Last Update : 2014/12/22 戻る

ノルウェーの山スキー その8

【Norway北極圏/Troms&Lyngen】

2014年3月7日〜17日

メンバー:岩 毅、蔵田道子、岩佳恵、岩春花(5歳)



ノルウェーの北極圏エリアで雪が多いのは、強い暖流であるメキシコ湾流が、アイスランドとフェロー諸島の間を通り、ノルウェー海に進入、その流れがスカンジナビア半島にぶつかるところが、このノルウェー北極圏エリア、Lofoten諸島からTromsoにかけてであることが大きな要因である。ノルウェー海に低気圧帯が発生し、このメキシコ湾流の上(ノルウェー海)を、北極ないしはグリーランドから非常に冷たい西風が吹くと、その風がスカンジナビア北部の山脈、KJOLEN MTS(図1参照)にぶつかり、ノルウェー海側に大雪が降る。KJOLEN MTSは標高2000m級の山々が連なっているが、日本の脊梁山脈同様に、高低があり、日本同様地形的要素から、雪の多寡はそれぞれのエリア毎に異なってくる。Lyngen半島は丁度西風をさえぎるように南北に、かつ2000mの山並みが連なり、いきおい、大雪エリアとして名高く、氷河も発達している。

2014年3月7日(金)  図1、図2

羽田空港115 晴 (NH203) 520Ftankfurt715快晴 (LH858) 900Oslo 1145 雨(SK4416)1330 Tromso空港 1500 曇 (Car) 1510 Tromso市内(AMIホテル及びinformation) 1550 (Car) Breivikeidet港 1650 曇 (Ferry) Svensby港 1715(Car) 1735 Lyngseidet (スーパーで買い物)快晴



(Car) 1810 宿/ Lyngseidet, Magic Mountain Lodge

羽田空港ラウンジは、厳格にゲスト1名遵守で結局、私(メンバー)と春花しか入れない。家族一緒はかなわず、佳恵はプリプリ。帰りのフランクフルト空港は家族一緒にどうぞ、と、対応してくれたのと比べると大違いだった。早朝のフランクフルト空港は、アフリカ、中近東からの到着便ラッシュで、パスポートコントロールが大混雑。乗継2時間でもギリギリだった。とはいえ、特段のトラブルもなく、飛行機3本乗り継いで、羽田から20時間かけてノルウェー北極圏の大都市トロムソに到着する。この町は、たびたび、冬季オリンピック立候補の話題がのぼるが結局財政負担の面で市民の理解が十分得られず立候補に至っていない。

今年のトロムソは昨年と異なりほとんど雪が無い。昨年は空港駐車場からレンタカーを出すだけでも、雪に埋もれて、大往生したが、今年はまったく雪なし。道路もとても走りやすいが、明日からの山スキーには不安を覚えた。トロムソ市内のホテルで、蔵田さんをピックアップし、ちょっとインフォメーションに寄ってから、リンゲンに向かう。リンゲンへの道も、今年は、雪もなく快適ドライブ。1年ぶりの、マジックマウンテンロッジは、オーナーもその奥さんもよく覚えてくれていて、大歓迎を受けた(春花効果が大きいが・・)。

2014年3月8日(土) 図1、図2(赤▲の1)

宿950 小雨 (Car) 1010 Rornestinden登山口 (標高30m)1030 --(シール登行)-- 1300 雪 SKhytta (標高330m) 1400 〜(滑降)〜 1510 雨 登山口1525 (Car)1535 宿

今日は小雨だった。でも、初日。Lyngseidetの町の背後の山、Rornestinden に向かう途中、森林限界にあるSKhyttaまでなら行けるだろう、また、そこまで行けば雨でなくて雪かな、と、期待して山に入る。登山口の駐車場には車が3台。駐車場は最近の雨のおかげで、まるでスケートリンクのようにかちかちに凍っている。

ともかく、登山口からスキーをはいてスタートする。はるかは、リフトのあるゲレンデスキーにしっかり慣れてしまい、リフトがないと嫌だとゴネる。なんとか、それを、なだめすかして登る。ルートは昨年の失敗を生かして、まずは、クロカンコース沿いに200mほど西に向かう。そこでクロカンコースは二手に別れるが左手の少し登り気味のコースを辿ると、しばらくして、左手に、SKhyttaに向かう

切り開きコースが見つかる。

去年はふわふわと新雪粉雪だったが、今年はかちかちの雪に雨。コンディションは最悪である。切り開き沿いに登る。いやいやする春花をだましだまし登らせる。標高250m付近から雪に変わる。この上は、やや重い新雪である。あまり深くないラッセルをしながら、吹雪の中を登る。Hytta(山小屋)がガスに隠れてなかなかみつからない。標高300m付近の森林限界で少し右往左往するも、なんとか小屋を見つける。10数年ぶりのSKhyttaである。たしか、佳恵と結婚した翌年に来て以来だと思う。昔は施錠されていたが、今は、無施錠で、だれでも入れる。外はますます雪が強くなっているが、中は快適だった。春花は小屋のゲストブックに可愛い絵を描く(後日、これが、結構評判になったようで、数日後、町のインフォメーションに寄ったときや、宿の他のお客さんに声を掛けられた)。

吹雪のおかげで、下りは途中までは、結構楽しい新雪滑降になった。

ただし、登山口に降りると、本降りの土砂降りで、車に荷物を投げ入れ、宿に逃げ帰った。日本だと、このあと、温泉なのだが、ノルウェーには温泉が無い、残念。

2014年3月9日(日) 図1、図2(赤▲の2)

宿950 雪 (Car) 1045 曇 Sor-Lenangen(標高0m) 1100 --(シール登行)-- 1210曇 Bjorndalen (標高250m)1230 〜(滑降)〜1330 雨 Sor-Lenangen 1345(Car) 1415 雨 Russevalri 登山口 (Car) 1515 雨 Daltinden 登山口 (Car) 1535雨 Sjollihytta登山口 (Car) 1610 雨 宿 ( Car) Rotenvikvatnet 登山口 (Car) 1630 雨 (Car) 1650 雨 宿

今日は、蔵田さん、佳恵、春花は、犬ぞりツアーのはずだったが、雨で、その犬ぞりツアーが中止となり、結局、4人で山スキーとなった。天気は地元観光局の犬ぞりツアーが中止になるくらいだから、ろくな天気ではない。とりあえず、下見がてら、昨年、地元の山スキーグループが楽しくダウンヒルしていたBjorndalenに行ってみる。

宿は雪だったが、半島を、宿とは反対の側に回ってみると、曇だった。西のTromso方面の空は真っ黒だったが、とにかく出発する。ヒース帯〜樹林帯を抜けて、Bjorndalenの壁を登るもカッチンカッチンのアイスバーン。天気もますます怪しくなってきたので、壁の途中で断念。結果的には、これは、良い判断だったようで、車に戻ったところで、強い雨になる。この日は、このあと、今後のためにロケハンをやって宿に戻った。

2014年3月10日(月) 図1、図2(赤▲の3)

宿910 小雨 (Car) 930 曇 Sjollihytta登山口(標高30m)950 --(シール登行)--1120 曇 Sjollihytta ( Kvalvikhytta) (標高330m)1320 雨 〜(滑降)〜1410雨 登山口 1420 (Car) 1500 雨 宿

今日も雨である。仕方がなく今日も山小屋終点のルートにする。昨日、ロケハンした中の、Sjollihytta(山小屋)に行くことにする。ここもSKhytta同様、10数年ぶりの訪問となる。登山口の駐車場は一昨日同様、まるでスケートリンク状態。慎重に、転ばないようにして、スキーをつけて出発する。今日はかなり風が強い。このルートも山小屋までは切り開きを進む。シュプールの跡を追いながら進むこと1時間半で山小屋に到着。今日も雲行きが悪いので、ここで終わり。10数年前は入れなかった小屋に入る。ここも室内は快適。ここでも、春花は、ゲストブックに可愛い絵を描いていた。

下りは悪雪。ただ、春花はあまりこの悪雪は気にならないようで、スイスイと滑っていた。

2014年3月11日(火) 図1、図2(赤▲の4)

宿910 晴 (Car) 930 Rotenvikvatnet 登山口(標高120m) 950 --(シール登行)-- 1110 晴 Rotenvikvatnet (標高500m) 1120 (標高30m)1200 曇Rotenvikfjellet (標高600m) 1215 〜(滑降)〜 1315 曇 登山口 1345 (Car)1405 曇 宿

今朝起きると外は吹雪でやる気がそがれるも、9時前に晴れた。久しぶりの好天に、宿の中も出発準備で喧噪となる。このMagic Mountain Lodgeは、Lyngenで、山スキーをする人間が世界中から集まる宿で、夕食時から夜のパブタイムの間は、山スキーの話で盛り上がる人が多い。金曜の夜などはディスコタイムとなり踊っている人もいるが・・・。というわけで、悪天つづきで、モヤモヤしていた山スキーフリークたちが9時になって一斉に出発。我々もまけじと出発する。

場所は、10数年前に行ったRotenvikvatnetの背後の氷河Rotenvikbreenにする。

登山口から登りだして1時間でRotenvikvatnet(湖)に到着。ここでビックリ。氷河が無い!!10数年前とは状況が一変。氷河の後退が著しい。仕方がなく行き先を湖の南、Rotenvikfjelletか、南の奥のRundtindenに変更する。正午前にはRotenvikfjlletは射程距離に入ったが、より標高の高いRundtindenに向かうか悩む。結局、雲行きが怪しくなっていること(表紙写真)、Rundtindenに行くには一旦湖まで降りないといけないことから、Rotenvikfjelletに決めた。

表紙写真(下写真)からも判るように、標高600mとはいえ、風景も山の厳しさも日本の3000m級である。



山頂からの眺望は、すでに、雲底が下がってきていて、眼下のStorfjordも、背後の、氷河を落としたリンゲンアルプスの峰々も、切れ切れの雲間に垣間見るだけではあったが、逆に、このエリアの凄さ厳しさがよく感じられる景色だった。

ちなみに、ノルウェー人やドイツ人、フランス人パーティの多くは、Rotenvikvatnetの北側のFastdalstinden 1275mを登っていた。Rotenvikfjelletからは、米粒のように見える彼らが、Fatdalstindenの脇腹を、ガスを追いつつゆっくりゆっくり登っていく様がよく望めた。

天候はどんどん下っていくかんじで、長居は無用で下山にかかる。雪質は、湖までは、ちょっとひっかかる感じはあったがまあまあだった。しかし、湖より下は悪雪だった。

2014年3月12日(水) 図1

宿900 雨 (Car) Lyngseidet港 910 (Ferry) 950 Olderdalen港 雨 1000 (Car) 1120 曇 Skjervoy 1230 (Car) 1400 雪 Kvaengangstfjellet (Car) 1430 雨Storslett 1515 (Car) 1600 雨 Olderdalen港 (Ferry) 1700 Lyngseidet港 1740(Car) 1745 晴 宿

今日は夕方まで終日雨だった。仕方がなく、より北方に、山スキーに良い山がないか探すために、ドライブに出かけた。そして久しぶりに北緯70度を超えるとともに、いくつか面白い山も見つけた。また、この日の夜は快晴となり、素晴らしいオーロラを堪能した。10年ぶりに、スカートの裾が舞うような激しい動きを見ることもできた。ただし、満月だったため、月の明かりが邪魔して、色は白が多かったのはちょっと残念。

2014年3月13日(木) 図1、図2(赤▲の1)

宿850 吹雪 (Car) 900 Rornestinden登山口 (標高30m)915 --(シール登行)--1100 吹雪 SKhytta (標高330m) 1200 〜(滑降)〜 1230 吹雪 登山口 (Car) 1250 宿

今日は天気予報どおり吹雪。いろいろ考えたが、明日天気が良くなることを祈って、今日は、初日に登ったSKhyttaを再訪することにした。一度登ったルートなので、安心したのか、それとも、体が慣れてきたのか、今日の春花は絶好調。吹雪の中ではあったが1時間45分で、春花も登り切った。下りはもちろんパウダースノーを満喫した。

2014年3月14日(金) 図1、図2(赤▲の5)

宿840 雪 (Car) Lyngseidet港 915 (Ferry) Olderdalen港 雨 955 (Car) 1030LangslettからStorslettに抜ける峠 (標高220m) 雪 1045 --(シール登行)--1320 雪 Bertelfjellet (標高637m)1340 〜(滑降)〜 1440 雪 峠 1500 (Car) 1600 雨 Olderdalen港 1700 (Ferry) 1740雨 Lyngseidet港 (Car) 1745 宿

最終日も結局雪だった。いろいろ悩んだが、一昨日ロケハンした、国道E6号線のLangslettからStorslettに抜ける峠の駐車場から、Bertelfjelletに登ることにした。標高差が低いこと、リンゲン半島の二千mの連峰の背後の山のため風が弱いと判断して、ここにした。結構樹林が濃いこと、枝尾根の多い地形だったことから、ルートファインディングに難儀したが、吹雪ではあったが風はそんなに強くなく、また、途中、ノルウェー人の先行トレースも使わせてもらい、なんとか、頂きに登った。山頂からは、吹雪で何も見えず。しかし、ダウンヒルはこの1週間でもっとも良い雪質、もっとも面白い滑りを楽しんだ。

2014年3月15日(土) 図1、図2

宿1000 曇 (Car) 1025 Svensby港 1115 (Ferry) 1135 曇 Breivikeidet港 (Car) 1210 Tromso市内(AMIホテル)(Car) 1230 曇 Tromso空港 雪 1630 (SK4423) 1830晴 Oslo

帰りの道は、圧雪道で神経を使う。行きとは異なり、かなりの雪が積もった様子。この1週間の悪天状況がよくわかる。トロムソ市内のホテルで蔵田さんと別れ、トロムソ空港からオスロ行きに乗る。

2014年3月16日(日)〜17日(月) 図1

Oslo 630 (LH865) 810 Frankfurt 1130 (NH204) 3/17 620 羽田空港

今回は、いままでのノルウェー山スキー行の中では、もっとも、悪天荒天の山スキーだった。このため、結果的には全行程、4人一緒で、5歳の春花もいつも一緒に山スキーとなった。

春花としては、雨や吹雪の中、毎日毎日山スキーでたいへんだったと思うが、滑りについては、どんな雪でも、すいすい滑って来れるようになり、大きな進歩が感じられた。ただ、帰国後、もう山スキーは嫌、とのこと。まあ、もう少し大きくなり、登りもスノーシューではなくて、スキーとシールで登れるようになったときに山スキー再開できれば良いと思っている。

蔵田さんには、物足りない毎日ではなかったかな、と、申し訳なかったな、と、思っている。このリンゲン半島は、厳しい山スキールートが多く、天候が悪いと、今回のように、山麓でお茶を濁すような山行しかできない。たしかに、地元のノルウェー人以外は、ドイツ人もイタリア人もフランス人もガイドを雇って、毎日、山行をしていた。どうしても悪天候では、森林限界より上は、ガイドがいないとどうしようもない。雪質は前半いまいちだったが、13日、14日と楽しいパウダースノーが楽しめて、まずまず、だった。

2015年は、場所を変えて、ノルウェー北極圏の中では、やや南部、Nordland県のTysfjordエリアに行くことにした(図1参照)。このエリアはNordlandの中心都市Bodoと最北の工業港湾都市Narvikの間にあるエリアで、ディズニーの映画にでてきそうな奇勝名峰の数々が見られるエリアだ。リンゲンほどには山高くなく、ナルビクほどには山深くないので、3月前半としては、手頃な山スキーができると思っている。はじめてのエリアであることから、2015年は少し慎重に構えて行きたいと思っている。メンバーは岩 毅、岩佳恵、蔵田道子。一昨年、昨年と異なり春花がいないため、本格的山スキーに戻せるだろう。

記:岩 毅

 


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