Last Update : 2015/06/27 戻る

大戸岳 (標高1,416m・会津若松市最高峰)

平成27年4月25日  天気:快晴 

メンバー:梅原秀一(単独)

著名でない静かな山を選ぶのに障害となるのは、アクセスの悪さである。林道を自分で運転するのは自殺行為に等しく、鉄道・バス路線からあまり離れていない山を探すとなると、選択肢はあまり多くはない。この大戸岳は、往路のみタクシーを利用することにした。季節はこの地方なら丁度桜爛漫。山登りだけを楽しむのはもったいない。

 登山前日は、会津若松市の桜を求めて歩き回った。飯盛山では思いがけず、県立会津高校生の「白虎隊剣舞」を見学出来た。武道の要素は濃くないけれど、史実を伝えようとする高校生の真剣さを感じた。鶴ヶ城の堀端では、一陣の風で激しい桜吹雪に包まれた。絢爛たる、それでいて淡い寂寥感を覚える、美しくも不思議な瞬間であった。

会津若松駅から宿泊する芦ノ牧温泉気までバスで45分。会津で東山温泉に次ぐ著名な温泉の割には、廃業して廃墟となりつつある旅館・バー・ストリップ劇場が目立った。温泉地の典型的な土産物屋兼酒屋兼雑貨屋はお客が無くひっそりしているのに、その前のセブン・イレブンは人だかりであった。

4月25日、宿の朝食は摂らずに出発。やる気のなさそうなフロントは懸念していたとおり、タクシーの予約を忘れていて、約20分出発が遅れた。タクシーは闇川(クラワワ)集落の登山口まで入った。料金は約2千円5百円だった。

登山口には「熊注意!」の大きな看板がある。熊が頻繁に出没する山だそうで、鈴をつけ、いざとなったらストックのカバーを外して、居合の突き技で対処することにした。

自動車を締め出している荒俣林道を暫く進むと、残雪が所々道を半分にしていた。

大荒俣沢を小橋で渡り、この沢と小荒又沢に挟まれた尾根に取ついた。イワウチワとベニハナイワカガミの群生するのどかな春のブナ林は、標高約千mで雪原へと急変した。アイゼンを装着して、標高1,291mピークに延びる尾根を西に外れて稜線に立って山頂を間近にしても、手前に「風の三郎」という露岩のピークが立ちはだかる。4月下旬なので稜線の雪はすっかり消えていると予想していたのに反して、たっぷりと雪があった。こんな固い雪が付いた痩せ尾根を、単独で進むのは危ない。と感じて、登頂を簡単に諦め、往路を引き返すことにした。

 復路は会津鉄道・芦ノ牧温泉駅まで歩き通した。登山道を終えてからの、川沿いに緩やかに下る7q以上の舗装路はいつもならうんざりしてしまうが、桜・山桜・躑躅・ラッパスイセンなどの百花繚乱に、鼻歌が思わず出てしまう。

 芦ノ牧温泉駅では、大変残念なことに、猫の駅長と駅長見習いに会えなかった。駅長は高齢者のため、病院の定期診断で不在。駅長見習いはお昼寝中とのことだった。

この駅は昔ながらの木造平屋で、ペんぺん草の生えるプラットホームと線路沿いの桜並木が猫達とともに、大勢の観光客を呼び寄せていた。そういえば、改築前の中央線・武蔵境駅のローカル線の雰囲気は、心を和ませてくれた。現在の都内では、デザインに全く配慮しない画一的な駅舎ばかりとなってしまった。

 岩稜の積雪のため登頂は出来なかったのは、少々残念であったけれど、静かな山歩きを楽しめた。山スキーの視点からすると、大戸岳山頂からの山スキーは、地形からして困難であろう。ただ、東の隣の1,291mからならば、今回辿った尾根を主体に、ブナ林の山スキーを楽しめるだろう。滑降距離は短いけれども。このような東北のあまり知られていないコースを開拓するのも、興味深い。

[タイム]
登山口(荒俣林道入口)7:25→大荒又沢を橋で渡たる7:40→稜線9:20→9:45風の三郎9:50→大荒俣沢を橋で渡る11:15→登山口11:35→12:40会津鉄道・芦ノ牧温泉駅

梅原 記



イワウチワの群生

 


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