Last Update : 2014/08/30 戻る

岩手山 (2,038m、焼走り〜網張)

2014年8月26日 天気 曇り 微風 気温15℃(稜線上)

メンバー:田中秀和(単独)

・日帰り縦走

 千歳から羽田に向かう機上から岩手山がよく見える。南西麓にある網張温泉にて昔の仲間が集う機会があったので、スキーツァーの下検分として記録集V・No.6(1980年3月末)のコースをほぼ逆に辿ってみた。

 前夜、新宿西口より夜行の高速バスにて盛岡に出る。盛岡駅より花輪線一番列車で大更駅へ、駅からは予約しておいたタクシーで焼走り登山口(標高570m)に出た。ドライバーに熊情報を訊くと「トウモロコシの収穫期だから山より里の方が忙しいのでは!?」との答え、念のために撃退スプレーは用意してきたが実際に使えるか自信はない。登山口着6時40分、ここは観光地でもあり広い駐車場やトイレが整備され、数台の先着が有り、出発準備をしていた。

 麓の天気予報は晴れ&曇りだが、秋雨前線の影響か山には雲が厚く巻き付き降り出しそうである。溶岩流出跡の右側(川で言えば左岸)の雑木の樹林帯を進む。平らな道も暫くすると勾配を増し、ガスが枝葉で結露した雫が雨のようになってきたので雨具を付ける。 8時を過ぎる頃から凄まじい轟音、地響きに驚かされる。南隣で自衛隊が演習を始めたのだが、山容と言い立地も富士山に似ている。しかし、人が居ない。この先山頂手前の平笠不動避難小屋までの間に遭遇した人は1人だけだった。

 やはり夜行の疲れがあるのかペースが上がらない。8時15分、ようやく第2噴出口跡に出る。この辺りから樹高は低くなり始め、直登してきた道が西側へ大きく向きを変え、火山砂礫の歩きにくいザレ道となった。3週間前に潰してしまった靴擦れ跡が痛み出す。ジグを切らない右下がりの片傾斜が延々と続くザレ道は辛い。腰掛けられる石を見つけ靴を脱ぎ手当をする。咲き遅れた可憐なピンクのコマクサを見つけ慰められる。1月前ならば見事な一大群生地であろう。滴れる雫の心配も無くなったので雨具を脱ぐ。

 9時20分、漸くザレ道が終わり、上坊コースとの分岐点ツルハシの別れを通過、暫く岩の多い急登、ここで今日初めて登山者に会い、上は青空と聞き元気が出る。勾配が緩くなり岳樺や這松の低木帯を行くと、小さいながら立派な避難小屋の建つ平笠不動平に出た(1,770m)。雲の上部に達したようで時折青空が見え、ガス流れる。ここから西に延びる屏風尾根、対岸の今日行く鬼ヶ城の尾根に挟まれた陥没地の底に御田代湖や大地獄谷が見えた。カルデラ底から山頂までは涸沢並に標高差550mもあり樹林は濃く深い。

 背の低い這松帯を抜け、所々にお花畑をちりばめたザレた斜面を一登りし、岩手山最高点の薬師岳(2,038m)に立てたのは11時だった。山容や登山口からの標高差が約1,500mと富士山によく似ているが、頂上火口のお鉢は浸食風化が進み穏やかであり、何より砂礫斜面に豊かなお花畑があることがこの山の魅力である、

 ガスが切れないので眺望を断念し、時計回りに岩手山神社奥宮を参拝し不動平に向かう。お鉢の降り口から八合目避難小屋の大きく立派な建物が目に飛び込んできた。不動平避難小屋(1,828m)はその西に質素な佇まいを見せている。小屋の裏手の斜面を一登りし御神坂コースと鬼ヶ城の分岐点に出た。荒々しい火口壁を辿る鬼ヶ城は登降激しい岩稜歩きだが、蒸し暑い夏場は風通し良く爽快、北の豪快な火口壁の岩場を覗き見、南の這松と笹原が一面を埋め尽くす見事な斜面に白銀の世界を想像しながら歩く。

 13時30分、岩稜からダラダラとした尾根道となり少々飽きてきた頃に大地獄谷への分岐点である切通(1,500m)に着く。火山ガスへの警告表示板があり細やかな説明がされていた。相変わらず展望が効かないので黒倉山頂を割愛し姥倉山に向かう。この2つのピーク間には地熱が高く水蒸気やガスが出ている裸地が目立つ。水蒸気が吹き出ている近くの岩はお風呂程度の暖かさがあった。姥倉山も山頂を割愛し犬倉山に向かい、分岐点から150m程急下降して地熱発電で有名な松川温泉に流れ下る澄川源頭の鞍部に出る。疲れもあり犬倉山の山頂も踏まず網張スキー場を下る。

 盆の休みを過ぎると登山リフト運転も土休日のみとなっている。立派な標識が異常に多く立ち並んだゲレンデ際の登山道を下るのだが、道は獣道同然、かろうじて判別できる踏み跡を尻餅突きながら温泉へ急ぎ下る。

記:田中秀和

<タイム>
8月25日
 21:45 新宿西口発(夜行・高速バス;8,100円)

8月26日 04:55 盛岡駅西口着
 05:41 盛岡駅発(いわて銀河&JR東花輪線;840円)
 06:17 大更駅着・発(予約タクシー;3,010円)
 06:40〜06:50 焼走り登山口(570m)
 08:00〜08:15 第2噴出口跡(1,060m)
 09:10〜09:20 ツルハシの分かれ(1,465m) 
 10:25 平笠不動避難小屋(1,770m)
 11:00〜11:15 岩手山・薬師岳山頂(2,038m)
 11:45 不動平避難小屋(1,828m)
 11:55 鬼ヶ城分岐(1,875m)
 13:30〜13:40 切通(1,500m)
 15:00 網張スキー場リフト乗場入口(1,300m)
 15:50 休暇村網張温泉(780m)

<ルート図;GPS画像>


<写真;山頂より西側カルデラ>

 


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