Last Update : 2017/04/02 戻る

横前倉山(栂池〜北小谷)

【日程】2017年3月4日(土)

【山域】 北ア・天狗原(2,204m)〜横前倉山(1,907m)

【構成】 L:田中 M:菅澤

3月3日
 山スキーをする者にとって豪雪地の北東斜面は魅力的だ。天狗原から横前倉山を越えるルートは2カ所の北東斜面を繋ぐ長丁場である。2月の第3週がベストと言われるタイミングにはやや遅いが、日の長さからは好都合となる。体力ある内に行こうと菅澤氏に持ちかけ、快く応じて戴き本山行となった。

 春スキー運転再開初日、朝一のロープウェイに乗るべく栂池高原に前泊を決め、夜道をひた走る。路面に雪は無いが小川村を過ぎて姫川谷に入ると急に雪深くなり、昨年のような雪不足の不安は消え失せた。車中泊やテン泊するよりは天国の素泊り宿の冷たい布団に潜り込む。

<タイム> 練馬区高松6 18:20→(約260km)→ 22:05 栂池高原

3月4日
 天狗原から山ノ神(1,990m)北面・唐松沢左俣を滑り、風吹大池に登り上げた後、横前倉山の大きな北東斜面を滑り、夏道の登山口から林道沿いに沢入集落・来馬温泉に下るのが今回のルートである。

 天狗原から風吹大池までのルートとしては、@フスブリ山(1,944m)を越える尾根通し、A天狗原から直ぐに滑り込める唐松沢右俣(本谷)を下る、B右俣と左俣を分ける尾根筋北側を辿る、そしてC今回山行のルートが考えられる。@は尾根上の雪面が滑り難く、細かなアップダウンやフスブリ山の登りに体力を消耗させられること、Aは沢芯に穴があったという報告事例や沢形状が滑降向きと思えないことで不採用。Bは二俣に出る最終段階で藪に捕まる怖れから、今回ル−トの積雪状態が悪いときのエスケープルートであろうと考えた。

 7時半、運転開始30分前のゴンドラ乗り場にはもう行列ができていた。幸い20番目位なので本日から運転開始のロープウェイ始発乗車は確保できたと同然だ。ここの乗車券購入は登山届提出と引替えであり、窓口の売り子は届出紙面を見ながら、コースの確認、山岳保険加入の有無を尋ねてきた。始発ロープウェイの車内で地元遭対の指導員によるレクチャー、自然園駅の出口での県警大町署員や遭対指導員の事故防止の呼びかけに春山シーズン到来を感じた。



 やや霞っぽいが快晴、風弱く、素手でも寒くないの気温は-5〜0℃位か、日焼け止めを塗り先行者18人の後を追う。天狗原へは1時間ほどの登りであるが、やはり空気は冷たいのか呼吸が荒くなると気管が痛い。なだらかな天狗原でのルート取りは意外と難しい。GPSで進路確認中にフスブリ山経由の4人組に追いつかれる。

 彼らを見送りながらシールを外し、予定ポイントを西にやや大回りして2,072mPの尾根に乗る。 尾根上は風の影響で小さなアップダウンが歩き難く、緩い斜面の滑らぬ雪に汗をかく。予定より20mほど低くなってしまったが何とか左俣のドロップポイントに辿り着く。苦労の原因は、ここまでの斜面の植生が地形図上は草地であるが、現実は樹高5mほどの針葉樹林であったことだ。余裕があれば、通称“裏ヒヨ”を一滑り(天狗原2,204mの東の2,160mのピークから親沢源頭を150m程度)して2,072mPに登り返し、北東への尾根上を左俣源頭に至るのが楽しめそうだ。







 左俣源頭の斜面は、気温が高いためやや重だが深雪パウダー、暫し満喫。150mも下がると傾斜の緩くなった広い沢は複雑な起伏の地形となる。視界が利いても雪で覆われた複雑な起伏ではGPS頼りとなる。予定の二俣ポイントより標高の稼げる西側で右俣(本谷)に下りるルートを探索中にボーダー6人組(男4、女2)が後ろから現れた。沢芯に入って昼食、シール登行準備、6人組も休憩。この直ぐ下流側が二俣ポイントであった。



 スプリットボードの6人組が先発、的確なルート取りである。ブーツの高さ程度のラッセルであるが重い雪であり助けられた。約40分程で稜線上に上がると彼らはもう大池の上を歩いていた。朝日〜雪倉、白馬の山々が逆光気味だが美しい。

 シールのまま6人組の後を追うも、彼らは小敷池を北側に巻き岩菅山南の急斜面で立ち往生してしまった。南面のアイスバーンに遭遇したようでボード組には辛い。ここは雪崩の危険性もあるため、池の南岸を巻き、横前倉山との鞍部を目指してジグを切る。ここから先は彼らに代わり先頭を進む。ほぼ予定時刻に横前倉山着、なだらかな山頂部を東に進んだドロップポイントにて滑降準備、暫し彼らと談笑。彼らは地元在住の同年代グループ、礼儀正しい気持ちの良い青年達だった。横前倉山の滑降コース、難しいとされる小尾根取付き点や要注意箇所等をリーダー格に教えて貰う。

 50mほど一旦北東に滑り降り、ほぼ真東に横前倉の大斜面を滑る。出だしの急斜面も膝まで入る柔らかく深い雪で気持ちが良い。ただ、陽射しの影響を受ける部分での抵抗の変化に足が疲れる。小生は10ターン以上の連続には耐えれず、何回も立ち止まりながらの滑降となってしまった。やがて急斜面はブナの疎林へとなり、風に叩かれていない雪を楽しむ‥最高!。



 小さな沢形を挟んで北隣を滑り下りた6人組が休んでいた場所で当方も休憩。ここから先が想像以上に手強かった。痩せた尾根筋と波打つトリッキーな起伏、横滑りのできない“かき氷”状の雪、落ちたらアウトと注意された北俣沢(小尾根の左側)は見るからに険悪。先行の6人組も壺足で歩いた難所の連続を階段下がりのカニ歩き等々、持てる体力と技術を駆使してクリア、南俣沢の橋へは遠回りの林道を離れてショートカット、だが疲れた足で腐れ雪斜面の急降下は辛い。斜滑降を繰り返しどうにか橋に辿り着くも、ここで軽装の単独スキーヤーに抜かれ、体力の衰えを痛感。

 ここまで予定時間より早く歩けてはいるが座り込んだら足に来そうだ。シールを付けて歩いている方が足休めになるとばかりに歩き出す。林道沿いに30分弱進み標高940m付近の滑走可能ポイントでシールを外す。しかし、もう林道ショートカットで急斜面を遊ぶ余力は無い。多くの記録も750m付近からは林道を素直に下りている。素直に林道を辿るも表面が凍った雪面の滑りは気が抜けない。必死の馬橇スキーで除雪終了点に辿り着く。フスブリ山経由の4人組には負けなかったと自己満足、姫川対岸の北小谷駅を目指す。



 何時もは辛い舗装路歩きだが、今日は期待通りの充実した山行の達成感で足が軽い。天候と同行者に恵まれ、途中からは6人組の先導にも恵まれた。ルート判断の苦労が無かった分1時間程度は短縮できたのではと思われる。機会あれば2月半ばに再訪したいコースだが体力が残っているか怪しい限りである。 

記:田中

[同行者感想要約]

 (横前倉山)山頂東端で滑降準備。大斜面の左側を滑っていくボーダー達を見送り、東側斜面を目指した。典型的な雪崩地形だが今日の雪は安定的と判断、それでも沢状は避けて急斜面に飛び込む。少し引っかかる雪だが疎林のオープンバーンを堪能した。標高差500mのこれほどの大斜面にはめったにお目にかかれない。

 1250m地点から極狭の夏道尾根に乗るところはわかりにくく、ボーダーの先行トレースを辿る。左側の沢は15mほど切れ落ちていて転落したらただではすまず緊張する。彼らは歩いて渡っていたがスキー技術を駆使して下った。林道から880m地点の橋へショートカットしたところは横滑りもできないグサグサの雪で、斜滑降を繰り返して降りた。

 橋でシールを付けて林道を辿ったが右側斜面は雪崩そうな地形が続いていた。シールを外して林道を滑る。ショートカットできそうな樹林帯が何箇所かあったがMPPだったので、忠実に林道を辿り、来馬集落の除雪終了点に予定より一時間早く下山できた。天候と諸条件に恵まれ、無事に完走できたことに感謝し、達成感一杯の握手を交わす。

 北小谷駅まで30分の舗装道路は疲れきった腿のクールダウンと思うことにした。 栂池の蕎麦屋でジンギスカン料理を食べながら飲んだ酒は今シーズン一番の美酒だった。

記:菅澤

<タイム> 宿 7:25 >> 7:30 栂池高原駅(820m)8:00→(ゴンドラ・ロープウェイ)→ 8:40自然園(1,820m) 8:55 >> 9:55 天狗原(滑走準備)10:15 〜>> 10:45唐松沢左俣DP〜〜11:05 唐松沢二俣(1,595m、シール装着)11:20 >> 12:10 風吹大池上(1,820m) 〜>> 12:55 横前倉山(1,907m、DP移動・滑走準備) 13:20 〜〜13:40 P1,371m西(休憩)13:50〜〜13:55 小尾根取付(夏道、1,250m)〜〜14:30南俣沢の橋(880m、シール装着)14:40 >> 15:05 P1058mとP852mの中間点(940m)15:15〜〜 15:50沢入集落(473m)16:00 >> 来馬温泉 >> 16:40 北小谷駅 17:37→(JR)→17:52南小谷17:57→(バス)→ 18:35栂池高原・宿 

<メモ> 走行;高松6〜栂池高原往復、約520Km(高速;練馬〜長野5,060円、更埴〜練馬3,800円) 民宿;ロッヂ招仙 0261-83-2705 素泊3,550円×2泊 ゴンドラ・ロープウェイ;片道1,920円 JR;北小谷17:37→南小谷17:52(210円)、村営バス;南小谷17:57→栂池高原18:26(520円) (参考;来馬温泉〜栂池高原駅:15.2Km/タクシー冬期料金約6,700円/30分) 登山届け;2017年3月4日栂池高原ゴンドラチケット売場提出



 


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