Last Update : 2013/04/09 戻る

雪倉岳(栂池〜蓮華温泉周回)

【日程】2013年3月29日(金)〜31日(日)

【山域】北アルプス北部 雪倉岳(2,611m)

【参加者】 L:田中秀和、M:菅澤秀秋、加瀬幸男

【行程】

3月29日(栂池高原→天狗原→乗鞍岳→蓮華温泉)

 早朝5:15、光が丘にて菅澤氏をピックアップし関越道・上信越道をひた走る。雨の心配はないが雲が多く、春特有の霞んだ空気が漂う。松井田の辺りは桜が咲き始めているが、梅も未だ満開である。気が付くと対向する登り斜線には車が走っていない。碓氷軽井沢の手前で車4台が関係する多重衝突事故現場が事故処理中であった。佐久〜松井田妙義IC間が閉鎖されてのである。安全運転が第一と肝に銘じ、時代の要請であるエコ運転を心掛け栂池高原駐車場に到着する8:50。

 9:20 備え付けの登山者カードの代わりに用意してきた会の登山届けを提出し、自然園までのチケットを購入、1,720円/人也。ロープウェイは30分間隔の運転、10:00発に乗り込み自然園駅(1,825m)にて自然保護指導員のレクチャ−を受ける。10:23天狗原に向け出発。山に向かうのは平日のため数パーティ、10人程である。

 11:17−11:19 天狗原にて小休止。風がある場所なので早々に乗鞍岳に向かう。雪質は3月の高温のためグショグショで表面はカリカリ。先行トレースは若い人なのであろう急傾斜で上がっている。当方はマイペースで斜度を落としてトレースを刻む。

 11:54−12:02 雪が飛んだ乗鞍岳(,456m)の岩陰にて小休止。此処まで1時間半、毎時420mのアップと風も日射も強くなく快調な登りであった。

 12:37−12:48 大池を過ぎ、この先に登りが無いことを確認しシールを脱ぐ。乗鞍岳〜大池山荘間は岩や這松が露出し通過ルートを選ぶのに苦労する場所である。今回も這松の上を歩いたりしてシールが汚れてしまった。

 13:03 カリカリの尾根筋を避け、夏道と尾根筋の中間付近にコース取りし、天狗の庭の上方2150m点(2093m点と2308点の中間)に至る。ここで欲が出る。本来はこのまま北への尾根通しに露天風呂まで下がるのであるが、東に併走する魅力的な斜度の沢筋が気になってしまった。もうブロックは上部に無く、先行シュプールも幾つか見える。先ず、菅澤氏が飛び込み、加瀬氏、田中と続く。しかし、そうは甘くなかった。沢筋でも柔らかい雪はなく、夥しいデブリに板を回せる幅も狭い。“早いお着きですが、偉いルートを降りてきましたね”とは蓮華温泉ロッジ(1,470m)若旦那の一言13:43。

 板は外、シールは玄関(後に階段高欄に)、靴はストーブの付いた下駄箱エリア、濡れた物は食堂のストーブの近くに置く。先ずは温泉で汗を流す。酸ヶ湯ほどには酸度が強くないようで目に入っても何とか我慢できる。

 夕食は質素であるが、この時期に開設して頂けるだけでも有り難い。厨房との仕切カウンターに“岩の原ワイン”があるのを見つけた。珍しい新潟県産ワインであり結構な味わいである。これは“ご馳走”であった。

3月30日(蓮華温泉→瀬戸川渡渉点→雪倉岳→瀬戸川渡渉点→蓮華温泉)

 5:40 早めに用意して貰った朝食を頬張る。外は小糠雨混じりの雪、気温-4.5℃、視界50m程度。今日は高気圧の中心から後ろ側に位置することになり、山上は雲の上に抜き出ている筈である。今は風が全くなく、雲海も動き出す気配がない。

 6:18 蓮華温泉ロッジ発。10分ほど前に出立した40代と思しき男女ペアのパーティを追うことになる。彼等も、視界が無いためGPS頼りのルート選定なのであろう。厳しいアップダウンを繰り返しながら滝見台分岐に至る7:18。

 これからが今日のルートの難所である瀬戸川の渡渉である。しかし、谷筋に入るとガスは一層濃くなり全くのホワイトアウト状態となる。谷は雪で覆い尽くされ、GPSと睨めっこしている内に二股より50m程下流の地点で瀬戸川を越えていることに気付く。7:41− 7:47 瀬戸川渡渉点付近(1,400m)にて小休止。

 当初は二股に伸びてくる小尾根を登りルートとする予定であったが、ホワイトアウトの中で滝のある沢に入り込んでしまい、尾根へ取り付く右岸は崖となっている。しかし、滝のある左俣(東側)は上部の斜度も緩く(地形図上)、下ってきているトレースもあることから、この沢を小尾根への取付きポイントを探しながら詰めることにする。結果的には、沢を登り詰めて予定ルートの小尾根(1,715m)に達して小休止 8:52− 9:00。尾根筋に出たためか漸くガスが薄らいでくる。尾根には古いトレースと今朝のペアと思われるトレースが付いていた。


雪倉岳

 1,750m付近にて風と共にガスが流れ、瞬時に青空が広がると目の前に150m程の雪壁が現れた。先行するペアが板を背負い、雪壁右端の這松の付いた岩稜帯を登っている。雪壁の上部に落ちそうなブロックはなく、所々に地肌を覗かせたクラックを利用すれば板を履いたまま登れると判断する。斜度のある雪面に確実なステップを付けながら細かなジグを切って登行するのは辛かった。小1時間掛けて漸く登り切り(1935m)、小休止 9:57−10:05 。

11:39 2430mラインに到達。斜面は陽当たりの良い南面である。春の陽射しで融解再結氷したカリカリの雪面と昨夜来の雪が僅かに積もった真っ白な雪面が交互に現れる。漸く頂上もはっきりと捉えられる位置に来たが足が重い。既に出発してから5時間以上となり、予定の12時までの頂上到達は難しくなった。下りにこのカリカリ斜面を安全に滑り降りる体力も残しておかなければならない。ここでスキーをデポし、30分と見込まれる残りを靴アイゼンで歩くことにし、12:03まで大休止。


朝日岳をバックに

僅かに先行するスキーで登るペアを追い抜いて雪倉岳の頂上に立つ12:30。かなり雲が湧いてしまったが、直ぐ北に朝日岳、西に毛勝〜剱、南には白馬や清水、東は昨日越えてきた天狗原の更に向こうに妙高から火打、焼山、雨飾が見える。2000mライン付近から雲海が横たわる。ホワイトアウトの世界での苦闘が頭をよぎり、記念写真を撮り早々に下山12:40。

 12:51デポ点に帰還し、スキー装着、休憩。このときロッジで相部屋となった3人組の1人が登ってきた。後刻、彼は3度目の挑戦で漸く頂上に行けたと聞いた。

 13:22 滑走開始。主に登ってきた小尾根の北側の沢筋を滑る。雪質は相変わらずのカリカリ主体だが、コース幅が広く採れるので思ったより快適に滑れた。それも束の間、雲海に突入し、またまたホワイトアウトの世界で手探り状態の下降が始まる。

 13:59 ついに雪倉ノ滝の直上まで来てしまった。少し手前で登路とした沢にトラバースするつもりであったが調子よく滑りすぎてしまった。菅澤氏の果敢な斥候の甲斐あって脱出路を確保、登り返しなしに登路の沢に戻れた14:04。

 全く視界が利かないが、今朝の自分たちのトレースを辿ることが出来る。雪質もザラメ状+僅かな新雪となり快適に滑り、瀬戸川渡渉点に至る14:12。

 14:27 シールを付け帰途につく。滝見台の小尾根を右に巻き込み夏道の分岐点に出る。結果的に見てこの渡渉点へのアプローチは正解であったが、瀬戸川に掛かるスノーブリッジの状態如何でこの評価は変わるだろう。ロッジで案内している渡渉点へのルートは、一旦兵馬ノ平に降りて1466の尾根に登り返してくるものであ、所要時間2.0時間程と目されている。今回は往復共に兵馬ノ平には降りず、1480〜1450mラインにある平坦な夏道に平行するルートを選んだ。さかし、細かなアップダウンやアイスバーンの急斜面横断などが多く決して平坦な道ではなかった。15:57 蓮華温泉ロッジ着。

 久し振りに達成感そして疲労感の感じる充実した1日であった。GPSに頼り切ることは問題があるが、今回はGPS無しにこの時間までに登頂して戻ることは不可能であったと思う。温泉で疲れた筋肉を揉みほぐし、先ずビール。夕食にはまた“岩の原ワイン”を注文する。10日後に迫ったオートルート完結編のリハーサルのようである。

3月31日(蓮華温泉→中ノ沢→小栂平→フリコ沢→天狗原→栂池高原)

 今朝も雲海の中にいるような天気である。一昨日は宿泊者8人であったが、昨日は約60人と多い。夏の小屋のように中高年が幅を利かすことなく、20歳から40歳代の若い人が多く、何故か嬉しさを感じる。

 6:45 蓮華温泉ロッジ発。乗鞍沢の橋は意外にも下流側の高欄が足下から露出していた。

残雪も平坦になっており、雪解けの早さとロッジの皆様の除雪の労に感謝した。雪が舞う中、沢筋の積雪は割れている箇所もなく、歩きやすい底部を選んで歩く。視界は数十〜百m弱、1,870m点にて小休止し8:20、天狗原到着は9:35、やはり風は強い。

 9:50 視界が悪いので鵯尾根には入らず成城小屋に向かう。日曜日でありBCを楽しむ人が多く登ってきている。彼等の歓声を聞きながら、また荒れた雪面に注意しながら滑る。10:02 成城小屋付近、ロープウェイと林道に挟まれた沢筋の林間を縫って下り、ゲレンデを経て栂池高原駅着10:39。 

 久し振りに達成感と疲労感を感じた山行であった。白馬駅前で美味なる蕎麦を食し帰途につく。

(田中秀和 記)

             
<雪倉岳からの眺望(3月30日)>
朝日岳
白馬岳と清水岳
<栂池〜天狗原からの眺望(2012年)>
GPSトラック(2013/03/30)
同上;渡渉地点を中心に拡大

 


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