Last Update : 2014/08/31 戻る

北アルプス 白馬岳〜唐松岳

2014年8月3日(日)〜5日(火)

【メンバー】田中秀和(単独)

【概要】

 手を広げ過ぎてしまった家庭菜園の世話に追われている間に夏山シーズンもピークとなっていた。7月例会の折り、S氏のリハビリ奮闘ぶり、K氏の膝痛復調ぶりに刺激された。そして猛暑襲来の兆し、涼しそうな山に行きたなった。ノロノロ台風12号とさらに足の遅い11号に挟まれた天気図をにらみ、土日の混雑回避および高速料金割引を狙い日曜日の出発を決めた。今回はアクセス至便の 白馬大雪渓を登り、三山を南下して不帰ノ嶮から唐松を経て八方尾根を下る。

8月3日
 11時に自宅を出て、渋滞回避で上野原から高速に乗る。1ストップで15時、八方第二駐車場に到着、車はここに置く。バスの時間まで1時間あるが残念なことに駐車場内の第二郷の湯は改修工事中(12月オープン予定)のため冷房の効いたバスターミナルで時間を潰す。10分遅れの駅からのバスに乗り込み30分程で着いた猿倉の駐車場は夕刻の時間帯でも8割ほどが埋まっていた。缶ビールで一休みしている間にガスが下りてきて小雨となったので早々にテン泊を諦め猿倉荘に入る。30人弱の宿泊客のほとんどは時間に余裕のありそうな中高年で、大雪渓までのハイカーも多い。夜になると雨音が強くなった。

8月4日
心配した雨は上がっていたが雲は低い。早立ちのため用意してもらった朝食弁当を未だ暗い食堂で食べ、明けかけた猿倉を出発する。晴れたら暑くなると自分に言い聞かせながら濡れた林道を黙々と歩く。道が沢筋の山道になり程無く出発準備で賑わう白馬尻小屋に着く。小屋では特段の情報もなく衣服調整をして先を急ぐ。

 小屋から10分程で大雪渓の末端に出た。雪の硬さを見るためツボ足で踏み込んでみたが氷化が著しくアイゼンを履くことにする。ここで準備不足が露呈、新調した靴と携行したアイゼンのサイズ合わせを忘れていた。軽くてお気に入りのカジタだが、使い込んだのでアジャストを改造し、兼用靴と従来の山靴に合うように固定化していたのだった。10mmばかり長過ぎるアイゼンを少々強引に靴に締め上げ出発する。

 アイゼンを気にして歩くため疲れる。急登の一段落した3号雪渓合流点の上で緩んだアイゼンを履き直し、降り出した雨対策をする。葱平への取り付き点となる痩せた小尾根に着き漸くアイゼンバンドの緊縛から解放され、小休止。時すでに遅く靴擦れが出来てしまったが生憎の雨、場所も狭いので頂上宿舎まで我慢する。

 この頃から下山組との遭遇が増え、早立ちは正解と得心。小雨が続き視界も効かないが、下界の暑さと比べれば極楽か、 足元の花を愛でながら登る。小雪渓はツボ足のままトラバース。晴れていればカメラタイム連続となりそうな御花畑を過ぎ、9時前に村営頂上宿舎に到着、気温10℃。

 食堂は未だ営業開始前なので温かい麺類は望むべくもない。無理を言って温かい味噌汁を出して貰い行動食にて昼食。今回はインスタント味噌汁の携行も忘れていた。靴擦れは両足の踵外側で軽い水膨れ、靴下を履き直し、靴紐の締め具合を調整する。

 雨が上がり、時折周囲の山々が見え隠れするもガスは簡単には晴れそうもない。白馬岳山頂は割愛し杓子岳に向かう。巻き道から逸れて急なガレ場を一登りしピークに出るも眺望はない。少し長めの休憩としガスの晴れ間を待つが、高校生の一団が到着し賑やかになったので鑓ケ岳に向かう。

 風上の右手、富山県側は時折ガスが切れ旭岳、清水岳が見え隠れし、富山湾すら見える。しかし周囲の名だたる峰々は雲の帽子が取れない。コマクサ、イワツメクサ、タカネウスユキソウ・・・花に慰められ40分程で鑓とは思えない小広い頂上に着く。相変わらず眺望は無いが、東に延びる尾根(北山稜)の岩角に白いガスを背に少し丸みを帯びた影を発見。距離は50m程か、目を凝らすと猿である。ボス猿らしき大きな個体がこちら睨み、周りには子猿や赤ちゃん猿を背負った母猿が数頭いた。更に北側のカール上斜面のハイマツ帯には10頭近い群れが居た。この天候であるから雷鳥に遭遇することは想定していたが猿とは!高山における鳥獣の生態系も激変しているようである。今日泊まることになる天狗山荘には鹿の目撃情報を求めるポスターが掲示されていた。

 大出原から鑓温泉への分岐点にて右足の豆が潰れてしまった。コンピードで応急手当、山中でこんな目に遭うのは?十年ぶり、準備不足を反省。足を引きずるように雪田の下にある天狗山荘に着く。ガスの中を唐松まで行くのも面白くない。明日の天候回復を期待し今日はここまで、時折の雨と突風でテン泊は中止。雪解け水でラーメンを作り昼食、長い昼寝をして時間を潰す。

8月5日
4時起床。先刻まで小屋の屋根をたたいた雨や窓を揺るがせた風は止んだがガスが濃い。小屋に張り出されたヤマテン気象情報から強い風はなく、午前中は雨も無いと判断し、5時出発。20分足らずで天狗の頭(三角点は割愛)を過ぎ、大下りに入る。ここからは要注意とストックを納め、落石対策にヘルメットを被る。下り始めて間もなく急にガスが晴れ、遠くに毛勝三山、剣岳、行く手の不帰T、U峰、唐松岳、と八方尾根が見えた。機を逃してはと暫しカメラタイム。峰々に纏わりついたガスは消え去らないが、見通しが効くようになったので岩稜歩きのスリルも味わそうだ。

 濡れてた少々嫌らしい鎖場を降り、小屋を出て1時間余りで最低鞍部のキレットに着く。ここからは天候も回復しそうなので雨具を脱ぎ、登りに備えて薄着になる。東の不帰沢、西の不帰谷といった絶景の全貌がガスに隠れて見えないのが残念だが、垣間見える岩肌と雪渓にこのコースの魅力を感じた。

 30分程でT峰、更に1時間弱でU(南)峰に着く。特に歩き難い個所も無く、渋滞も無く快調に進めた。V峰は富山側を通過するため意識できないうちに通過、V峰かと思って登っているうちに唐松岳の標識が現れた。エッ!もう終わってしまった!!

 唐松山荘の外で、頭を雲に隠した劔を見ながら早めの昼食?気温15℃、これより灼熱の下界に戻る。八方尾根は下るほどに晴れてきた。今回の天気は、台風が呼び込む湿った空気が山を登ることで生じているもので、従来の安定した夏型ではない。登山者、観光客で混雑する道を駆け下り、昼前に駐車場に戻る。

【記録】

8/3(日)晴れ、のち曇り
自宅・五日市11:00=上野原IC=13:15松本安曇野IC=大町=15:00白馬村・八方第二駐車場/八方バスT16:15=16:40猿倉/猿倉荘(泊)

8/4(月) 曇り雨、一時ガス晴れる、午後は時折風強し(稜線上の気温10〜15℃)
猿倉荘4:40・・・5:25白馬尻小屋(1,560m)5:30・・・5:40大雪渓下端5:45・・・7:15葱平取り付き点7:25・・・8:50村営頂上宿舎(2,730m)9:25・・・10:35杓子岳(2,812m)11:00・・・11:40鑓ヶ岳(2,903m)11:45・・・12:00鑓温泉分岐・・・12:40天狗山荘(2,720m)

8/5(火) ガス濃く、風やや強し、時々ガス晴れる(稜線上の気温10〜15℃)
天狗山荘5:00・・・5:20天狗の頭(2,812m)・・・6:10不帰キレット(2,411m)6:15・・・6:40不帰T峰(2,520m)・・・7:30不帰U南峰(2,614m)・・・8:15唐松岳(2,596m)8:50・・・10:40八方池山荘・・・11:20八方第二駐車場

【写真】

1.西不帰谷


2.雪渓をトラバ-スする猿/鑓ヶ岳山頂付近


記:田中(秀)

 


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