Last Update : 2011/12/14  戻る

後立山南部〜裏銀座〜読売新道


2011年9月23日(金)〜28日(水)

9/23

扇沢登山口7:45―10:55種池山荘11:30―12:40岩小屋沢岳―13:30新越山荘 

晴/ガス/雪

 柏原新道入口の臨時登山案内所に登山計画書を提出し、パトロール隊員から「寒気が入っていて稜線は氷点下」との注意を受ける。

柏原新道を歩くのは高校三年の夏に後立山を縦走した時以来で44年ぶりだ。重いテントと一週間分の食料を入れたキスリングを担ぎ、稜線に上がるまでずいぶん苦労した思い出が残っている。今回は荷物も軽く道も整備されていて、稜線まで汗もかかずに上がることができた。 

種池までは晴れていたが山荘を出発するころにはガスに包まれてしまい、右手に望めるはずの立山・剣は見えない。岩小屋沢岳を越えて二時間ほどで新越山荘到着。私たち3人はさっそく山荘前のテーブルで宴会を始めたが眺望はなく、雪も降ってきたので建物内の談話室に移動する。今年の初雪で、山荘営業中の降雪は10年ぶりとのこと。 

9/24 

新越山荘4:15―5:00鳴沢岳―5:50赤沢岳6:00―7:35スバリ岳― 8:35針ノ木岳8:45―9:10針ノ木峠9:35―10:35蓮華岳―北葛乗越―12:20北葛岳12:35―13:05七倉乗越―13:55七倉岳―14:10船窪小屋

快晴 

朝食は弁当にしてもらいヘッドランプを点けて登りはじめる。昨日の雪が薄らと乗った岩は滑りやすく慎重に登る。赤沢岳の登りにかかったころ、剣、立山が赤く染まりだしてとてもきれいだ。緩やかに下ってから岩稜をたどってスバリ岳に着く。右下に大きく見える黒部湖は湖面が白く凍っている。マヤクボノコルへの下りと針ノ木岳への登りはザレていて歩き難い。針ノ木岳山頂で展望を楽しみながら弁当を食べる。針ノ木雪渓にブロックが少し残っていたがマヤクボカールには雪はなかった。

針ノ木峠で休憩後、扇沢へ下山するS、K両氏と別れて縦走を続ける。

船窪方面へ行くにはいったん針ノ木谷に下ってから登り返すほうが時間的には早いが、稜線を辿ることにする。蓮華岳山頂からの「蓮華の大下り」は初めのうち普通のザレだったがどんどん急になり、どこまで続くのか心配になるほど下っていく。支柱が外れた錆だらけの長いクサリ場を下って北葛乗越にようやく着いたが、500m以上も降らされた。
船窪小屋が間近に見えるところまで来ると、登山者を出迎える鐘がカンカンと鳴り出した。針ノ木峠から前後して歩いてきた青年が「1時間も早く着きましたね」と言って握手を求めてきた。彼とは「15時までに船窪小屋につければ御の字だ」と言いながら頑張って歩いてきたのでうれしかった。

この日は昨日と違い日没まで暖かく、小屋前のテーブルは談笑する人たちで一杯だった。ランプが照らす囲炉裏を囲んでの夕食は質・量とも山小屋の食事のレベルではなく豪華で美味しかった。

9/25  

船窪小屋5:30―6:10船窪乗越―7:30 船窪岳第二ピーク7:40―9:50不動岳10:00―南沢乗越―11:15南沢岳11:30―12:30烏帽子岳―13:15烏帽子小屋

晴/高曇り

船窪乗越から不動岳まで浸食がすすんだ不動沢源頭部を周回するように辿ったが、何箇所かで崩壊した縁を歩くところがあって緊張した。岩場を船窪岳第二ピークへ登り、小休止。不動岳の山頂からは剣・立山が良く見えた。南沢乗越を過ぎてからはなだらかとなり、烏帽子岳に近づくと池塘が点在していた。分岐に荷物をおいて烏帽子岳を往復。クサリを頼りに垂壁を登り、岩塔が寄り集まっている山頂に着く。

昼頃から上空に雲がかかり気温が下がってきたが崩れる心配はなさそうだ。

烏帽子小屋の正面には東沢谷をはさんで水晶岳から赤牛岳の稜線が続き、あれを歩くのかと眺め入る。小屋の裏手からは昨年8月に梅原さんと登った餓鬼岳が、さらに燕、大天井、槍ヶ岳へ続く稜線が見えた。餓鬼岳の手前に張り出した唐沢岳がとても印象的で、昨年登っておけばよかったと少し後悔する。

連休を過ぎた烏帽子小屋はガラガラだった。

9/26 

烏帽子小屋5:30―6:30三ツ岳―8:00野口五郎岳―真砂岳―9:20東沢乗越9:40―10:25水晶小屋10:35― 11:10岩苔乗越― 11:55雲ノ平分岐12:10― 12:45三俣山荘(泊) 

曇り、気温低く風強し

三ツ岳への道は白砂とハイマツの間を通っていて歩きやすい。小屋閉め作業中の野口五郎小屋の脇を通り、岩の積み重なる間を野口五郎岳に到着。真砂岳の西側をトラバースして東沢乗越で休憩。砂礫の急坂を少し登って水晶小屋に到着。ここも小屋閉め作業中だった。

水晶岳を越えて温泉沢ノ頭から高天原に下って温泉でもと考えたが、高天原山荘が営業しているという確認が取れなかったので、しかたなく三俣山荘に向う。岩苔乗越から黒部源流に下って三俣山荘に登り返した。

9/27 

三俣山荘4:35―6:00岩苔乗越6:10―7:00水晶小屋―7:35水晶岳7:45―8:25温泉沢ノ頭―10:10赤牛岳10:30―11:45「4/8」―12:40「2/8」―13:30奥黒部ヒュッテ14:20―16:10平ノ渡(針ノ木谷)17:20・・・・・17:30平ノ小屋  

快晴

小屋の朝食は摂らずに早出する。黒部源流まで下り、岩苔乗越に登り返して水晶岳に向う。水晶岳山頂で北アルプス最奥からの展望をしばらく楽しみ、気合を入れて赤牛岳を目指す。温泉沢ノ頭からは高天原山荘の赤い屋根が見え、そのうえには薬師岳が堂々と聳えている。金作谷の底に雪渓が少しだけ残っていた。東沢谷の向こうには昨日まで歩いてきた野口五郎から後立山にかけての稜線が続く。赤牛岳までは傾斜のない広い砂礫地帯で、やたらとペンキマークがあった。左側の岩の積み重なった斜面を巻いて赤牛岳山頂到着。はるか下方に黒部湖が見え、あんなに遠くまで下るのかと思う。

山頂直下の崩落箇所を慎重に下り、樹林帯に入ると木の階段となる。それが切れると苔むした岩や木の根が多い滑り易い急坂が続いた。我慢の下りを続けているうち右下から東沢の水音が聞こえてきた。左手には上ノ廊下のコバルト色の水流も見えてきた。急に道が平になったら奥黒部ヒュッテの前に出た。赤牛山頂から休まず歩いたので疲れた。ブナ林に囲まれたヒュッテはとても静かでのどかだった。次の渡し舟時刻まで時間があるので大休止。

小屋から50mほど離れたテントサイトの脇から東沢を丸木橋で渡って黒部本流の右岸に出る。林間の白砂の気持ちよい道はまもなく急なハシゴが20箇所以上も連続する道となった。一時間半ほど歩くとハシゴも減り、水流もコバルト色からグリーンに変わって黒部湖岸となる。丸木を組んだ即製の階段が現在の渡し場となっている。黒部湖の水位は10m以上減っていて、その分丸木階段も長くなっていた。

時間どおりに対岸から来た渡し舟に乗ったのは私一人でしかも無料でなにか申し訳ない。平ノ小屋は渡し場から急な階段を上がった森の中にあってログハウス風でとてもきれいだ。オーナーが今日釣った魚を調理する様子を目の前で見学させてもらったがうまいものだ。さばいたばかりの虹鱒の刺身の夕食は絶品だった。今日見かけた登山者は赤牛岳山頂で出会った一人だけ。

9/28  

平ノ小屋6:05―9:10ロッジくろよん9:20―9:40黒部ダム10:05・・・・・10:15扇沢



啄木鳥のドラミングを聞きながら入りくんだ入江沿いに歩く。2時間ほど歩くと御山谷の対岸に青い屋根のロッジくろよんが見えてきたが、入江を廻りこむので2kmも歩かされた。

ロッジには人影がなく、ここからは舗装された観光道路となり、観光客たちから奇異の目で見られる。ダムサイトから黒部湖の正面に見える赤牛岳をしばし眺めて感慨に浸る。満足の六日間だった。

菅澤 記


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