Last Update : 2013/05/04 戻る

立山ホワイトアウト×3とピーカン

2013年04月30日〜5月3日 

L:作野、今村

行程:
4月30日 ガス 入山
5月01日 晴のちガス・強風 一ノ越(目標御山谷)
5月02日 晴のちガス 雷鳥沢
5月03日 快晴 国見岳

プロローグ  連休前半の最終日に通過した低気圧が日本全体に悪天・寒気が、白馬大雪渓の大雪崩、富士山、奥穂高、八ヶ岳・赤岳の滑落事故を引き起こしていた。2人の我々パーティもセルフレスキューの観点から3000mの高山においては何があってもおかしくないので細心の注意を怠らず安全第一に行動することを心に戒めて本計画を実行した。

4月30日  入山

室堂ターミナルに12:40到着した。そこはホワイトアウトの世界。みくりが池温泉へのポールは2本までしか確認できない(ターミナルの掲示板に本日の視界300mとあった)。室堂山は当然止めて直みくりが池温泉に。温泉に3回入り、昼寝と読書(悪天を予想し停滞時の為に持参したカフカの「変身」を読む。昔、教科書でほんのさわりを読んだだけなので、全編読んでみたかった名作)半日湯治。

5月01日 「御山谷」を目指すも一ノ越まで

朝起きると青空。これは天気予報が間違ったかと嬉しく思いながら出発。しかし、室堂山荘を過ぎ夏道に入る頃からガスが上がって来た。雪面は昨日の荒天と寒気による低温の為ガチガチのアイスバーン。スキーアイゼンを付けたが、歯が食い込まずその反力で左足のアイゼンがデアミールの中央の軸から外れていたのを知らず、後ずさりするのでツボ足で軌道修正すべくスキーを脱いだら、カラカラと異音がしてアイゼンが斜面を落ちて行った。それに続いて「あっ、何か落ちて行く。」と今村さんの声。シールの後ろ留めばね金具が「低温脆性破壊」したのか完全破断してシールからはずれて落ちて行ったのである。この時幸いにしてまだホワイトアウトの状態ではなく、40〜50m下で両方の部品が落下するのが止まるのを確認できた。スキーアイゼンが無くなるとあす以降の山行に差し支えるので、今村さんにその場にとどまっていてもらって私は横滑りで回収に向かった。無事回収し、夏道に戻ろうとしたが、この時既にガスは周囲全域を覆い始めた。夏道の今村さんを目標になんとか戻ることができた。まだ、完全ホワイトアウトでなくて良かった。しかし、時々周りが乳白色の目標も見えないと心細いこと甚だしい。下の写真はシール留め金具が完全破断して取れたものである。アセンションのシールであるので、東京に帰ってから山道具屋で相談してみよう。今回は貼り流しで行けるかトライとなった。


シールのテール部分            シール後方留め用ばね鋼金具

また、デアミールのスキーアイゼンは踵を高くすると歯が雪面に食い込まないばかりか、中央軸から外れやすいことが分かった。(要注意)一ノ越に着いた時は完全ホワイトアウトに加えて強風が吹きまくって来た。ブランドの衣服に身を固め高価な道具を持った若者パーティはこのホワイトアウトの中「計器飛行」で御山谷中途まで滑ろうと話し声が聞こえたが、我々は、夏道沿いに立てられたポールに忠実に沿って斜滑降、横滑り(アイスバーンの為ガリガリと大きな音を立てて)で室堂ターミナル経由みくりが池温泉に下った。今日も湯に3回つかり昼寝と読書。今日の午後も湯治。

[コースタイム]
みくりが池温泉7:30→室堂山荘7:58→祓堂付近(スキーアイゼンと金具を落す)8:40→一ノ越9:26/10:00→みくりが池温泉10:26

5月02日 またしてもホワイトアウトの「雷鳥沢」

朝起きるとまたまた青空。昨日のことがあるので、半信半疑で出発。雷鳥平から2545m地点まで1ピッチ(1時間)。ここまではガスが流れているが時々剣御前小屋が見え隠れしていた。下の写真はその地点からのもの。







さて、ガスが流れる中快調に登高し、剣御前小屋についた。途中1回休憩だったのは普段6Km歩いているからか? しかし、寒い。11時、ガスが晴れないのでホワイトアウトの中雷鳥沢(振り子状)を忠実に下れば安全と思い小屋下からドロップイン。この時、富山出身(あとでみくりが池温泉で分った。)の中年男性単独行者が先に出たが滑りだしてすぐじっと止まっている。3.4人の女性ボーダーも小屋の下で、動かず。我々は意を決して滑りだす。上部はアイスバーンの上に新雪が10-20p積もった状態。しかし、手に負える雪質である。我々が彼に追いついたら、言ってくれたものである。「ホワイトアウトでは誰か先に行ってくれるといいんです。この辺が一番急なのですよ。」と。しょうがない、先に行くか。雪質はこの辺からふかふかの新雪快適である。しかし、慎重にS字で山側に切り上げるとなんと斜面の傾斜が全然判らず切り上げ過ぎて後ずさりするしまつ。ホワイトアウトは怖い。足の裏の感覚だけで傾斜の度合いは判断できない。しかし、幸い振り子状の地形であるので、何とか滑ることができた。これが上に凸の尾根上の場合は何処に行くかわからない。そうこうしているうちに上から女性ボーダーが颯爽と降りてきた。うまいものである。すぐ追い抜かれてしまった。件の単独行者も彼女らについて先に行ってしまった。我々は慎重に滑った。「晴れていれば最高の雪質なのになー!」

[コースタイム]
みくりが池温泉7:30→雷鳥平8:00/8:09→2545m9:09→剣御前小屋10:09/11:00→雷鳥平11:26/11:45→みくりが池温泉12:45

5月03日「国見岳」

朝からドッピーカン、大日岳が美しい。最終日にしてこれである。今日は室堂センターの裏に聳える国見岳である。行動は下の写真参照ください。

[コースタイム]
みくりが池温泉7:30→国見岳山頂9:14/9:30→雪の大谷上9:46

エピローグ 今回の行動で「ヒヤリハット」がいくつかあった。生還できたのは単なる幸運?5月1日の落し物の件と、5月2日のホワイトアウトでの雷鳥沢滑降である。前者はやはり登山道からはずれるべきではなく、「あきらめ」たほうが良かったか? 後者は沢に入るべからずで、登山道を引き返すべきだったか? その場合、「赤布」を持参し立てて登るのが最善策であろう。山には『カモ』(〜になるかも?)が沢山いるので想像力(前者の場合は堅雪による自身の滑落、後者は過去11月にあった雷鳥沢の雪崩)を持って行動すべきであったろう。

(GPSログ:今村、写真:今村&作野、記:作野)

         
今日は晴天。大日岳がまぶしい。
ターミナルを迂回したところから徐々に国見岳を目指して登り始める。先行のシール跡に沿って行くが直登しているのについていけなくなって、ジグを切る。堅いバーンの上にうっすらと粉雪が積もった状態である。最初の急登を登りきらんとする時、3名の女性ボーダー隊(スノーシューで)が我々の登っている尾根を下から巻きながら追い越して行った。速い!また、昨日の件の中年単独行者がシールで国見岳の最後のヤセ尾根を登っているのが見えた。「すごい!」と思いながら我々は下の堅い雪質にエッジを外されないように注意して登る。
最後のヤセ尾根の登り。女性ボーダー隊3人組は、一旦室堂山に登ったと見るや、国見岳との鞍部目がけて颯爽とボードを駆使して到着。すぐスノーシューに履き替えヤセ尾根を登り始めた。我々は左側は崖、右側はかなりの斜度で落ち込んでいてなおかつ狭い急斜面はシールでは無理と判断、私はスキーを引っ張り、今村さんはザックに付けてツボ足で登る。最初私が先頭で彼女らのスノーシューの踏み跡を登り始めたが、少し下の堅い雪の層を突き破り膝までもぐる。これはたまらないと悲鳴を上げた。
その時「私が先に行きましょう。」と今村さん。体重(私は65kg+ザック10kg+スキー5kg+靴4kgで合計84kg)の差がポイントで、今村さんなら潜らずに行けた。私はその少し踏み堅められた踏み跡に周りの雪をストックで落し込み穴を埋めながら体重をかけると潜ることなく登ることができた。以下は国見岳頂上からの景色。
先ず裏側。黒部源流の山々と遥か遠く槍ヶ岳、笠ヶ岳。目を反時計回りに移してゆく。
国見岳頂上からの大斜面を滑る。頂上からの滑降は素晴らしく堅いバーンの上の新雪を楽しんだ。あっという間の快走で今回の立山を締めくくった。
大斜面を満喫
GPSによるトレース(雷鳥沢&三国岳)

 


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