Last Update : 2013/11/10 戻る

茂倉岳

2013年8月31日(土)、晴

梅原秀一

接近している台風のため、天気予報は芳しくない。荒天なら当日にあっさり諦める積りで、新幹線に乗った。越後湯沢は丁度夕立がやんだところであった。

予約した雪国の宿・高半はガーラ駅を真下に見下ろす位置にある。その名のとおり、川端康成が『雪国』を執筆した宿だそうだ。折しも川端先生が大ファンであった藤圭子が自殺したばかりである。あの小説のどことなく尋常でない女性を描いた表現とお人形のようであった藤圭子。なにやら繋がりがあるのかもしれない。

由緒ある宿の割に、平日のせいか宿泊料金はそれ程高額ではなかった。湯沢の街とそれを取り囲む山々を一望に出来きる夕景は素晴らしい。料理も美味しく、越後の名酒を多銘柄用意していて、4種類を一合ずつ飲んだ。どうせ明日は朝から雨で登山は中止。只見から会津に抜ける観光旅行でもしようか?

朝日の明るさで目覚め、カーテンを開けると青空が広がっているのであせった。やや二日酔い気味とはいえ、これでは登らなくてはならない。7時半の朝食を済ませタクシーで土樽の登山口に着いたのは8時35分頃であった。

登山口でEPSONのGPS付き腕時計をセット。現在のところ、最も稼働時間が長いGPS腕時計とのことだ。序盤からの急斜面に取りつくとすぐ、大きな猿が一匹道の真ん中にいた。ホイッスルを鳴らしてもどいてくれないので、傍らの木の枝を拾って振り回して威嚇してやっとどいてくれた。どうやら近くにいた小猿を待っていたらしい。

ひと登りすると、ブナ林の緩い登りとなった。この日はやや強風で、林を抜けて吹く風が涼しい。再び傾斜がきつくなった林を抜けると矢場の頭に到着。この先は低木しかなく、草原の尾根が頂上まで続いている。ハクサンフウロなどの高山植物が咲いているのも楽しい。茂倉岳避難小屋(小さいながら快適そうで、寝袋が幾つかぶら下げられていた)を過ぎれば頂上は間近。残念ながらここから上部は雲に覆われていた。 誰もいない茂倉岳に11時少し過ぎに登頂。僅かな休憩の後往路を下った。強烈な日差しながら、風が強いのであまり暑さは感じない。この尾根は見晴らしが良く、矢場の 頭辺りまでは気持ちよく下れた。その先は木の根と岩が混在して煩わしい。いつものトレラン(この言葉は好きではないが)用シューズの靴底がすり減っていたので、ゴアの軽登山靴にしたところ、靴の幅が広い分岩の隙間にはまったりして歩きにくかった。

山頂でGPSは3.85qを示していた。ということは同一コースを下るのだから登山口は7.7qになるはずである。7.7qに迫っていくのが楽しみであったのに、それを越してもなかなか登山口の駐車場に到着しない。急激に活力が失われていって、小さな石に躓いて転びそうになりながら登山口に到着。8.2qを示していた。この程度の誤差は容認しなくてはいけないのだろうか?

気を取り直して土樽駅へと急いだ。途中道路を横断している十数匹の猿の群れ遭遇。そういえばこの日は猿には二度出会ったのに、土樽駅まで人間の姿を全く見かけなかった。悪天の予報で止めた人も多かったのか、お蔭で静かな登山が出来た。

15分待ちで越後湯沢方面の列車に乗車。最後の舗装路での照り返しで身に纏ったホームレス臭を拭うべく、駅の温泉を利用してから帰途についた。土曜の午後の新幹線は空いていて、ビールを飲みながらのんびり帰れるのが良い。

茂倉岳登山口8:45−10:10矢場の頭10:15−茂倉岳避難小屋11:05−11:15茂倉岳11:25−茂倉岳避難小屋11:30−矢場の頭12:10−茂倉岳登山口13:20−14:45土樽駅



(梅原 記)

 


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