Last Update : 2017/10/28 戻る

錦繍の栂海新道

2017年10月7日〜9日

参加者 田中秀、菅澤

10月6日(金) 雨
大泉IC15:00 =糸魚川IC= 19:30「ひすいの湯」(泊) 

S君の車で大雨の光が丘を発ち、上石神井駅で田中さんをPU、糸魚川へ向かった。 翌日の入山日が雨予報なので、蓮華温泉からの長いコースはやめて、急だけど短い富山側からの入山に変更した。

10月7日(土) 曇/雨
「ひすいの湯」4:30=親不知天険口駐車場(R8天険トンネル東口、80m)5:15=(タクシー)=北又小屋(700m) 6:30/6:45 -五合目(ブナ平1305m) 8:55-イブリ山(1791m) 10:50/11:00-夕日ケ原12:00-13:10朝日小屋(2144m、泊)  

 親不知天険口駐車場に車を置き、予約しておいたタクシーで北又小屋へ向う。1000円/1人の補助制度のおかげでタクシー料金は11000円で済んだ。地域振興策としてはありがたい制度だ。

 北又小屋で登山計画書を提出し、北俣ダムの下まで50mほど階段を下り、ダムの下にかかる吊橋を対岸へ渡ったところから急登の連続が始まる。幸いにも雨はやんでいた。

 朝日小屋までは標高差1500mあるのでゆっくり登っていく。ほぼ標高100mごとに合目表示がイブリ山まで続いているので、ペース配分が取りやすい。五合目周辺はブナ林になっていた。イブリ山の先にクサリ場があり、夕日ケ原は広い草原と地塘が広がる。

 木道を歩いていると雨の粒が大きくなったので雨具を付ける。朝日平に出てまもなく三角屋根の建物が見えてきた。テント場に出て朝日小屋に到着。

 談話室で夕食時間まで楽しみ過ぎ、担ぎ上げた米精はなくなってしまった。外は本降りの雨になっている。明日が小屋閉めで、缶ビールが一本サービスされた。評判の食事はさほどでもなく、名物女将の口上が押し付けがましく感じられた。本日の宿泊者のうち16名と14名のツアーを含めて50名もが栂海新道に向う予定と聞かされ、栂海山荘の混雑が思いやられる。

 夜半に起きると満月が明るく、満天の星空になっていて、明日の好天が約束されているようで安心した。ウォッシュレットのトイレには驚いたが、電源が落ちていて効用がなかった。

10月8日(日) 快晴
朝日小屋(2144m)5:35--朝日岳(2418m) 6:30/6:40--吹上コル(2227m) 7:05/7:25-長栂山(2267m)-アヤメ平9:35-黒岩平-黒岩山(1624m) 9:55/10:05--サワガニ山(1612m) 11:25/11:30-北又ノ水場12:05/12:30-犬ヶ岳(1593m) 13:15/13:25- 13:35栂海山荘(1550m)   

赤くなる東の空を眺めながら朝日岳山頂に向う。快晴だ。

 朝日岳山頂から南の清水尾根のむこうに剣岳の三角形の山容が印象的だ。剣岳は今回縦走の後半でもずっと見えていた。北にはこれから歩く栂海新道の山なみが雲海のうえに浮かんでいた。

 栂海新道のスタート地点・吹上コルには『吹上げのコル 栂海新道を経て親不知、日本海へ さわがに山岳会』の標識が立っていた。金属プレートに文字を打ち抜いた標識は終着点まで各所に立てられていた。

 オオシラビソの林を抜けると一気に視界が広がり、木道となった。右手に「照葉の池」が見える。木道は長栂山の手前まで続いている。

 広い砂礫の長栂山山頂は縦走路から少し離れていたがせっかくだから踏んで行く。東に北信の山々が、西には黒部河口が見えた。

 ここを下ると眼下にアヤメ平の湿原が広がっていた。高山植物の時期は終わっていたが、標高1600m前後の紅葉は最盛期を迎えていて、一日中錦繍の山を楽しむことができた。紅葉も綺麗だが黄葉がすばらしい。地塘部分は木道が続くが、樹林帯のなかの道はぬかるみが多く、坂田峠まで随所にあった。はじめのうちは潜らない場所を選んで歩いていたが、そのうち面倒になりズボズボ歩く。

 朝日岳から遠望したときは初雪山(1596m)を犬ヶ岳と間違えていたが、初雪山は立派な山容で存在感がある。「北アルプス最後の楽園」といわれる黒岩平の広い草原に出た。正面に犬ヶ岳が見えてきた。栂海山荘がその奥にあるはずだがまだまだ遠い。黒岩山の手前で小滝駅に向う中俣新道が右に分かれていた。

 黒岩山を越えて「文子の池」に出た。S君は「奥さんと同じ名前だ」と写真を撮っていたが、新道開削に参加した人の名前だという。倒れている標識を起こそうとしたがびくともしなかった。 

 黒岩山から先のルートはピークを忠実に辿っていて、巻き道はほとんどない。きつい登りでサワガニ山頂へ到着。朝日小屋で用意してもらったます寿司を食べる。旨かった。

 切れ落ちた稜線を辿り、北俣の水場に到着。ヤブに覆われた細い沢筋を数分下ると右手から豊富な水が流れ込んでいた。水の補給ついでに体をぬぐう。2キロほど重くなった荷を担ぎ、犬ヶ岳へのヤセ尾根を登る。

 犬ヶ岳山頂から振り返ると朝日岳から歩いてきた山並みがよく見えた。ここが栂海新道のほぼ中間地点で、『栂海新道 開祖 小野健』のプレートがあった。山頂から少し下ると栂海山荘に着いた。

 栂海山荘の1階には銀マットが敷き詰められ、毛布も150枚備え付けられている。早速3枚を使わせてもらって寝場所を確保した。定員一杯のようだが狭くはなかった。持参した寝具類は結局使わなかった。 田中さんはツェルトで寝るとのこと。良い機会なのでS君にストック利用のツェルトの張り方を勉強してもらう。

 外のテーブルでさて懇談となったが、永年愛用してきたシェラカップが見当たらない。どうも朝日小屋に忘れてきたようだ。

 京都からの5人組みとテーブルを分け合って夕暮れまで楽しんだ。命水もなくなった。ここのトイレはブルーシートに三方を囲われた板敷きと、囲いのない金網敷きの二箇所に分かれ、いずれも鉄パイプが組まれて屋根がある。夜間は魚津方面の灯が眼下に見えるワイルドなものだった。

 栂海新道は「さわがに山岳会」が苦心の末切り開いたことで知られているが、栂海山荘は現在は「ベニズアイ山岳会」によって管理されているとのことで感謝。使用にあたっての協賛金2000円/1人を箱に入れた。満天の星空に天の川が流れる。

10月9日(月・祝) 晴/曇り
栂海山荘(1555m)5:00--黄蓮山6:00-黄蓮の水場6:25/6:40-菊石山(1210m)6:55-下駒ケ岳(1241m)7:30-白鳥水場8:05/8:15-白鳥山(1287m、避難小屋) 8:55/9:05-シキ割の水場(950m)10:10-坂田峠(609m) 11:00--尻高山(677m)11:45/ 11:50-二本松峠12:40/12:45-入道山-栂海新道登山口(親不知天険口駐車場)14:05-親不知海岸14:10/14:20-栂海新道登山口(親不知天険口駐車場)14:30/15:10=親不知IC15:15==21:15練馬IC   

 ヘッドランプを点け樹林帯の急坂を下る。黄蓮山を越え、菊石山に向う鞍部へ急下降し、丁字路を右に下ると黄蓮の水場があった。

 アンモナイト採集の菊石山、両手を使って登る下駒ケ岳など、アップダウンを繰り返し白鳥山へ到着。この4時間の行程がコース中で一番たいへんだった。

 白鳥山頂にある白鳥避難小屋には屋上の展望台に上がれるハシゴが外壁に設置されていた。小屋整備のために上がってきたという地元の人から「途中で熊がどんぐりを食べた痕跡があった」と聞き、気をつけながら下ったが熊とは出会わず痕跡も見つけられなかった。 シキ割の水場の水量は少ないが、喉を潤すには充分だ。

 坂田峠まで金時坂をかなり下り、峠で北陸街道を横切って尻高山へ向う。このあたりからは里山の雰囲気で植生が明らかに違う。杉の大木が多い。ダラダラした尻高山を越えるのがはかどらず、樹木の間から見える日本海まであと二時間と思って頑張る。

 二本松峠から入道山を越え、最後の九十九折れの急降下は気合を入れなおして親不知天険口駐車場に着いた。荷物を車に降ろして親不知海岸まで80m下って海に出た。先行していた若者4人組みと笑顔で挨拶を交わす。北又小屋からの35kmを歩ききり、思わずバンザイと両手を挙げて達成感を味わった。登山道は明瞭で、木道・ヤブ刈など整備されたコースだった。なにより天候に恵まれた山行でした。

菅澤記

栂海新道 写真

 


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