Last Update : 2019/10/19 戻る

水晶岳

2019810日(土)〜11日(日)

 

メンバー :吉岡、B君(高校時代の同級生)

 

往復で30KM近い山行である。フル、ハーフマラソンの現役ランナーを参加条件とした。2名申込を受けたが、うち1名はキャンセル、残ったB君は本格的な山登り、小屋泊は初めてという。装備は逐一、連絡したが、問題は体力。彼は生駒山(642m:大阪府)で実践練習をつんだが2時間で疲労困憊になったという。相手はブナ立尾根、そして水晶岳までランである。フルマラソンは5回ほど完走経験を持つらしいが、山はリタイア=遭難を意味する。棄権が必要と判断した場合、すみやかに、下山することを予告しておいた。

 

810日(土)

5:40  七倉山荘 

すでに高瀬ダム行きのタクシー待ちは40名ほどになっていた。最後尾に並ぶが皆、裏銀座用重装備である。わたしは20L、B君は15Lのザック、そして短パンでゲートオープンを待つ。

前に並ぶ男性が声をかけてきた。

「今日はどこまで行くの?」と上から目線。

「水晶まで行ってきます」とわたし。

「へえーっ・・・・」 やれるもんならやってみろと目が物を言っていた。

 

624 高瀬ダム 1296

登山者は定番のハイカットだが、私たちはアシックスのGEL入りトレランシューズ。実に軽い。軽快にブナ立尾根をすすむ。そして“上から目線男”をあっという間に追い抜いた。「おさきに!!」

 

私たちの“いでたち”と“勢い”そして“危い匂い”を感じたか先行者はみな道を譲ってくれた。決してあおり運転はしていない。

そして追い越す登山者はとうとういなくなっていた。

 

 

 

9:17 烏帽子小屋 2,539

B君は遅れることしばしば。普段の走る筋肉と登る筋肉は異なるのでいたしかたない。さあ、小屋前で給食タイムとしよう。

「足をひっぱってごめんなさい」とB君。

それでも3時間内で北アルプス三大急登を攻略したのでこのセクションは及第点である。まだ、時間も余裕があるので予定通り先に進むこととした。

1225野口五郎小屋 2,868

野口五郎までの稜線は絵画のような配色、見たことのないランニングコースだ。ところが、B君は途中から歩き始めることとなった。フルマラソンは4時間台で終わるがすでに登り始めて5時間を経過しようとしている。彼はこれから未体験の運動ゾーンに突入していくこととなる。

本日最後のエイドステーション、野口五郎小屋で、私たちはカップヌードルを注文した。効率よい塩分補給、美味いと感じた。

ここから水晶小屋まで2時間半、もう歩きだけで十分間に合うだろう。

 

 

 

1307 野口五郎岳 2924

山頂は小屋からすぐのところにある。通過するとき、やはりこれを歌わなければならない。

♪♪改札口で君のこと〜、いつも待ったものでした〜♪ 電車の中からおりてくる君を

探すのが好きでした〜♪

今の時代、私鉄沿線はストーカーの歌だと思う。

気分良く歌うわたしにB君の笑顔に余裕がない。あきれているのか疲れているのかよくわからなかった。

 

真砂岳から先は初心者には慣れない岩場が多かった。彼は慎重にゆっくり足を置いていく。体幹しっかり、一生懸命、安心して見守ることができた。そして市民アスリートの魂を感じた。

 

1540 水晶小屋 2900

ブナ立尾根のアドバンテージをすべて消化しさらに予定より1時間遅れたが、初日の目的達成である。彼は夕食まで横になって体力を回復したいという。フルを完走した時の表情だ。肩で息をしていた。

「おつかれ!!」

わたしはこれまでの稜線をつまみにビールで至福の時を小屋前で過ごした。

水晶小屋の名物カレーライスは食べ放題だ。3杯たいらげた。

「よくそんなに食べれますね」とB君。

ナポリタンを小屋で大量に食べる山岳漫画の主人公を思い出した。島崎三歩。カロリーの補給は山ではとても大切だと説明した。

 

 

 

 

811日(日)

453 水晶岳 2986

B君は体力温存のため登頂はパス、眠ることを優先した。やめる勇気は大切だ。わたしは山頂までひとっ走り、意外と狭かった。雲海からあがるご来光を眺め小屋に戻る。往復で55分だった。これからの下山もかなりエネルギーを消費するはずだ。朝食のごはんは3杯食べた。さあ、高瀬ダムに戻ろう。午前6時、小屋を出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

9:10 お花畑 2775

習うより慣れろというのは言いえて妙。昨日、岩場で怖い思いをしたというB君は山を楽

しんでいる様子だった。野口五郎岳から三ッ岳の間にはお花畑と雪渓がひろがる。贅沢な

稜線、しばらく写真タイムでゆっくり過ごした。

そして烏帽子小屋までの下りは、砂がまいあがるトレイル。大地を蹴っていると人間も動

物であることを実感する。標高2,600mとは思えない暑さ、ペースがあがると酸素が足りなく息苦しいが、この絶景を走れる悦びにくらべると大したことではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

1108 烏帽子小屋

「山の日」でブナ立尾根登り線は自然渋滞の真っただ中だった。

「もう下山ですか、烏帽子岳からですか」

「水晶からです」と得意満面のB君。

「ひゃーっ!!」

すれ違う登山者達の驚きにこのプランの特別さを彼はようやく理解したようだった。

さあ、ゴールはもうすぐだ。

 

1306 登山口

がっちり握手。彼は一生忘れられない経験と語ってくれた。さあ、温泉に行こう。私たちはしっかりと日焼けしていた。

(文、写真:吉岡)


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