸島


2010年5月

メンバー:岩 毅、(会員外:岩 佳恵、岩 春花)

今回は、Lofoten諸島での山スキーについてご紹介します(図1、図2、図3)。



Lofoten諸島はノルウェー北部Narvik付近から大西洋に突き出したような諸島で、基部から、主として、Hinnoya島、Langoya島、Austvagoy島、Vestvagoy島、Flakstadoya島、Moskenesoya島から成る全長180kmの細長い諸島です。

(Narvikについては、「08年9月号、#316号、ノルウェーの山スキー(その2)」、「09年1月号、#318号、ノルウェーの山スキー(その3)」、「09年9月号、#322号、ノルウェーの山スキー(その4)」を参照下さい)

Lofoten諸島に行くには、オスロからEvenes空港まで飛び、そこから陸路行くのが近い。また、時間に余裕があれば沿岸急行船でベルゲンから直接行くこともできます。Evenes空港でレンタカーを借りて陸路を走っても、途中、島を渡るのにフェリーに乗らなければならなかったが、最近、Hinnoya島とAustvagoy島を結ぶ新道が完成し、Evenes空港から突端のMoskenesoya島までフェリーに乗ることなく行けるようになりました。

この諸島はちょうどメキシコ湾流と北極からの海流がぶつかるところにあるため、豊かな漁場となっていて、とても漁業の盛んなところです。このため、北極圏にありながら、古くから人が住んでいて、バイキングもこの諸島を拠点にしていたとのこと。バイキング時代の遺跡も多くあります。



また、フィヨルドと海と奇岩烈峰の織り成す様は、まるで、おとぎの国のアリスの童話か、指輪物語の冥王の城か、まさに、このような景観が本当にあるのだろうか、というほどの絶景が続きます。ノルウェーには多くの日本人が旅行に行きますが、その多くは、ノルウェー南部の有名どころを廻って終わるようで、私個人としては、こちらのエリアのほうがもっと素晴らしいと思っています。ただ、このエリアは公共交通期間が大変貧弱でレンタカーを使わないとどこにもいけない点が大きな難点ですが。

山スキーは3月まででしょう。とくに最近は地球温暖化で3月も危うい可能性があります。標高が低いことと、メキシコ湾流のおかげで北極圏にありながら温暖であることから、山スキ−適期は短いです。2月までは北極圏のため昼も暗く、結局、山スキーができるのは2月後半から3月のおよそ1か月だけでしょう。

雪の量はこの地球温暖化でちょっと読めなくなってきました。私の行った年は雪の多い年で3月末でも素晴らしい新雪粉雪を楽しめました。

あと、オーロラですね。ここはオーロラ観察には最高です。私も本当に素晴らしいオーロラをここで見ることができました。

記録欄の、-はクルマ(自家用車/レンタカー/タクシー)、**は空路、>>はシール登行、〜〜は滑降、・・・は歩行を示します。



(1)Staindalstinden 山 464m 晴れ

前夜、Evenesの空港から、めまぐるしく変る天気の中、ロングドライブでHagstuaの民宿にたどり着く。このため、前夜は熟睡してしまい、オーロラを見ようと思っているうちに朝になってしまった。

天気は快晴。早速、HagstuaからStaindalstindenに向けて山スキーに行く。10時出発、驚くほどたくさんの人が山スキーをしている。やはりこの国はアウトドアの国、老若男女、また、ファミリーで山スキーである。ルートはクロカン向きである、そして、縦横無尽にある。森林がない。いくらメキシコ湾流で温暖とはいえ、ここは、北極圏、日本の森林のような深い森はない。したがって行きたいところに滑れる。

ではあるが、まだ、日本から来て2日目。まだ時差ボケもあるため、途中休み休みで行き、案外時間がかかったため、山頂から素直に戻る。雪質も景色も最高。そして海の見える山スキーは格別である。

Hagstua1000>>Steinheia1130/1200>>Moshumpan1315/1345>>Staindalstinden1400/1415〜〜Stainheia〜〜Hagstua1600

(2)Smordaskammen 山 427m 雨のち曇

やはり島の天気は変り易い。Staindalstindenに登った翌日は吹雪になったためMoskenesoya島のReineまでドライブする。Fish Museumを見学したり、山スキー向きの斜面を探したり、吹雪の中ののんびりドライブ。どうも山スキー向きの斜面はあまりない。

1日吹雪いたあと雨になるが弱い。2日続けて観光ドライブはつまらないので、山スキーにする。とはいえ、雨。そこで簡単ルートということで民宿のまん前の山に行く。雨なので雪質も景色もいまいちだったが、案外滑り甲斐はあった。

Hagstua1030>>Skogtuva1100>>Dalsheia>>Smordalskammen1215/1240〜〜Hagstua1315

(3)Brattflogan 山 460m 曇時々雪

天気が良くならず、雨。Lofoten諸島最大の町、Svolvaerで買い物、そしてその隣町のKabelbergで、水族館、博物館、美術館そして、Svolvaerに戻り映画を観る。映画は60NOK、日本円で900円、日本より少し安い。

1日観光した翌日、昼前に雨が止む。そこで、前日チェックしておいたルートに行く。歩き出すと陽が差してくる。中3日ぶりの太陽である。風はあるが、順調に高度を稼いで、コルに着く。斜面はおとといからの雨と、今日、気温が下がったため、堅い。スキーアイゼンをつける。眺めはとても標高400mそこらの山とは思えない。眼下に大西洋を望み、雄大な景色。山頂に近づくと風が強くなるが、それでも、何とか頂上に辿り着く。

天気が安定していないため、視界のあるうちに下山する。山頂付近は氷河となっていて、一部クレパスが覗いている。下りは上部はクラスト、下部は重い湿雪でいまいちだが、滑り応えはある。天気は下山したころまた悪化して吹雪となる。

Hagstua1115?Strandslett1130/1145>>コル(Trollet)1300>>Brattflogan1400/1415〜〜Strandslett1445?Hagstua1515

この日は夜、雪が止み、オーロラを見ることができた。色はグリーンからイエロー。夜12時ころ雲間に光るのを見る。ひだを作って、カーテン上に空に拡がる。そして暫くして消える。これを数回繰り返した。が、12時半以降、でなくなってしまった。

(4)Kartstaven 山 544m 晴

今日は天気も回復したので、最初から目を付けていたKartfjordからKartstavenに行くルートにする。天候は上々だが斜面はガチガチのアイスバーンである。初めからスキーアイゼンを付ける。相変わらず、標高500m程度の山とは思えない景観である。鞍部から尾根に上がると北からの雲が流れてきて、陽はあまりささない。北方からの2名の登山者を認める。我々と相前後して山頂に着く。下りはアイスバーンでいまいちだった。

今日のハイライトは実はこれからだった。宿に戻り、荷物をまとめて、Evenesまでのロングドライブ。途中でゆっくりしすぎて、途中のフェリーの夕方便に乗り遅れ、深夜の最終便になってしまう(冒頭で述べたように、最近、このフェリーを使わなくてもEvenes空港に行けるようになった)。

が、これが幸い。

深夜のフェリーから、素晴らしいオーロラをみることが出来た。この日は前日と違い2時間以上にわたるオーロラショーとなった。もし、夕方のフェリーに間に合っていたら、そのころはEvenesのホテルのベッドの中だったろう。

フェリーを降りたあとも、天の舞は続く。街の灯りが届かない、そして広く北の空を望める場所にクルマを止めて、降る様な星のまばたく夜空を見上げる。

レッド、グリーン、イエローさまざまな色が織り成すように天空いっぱいに拡がる。カーテン状の光列が北西の夜空から南東に向かって拡がり、私はそのカーテンの裾の真下。カーテンの裾は強い風に舞うが如く、グルグルと目が回る速さで踊る。そしてさっと消える。消えたかと思うと、北東の空から、また、光列がものすごい速さで降りてくる。今にも私をつかまんばかりに。まさしく全天にわたって繰り広げられる天空のオペラの如く、光が、輝き、舞い、踊る。こんなに素晴らしいものがこの世にあったのか、少々大袈裟に聞こえるかもしれないが、まさに、人生観をも変えてしまうような素晴らしさであった。ただただ、深夜の2時間、空を見上げていた。

午前2時すぎ、急に吹雪になり、あわてて、思い出したように出発し、Evenesのホテルに向かう。ホテルに着いたのは午前3時だった。

翌朝、オスロ行の飛行機に乗るため、目を覚まさせるのにかなり苦労したのは云うまでもない。

Hagstua1015?Kartfjorden1045/1055>>Kvanndalen1200>>Durmalsheia1235/1245>>Kartstaven1305/1330〜〜 Durmalsheia〜〜Kvanndalen〜〜Kartfjorden1430/1455?Hagstua1530

ちなみに、このあと、何度かオーロラを見る機会があったが、このときのような素晴らしいオーロラにはまだ出会えていない。


私と娘(ベビーキャリアに乗ってる)、Norway北部にて

岩 記


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