Last Update : 2014/02/15 戻る

羊蹄山(喜茂別口、真狩口)

山行日:2014年2月9日(日)〜12日(水)

参加者:L田中(秀)、菅澤

 昨年2月に京極口および喜茂別口からチャレンジしたが、強風や時間的制約から登頂が果たせなかった。その節サポートして戴いた札幌在住の岳人達は2013年の一年間、毎月羊蹄山に登る目標を立て、見事に大晦日に完遂された。この知らせに俄然登頂意欲が湧いてきた。今回は喜茂別ルートでの登頂を第一にし、これが叶えられたら真狩口での山スキーの好ルートを探索するつもりであった。

2月8日(山行前日)

 厳しい冬となるという長期予報に反し、シーズン盛期となってもパウダーにはなかなか巡り会えない状況が続いていた。しかし、出発日前日の2月8日は関東において46年ぶりとかの大雪となった。マスコミのニュースは空の便を含め交通混乱を報じ始めた。奥多摩の入り口に住む小生にとっては翌朝の羽田発にどう間に合わせるかが課題となる。直ぐに前夜発を決めるも羽田近辺のホテルは既に空室無く、かろうじて川崎駅前にカプセルを押さえ18時半に家を出た。しかし既に交通機関の混乱は予想をはるかに上回り、青梅・八高・横浜・京浜東北とJRを乗り継ぎ川崎駅に着いたのは24時半、なんと6時間掛かった。明日の便が予定通り飛ぶのか不安が残るが此処までの疲れが出て爆睡。

 同行の菅澤氏も野田の自宅から光が丘に移り、翌朝の交通混乱に備えていた。

2月9日(移動日)

 空港の電光掲示板は始発便からキャンセル表示を続けている。しかし、ラッキーなことに予定便の2便前から新千歳行きは出るという。札幌雪祭りという超繁忙期であることが関わっているのであろうか。定刻9時半より1時間半遅れの離陸であったが、今日の予定は登山口の駐車スペースの確認だけであり、明るい内に現地に着ければ十分である。

 手配していたレンタカーで支笏湖、美笛峠経由で喜茂別町に入る。沿道の積雪は昨年の半分ほどしかなく、夏道登山道の喜茂別口も除雪壁の高さが低い。今日入山したと思しき数パーティのトレースが残っていた。

 16時、快適なルスツリゾートのトラベルロッジに投宿。宅急便で送った荷を解き、明日の準備を済ませ前夜祭。

2月10日(山行1日目、喜茂別口)

 4時半起床、昨夜来の積雪はほとんど無く、空には僅かに星も見えるが雲が多い。気温は流石に低く−15℃位か。

 5時50分、ロッジを出発、除雪の不安が少ない国道廻り(230&276号線)で登山口の道道97号線路肩に駐車する(6時10分)。私達以外に入山者は未だいない。

 6時25分、登山口発、ヘッドライトが不要な程度に周囲は明るくなり、完全に残っている昨日のトレースを辿る。良く管理された平坦な森林帯をしばらく進むと、山頂部に僅かに雲が掛かった朝日に染まる羊蹄山が望めた。

 7時20分〜30分、林道終点と思われるc530m点にて休憩。風雪無く汗を掻きそうなので衣服調整。ここから先は傾斜が増し、下りのシュプールが斜面一杯に展開されている。しばらく登ると右手の沢が深くなり、登路の尾根筋が痩せてくる。下りの時に勢い余って突っ込まないようにと昨年注意された場所である。

 8時40分〜9時、c965m点にて大休憩。風がないため暖かく感じるも、登るに連れて日射しを浴びる時間は減ってきているようだ。麓の眺望は得られるが上の方は雲が掛かっている。最近は降雪が少ないのであろう。氷化した表面に霜のように乾いた雪が薄く載っている滑りやすい雪質となったため、ここからクトーを装着する。

 森林限界のc1,300m付近からガスに巻かれる様になり、トレースも無くなった。多くの人は登頂より滑降を楽しみに来ているのであろう。以降は要所要所にルート旗を立てて進む。

 10時30分〜55分、c1,500m点にて板をデポし壺足で進むこととする。c1,400m辺りから斜面は30度程度ときつく、薄い雪の下は完全にアイスバーンとなっていた。沢筋を避け尾根筋にルートを求めるが、ガスによる視界低下および水平方向にうねるような襞の羊蹄山独特の山肌に苦戦する。この上はさらに厳しい雪面になると判断し、頂上から滑り降りたい欲望を抑えここに板を置く。

 c1,500m付近は這松帯が雪に覆われ、踏み込むと腰まで埋まり、昨年は大苦戦した場所である。今年は雪がシッカリ落ち着いて潜り込むことは殆ど無かった。しかし、次第に菅澤氏がトップを担う時間が多くなり、彼に遅れを取り始めることとなった。前夜祭が過ぎたか。登山口でも300cc以上水を飲み喉の渇きを癒してきたが、いよいよ代謝能力も限界に来ているようだ。リンゴを囓り口中をすっきりとさせる。



 c1,600mを過ぎる頃から予想に反し新雪の量が増えてきた。未練がましいが板を置いてきたことが悔やまれる。壺足なので直登が多くなり脛、足首への負担も多くなってしまう。ガスの晴れ間に山頂部が見えるも、近くて遠く感じる苦しさが続く。

 12時20分〜45分、念願の山頂1,898mにて大休憩。最後の美味しいトップを菅澤氏から譲って貰い頂上にたどり着いた。昨年サポートしてくれたシロクマさん達(他会)は山頂までc1,670m付近から45分程であったと聞く。時間当たり310m登っているが、小生達は280m止まりであった。残念だが歳の差を実感せざるを得ない。



 山頂を取り巻くガスは晴れず、ニセコ連山が望めない。一団の雲が通り過ぎればとカメラを構えるも、期待通りにはならなかった。しかし、上空は時々青空が覗き風も弱い。ゆっくり休憩、暖かいココアの甘さが疲れた体を元気づける。

 13時10分〜35分、滑れば美味しい斜面だったと贅沢な愚痴を言いながらデポ点着、滑走準備。

 しばらく硬い斜面をルート旗を回収しながら慎重に滑る。登りでは重い湿雪と感じたが、さすが蝦夷富士・羊蹄山だけのことはある。広大な疎林帯を各自見える範囲でノントラックバーンを選びつつ快適に滑る。問題となる痩せ尾根到達以降は、樹木が多くなり雪面も荒れているので慎重に下る。

 14時10分〜25分、登山口着、帰宿準備。約6時間の登りも、下りは壺足30分弱、滑降は30分強と夢見心地で終了。滞在する3日間の内に登頂できればと考えていたのが、初日に登れてしまうと少々拍子抜けではある。明日以降は真狩口を探索することにする。

 リゾートホテル暮らしは身に付いていないので、倶知安に寄り道し、買い出しをしてから宿に戻る。

2月11日(山行2日目、真狩口・墓地の沢ルート東側斜面)

 5時起床、昨夜も雪は殆ど降らなかった。星が多く見えるので昨日に増して天候は良さそうだが、寒い。

 6時30分、ロッジを出発、道道66号線で真狩村の中心部に入る。昨日よりも鮮明に朝日に染まる羊蹄山が正面に聳える。左端には所々に雪庇を擁した真狩口の夏道、その右にこれと上部で合流する緩い沢状の斜面が神社の沢ルート、ほぼ正面に、鮮明な2本の沢に挟まれた台地状の尾根筋が墓地の沢ルート、深い沢を1本介して右に大きな三角形の疎林の尾根筋が今日狙うルートである(勉強不足を露呈するが、この綺麗な三角形の斜面が墓地の沢ルートとこの辞典では勘違いしていた)。車の外気温計は出発時-15℃、ここでは-17℃、道路脇の情報表示も同じ。



 羊蹄山の裾を鉢巻き状に走る道道97号線を横切り、配水池があるため除雪されている道路の路肩に駐車する。先行車は1台、北大探検部の3人パーティが出発準備中であった。車のフロントに張り出された計画書では、神社の沢ルートで登頂を目指すとの由。公道に車を置き放しする場合や登山者カード等を投函することができない場合に、車のフロントに計画を明示する方法は見習うべきと思う。

 7時05分、車道の延長線上に北上し雪に埋もれた墓地を縦断し針葉樹林帯に入る。この辺りまでは神社の沢ルートと墓地の沢ルートが交錯し、下りのシュプールの多さもあってルートが判然としない。沢もこの辺りでは浅く渡渉地点の選定に決め手が欠ける。尤も、どちらのルートに入っても構わないと構えていたので機を逸したのかも知れない。村に入ったときに見えた裾野まで続く大きな三角の疎林帯に魅せられ右手に踏み込む。

 8時15分〜20分、c600m付近、今日も風が無く汗を掻きそうだ、衣服調整。美しい疎林帯が広がり始めた。

 8時40分〜50分、c730m付近、ここ数日雪が無い日が続いているがシュプールは数本だけであり、このルートに入って正解だったと確信する。日焼け止めが必要な位の日射となり、春スキーの気分になるが、手袋を外していられる時間は短い。雪質は昨日と同じで登るには滑りやすい。

 9時40分〜45分、c1,050m付近、三角形の頂点に近づいたらしく台地状の尾根幅が狭くなり、キックターンを頻繁に繰り返すようになったため早めにクトーを付ける。



 10時00分〜30分、c1,100m付近、極端に尾根幅が狭まる。大きな岳樺の根元に小さなテラスがあり休憩には絶好のポイントがあった。この上はスキーで上がるには狭くて厳しそうである。頂上を狙うには壺足の距離が長過ぎてすぎて不適当である。今日は昨日のクールダウンの意味合いもあり軽めに済ませることにし、ここから美しい岳樺の疎林帯を楽しむことにする。

 11時20分、駐車スペース着。途中、ビデオ撮影をしたり、墓地の沢ルートへのトラバース地点を探したりしたので若干時間を喰った。1日2本楽しみたい美味しい斜面であった。

 駐車スペースに帰り着くと、何と21台もの車が並んでいた。まるで鍋倉である。ここが人気コースとなっていることの証左であろう。

 11時50分、真狩温泉にて入浴。廻りに積もった雪が邪魔して露天風呂から羊蹄山を見ることは出来なかった。

 13時、道の駅にて昼食。生ラムジン丼850円はボリューム満点、お肉たっぷり味も上々。ノンアルビールで我慢。

 今日は、ニセコ・モイワ、アンヌプリ、ヒラフと大外回りし、倶知安にも寄り道して宿に戻る。

2月12日(山行3日目、真狩口・墓地の沢、移動日)

 5時半起床、30分寝坊してしまう。週間予報通り今日が一番天気が良さそうで満天の星空が明け始めていた。昨日と同じくらい寒いが風はない。今日は昨日の隣、真狩口・神社の沢を楽しむ。

 6時45分、ロッジを出発、真狩村に入ると昨日と同じ−17℃、昨日と同じ登山口の駐車スペースには既に2台先着していた。

 7時10分、行動開始。墓地の沢ルートは直進北上すればよいのだが、偵察山行の意味合いもあり敢えて最左端(神社の沢ルートに続く)をしばらく進む。



 7時50分、c450m付近、通称三俣付近、神社の沢が深まり、戻るのが困難になりそうなので予定ルートに戻る。

 8時15分〜25分、c590m付近、疎林帯が広がり初め、昨日のルートが良く見えるポイントにて小休止。降雪がないので、帰りは荒れた斜面の何処を滑ろうかと物色する。

 9時55分〜10時05分、c1,120m付近、登りやすい斜面を快調に高度を稼ぎ小休止。眼下の真狩村の向こうに、南西は昆布岳の真っ白なシャープなシルエットが美しく、その左(南)に有珠と洞爺湖、更に雲の上に駒ヶ岳の尖頭が微かに認められる。その左は白く輝く噴火湾らしき白い帯、オロフレ、徳舜別、樽前と道南の山々が一望できた。厳冬期にこの大展望が得られるとは奇跡的、家を出たときの困難さとの引き替えか。

 10時45分〜11時15分、c1,375m付近、風が強くなり今日の到達点とする。クトーを付けてもお鉢(稜線)に到達までは2時間程要するし、今日は帰京日であり無理はできない。見上げると、真狩口(夏道)から5〜6人の壺足パーティと2人組のボーダーがお鉢直下に達していた。既に小灌木帯に出ており風に吹かれて寒いが、強い日射しをストーブにして、のんびりココアを飲み、リンゴを囓り、紫煙を燻らせ滑降準備に掛かる。

 登りではズタズタに荒れた斜面と思っていたが、滑りだせばノントラック斜面が至るところに広がっている。流石に山スキー天国の北海道である。

 12時00分、駐車スペース帰着。ビデオ撮りをしながら標高差1,100m弱、大展望を見ながらの45分間の滑降は筆舌尽くし難い。途中、単独行、そして4人組のボーダーと遭遇、好天に誘われ平日でも入山者が多い。

 12時半、真狩温泉にて入浴、ここから見る羊蹄山は見事の一語、今日は左にニセコ連山も見える。ロビーで宅急便を荷作りし、帰京準備。施設内の食堂で昼食、蕎麦が美味かった(盛り400円)。

 14時半、紺碧の空に白く輝く羊蹄山を背に新千歳に向かう。



追記;今回は好天に恵まれ、ここが山スキー天国であることを再認識した。入山しやすい真狩口は雪崩事故も多い。羊蹄山では、山の襞を刻む沢が標高によって深くなったり浅くなったり変化が激しい。沢に挟まれた単調に見える斜面も上下方向に波を打つ。森林限界外の上部では、視界が悪いと尾根状の凸部から緩やかな沢状の凹部に入ってしまっても気付き難い。そこは、雪崩の“地形の罠”であり、慎重な上にも慎重なルート選定が必要であると感じた。

(田中(秀)記)

他の写真・図






(喜茂別ルート)















(写真及びGPSログ:田中(秀))

 


山スキー同志会のホームページへ