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ら・ねーじゅ No.28
1978.5月号


立山・双六・新穂高スキー縦走                  
                     1978年4月28日〜5月5日 

       メンバー:小林正人(全国スキー協全国副会長・オートルートの会)
            小林正和・小林正明・佐藤一二(オートルートの会)  
            矢口政武                      
                               矢口政武記  

4月28日 曇                               
田中さん・伊藤碩志さんの見送りを受けてアルプス7号の比較的空いている列車で 
新宿を出発する。ザックの重量は26Kg+スキー一式6Kg也。        

4月29日                                 
信濃大町に到着5:26 雨。                        
「バスで荷物代を取られるならタクシーの方が得ですよ」の声に乗せられてタクシー
に乗る。明け方の山肌にコブシの白い花がとてもきれいだ。朝早いのに農家の人は 
雨の中、田作りに出ていた。スホーツ権とはいうものの何だか悪いことをしに行く 
ような気持ちであった。扇沢駅は1.5m〜2mの雪が残っていた。金をばら撒く 
ようにして立山黒部アルペンルートの乗り物を乗り継ぎ室堂に着いたのが11時20
分.雨。予定の五色山荘行きをあきらめステーションビバークにしようとしたが、 
禁止されていると知り、雨の中を一の越山荘に向かい素泊まりとする。乾燥室もあ 
り部屋にはコタツもあって快適な一夜を過ごす。夜風強し。           

4月30日 雨霧>曇>晴>曇>晴                      
昨夜は天候が気になってあまり良く寝られなかった。明るくなってきたので、窓を 
あけて見ると雨霧であった。とりあえず出発の準備はしておくとして、力ラーメン 
を作って食べる。7:25山荘を出て竜王岳へ向かう。ガスで展望なし、長靴のス 
キーヤー2人同行する。富山大の研究所の所でスキーを着けて竜王岳を右に巻くが 
急激な下りになり、スキーをザックに付けて降りる。足場が悪く厳しい下りであっ 
た。一瞬ガスが切れ、鬼岳・湯川谷方面が展望でき気分的にも明るくなる。鬼岳を 
スキーで巻き獅子岳の登りで遭難者のザックに出合う。(本年3月のもの)半分雪 
に埋まって、ワカンもあり不気味であったがザックを掘り出し、中を調べると天気 
図が出てきて「Ishigozawa」のサインがあった。(太郎平の小屋には捜 
索のチラシ)があった。獅子岳に登り、ザラ峠まで標高差370m程の滑降。   
雪が腐っていて、スキーを利用しても大分沈む。登山者は膝位まで入り、歩行困難 
を嘆いていた。大斜滑降とキックターンでザラ峠に着き、行動食をぱくつく。   
五色が原に登り返し広い雪原を鷲岳目指して進む。五色が原ヒュッテ・山荘共に一 
階は雪に埋もれていた。鷲岳からの下りにスキーを期待したが、尾根が狭く危険な 
ので諦める。2356mの鞍部で一休みして広大な雪原を越中沢岳へ向かう。時計 
の針も2時半を過ぎ、今日中にスゴ乗越小屋へたどり着くのは困難な状況になって 
きた。越中沢岳に着いた時には陽が大分下がって来た感じであった。そこからの下 
りは岩稜となり、岩の技術を要求される。しかもザックにスキーを付けストックを 
持っては思うに任せず時間は遠慮なく過ぎてゆく。目前に岩峰が現れ佐藤氏が固定 
ザイルを張って何とか切り抜ける。緊張していたためか気が付いてみると、時計は 
6時を回り低くなった太陽から冷たい陽が射していた。越中沢岳とスゴの頭の鞍部 
で幕営と決定した。ツェルトテント1張で5人は入らず、同行していたツァースキー
ヤーのツェルトに2人宿借りする。誠に恥ずかしい思いであった。予期せぬ幕営で 
あったが、極自然にスムーズに幕営を完了し、夕食後、伊藤碩志氏差し入れのダル 
マを楽しむ。夜は満天の星。富山の灯がきれいであった。            

コースタイム                                
起床       5:00       一ノ越山荘     7:25    
富山大立山研究所 8:00/ 8:15 鬼岳・獅子岳鞍部 9:20/9:30
ザラ峠     10:45/11:10 五色が原ヒュッテ11:45     
鷲岳の手前   12:30/12:45 鷲岳頂上   13:00/13:10
2356m鞍部 14:20/14:35 越中沢岳途中 15:20/15:35
越中沢岳頂上  15:50/16:00 越中沢岳・スゴの頭鞍部 18:15 
就床      20:00                         


5月1日 快晴>曇>霧>曇                         
昨夜テントの床の雪面が傾斜していたため、低い所に寝た小生、上部からの圧力に 
抗しきれず、夜中に飛び起きてしまった。寝ている人には罪はなく致し方なく膝を 
抱えて「独り寝の子守り歌」としゃれこんだが、結局寝不足のまま、明け方を迎え 
ることとなった。あまり冷え込まず、朝なのに凍っていなかった。スゴの頭243 
1mより雄大な展望を楽しむ。大きく迫る薬師岳をはじめ見える限りの山々・峰峰 
を地図と首っ引きで確認する。日本海・富山湾がくっきりと見える。このコース中 
最低の地点2150mを目指してスキー滑降。280m余りの標高差を一気に滑る。
快適、快適。いよいよ薬師岳への登り、標高差780m余り、青息吐息で苦闘約7 
時間であった。腐った雪に足を取られギラギラの太陽、肩に食い込むザック、スキー
が恨めしい。慰めは開けていく視界。剱岳・立山・弥陀が原・五色が原・を眺めな 
がら唯ひたすら登る。間山・北薬師岳を経てガラガラの岩場を登り、霧の巻く薬師 
岳頂上にたどり着く。3年前の5月1日にも薬師岳の頂上を踏んでいた。時々有峰 
湖がガスの切れ間に見えた。                         
靴の紐を締め直して、スキーを着けるがガスのため視界が効かず、また雪が悪いた 
めスキーが深く沈む。致し方なく避難小屋まで歩き、再びスキーを着ける。手探り 
同様の滑降を続け、休憩所まで降ったとき視界がぱっと開けた。雪は悪いが視界が 
利けば何とか滑る事が出来る。3年前と異なり、条件が整わないが気分よく滑るこ 
とができた。薬師岳には4時20分に着く。お互いに喜びの握手を交わして太郎平 
小屋へ滑り込み、ビールで乾杯する。その美味かったこと。小屋には乾燥室もあり、
気持ち良い山小屋でした。                          

コースタイム                                
起床        5:00       越中沢岳・スゴ頭鞍部 6:40    
スゴの頭      7:05/7:20  スゴ乗越     7:50/ 8:00
スゴ乗越小屋    8:35/9:05  2500mピーク 9:35/10:25
間山       10:50/11:05 トラバース地点 11:45/11:55
2835mピーク 12:15/12:30 北薬師岳の下  13:00/13:10
北と本峰との鞍部 13:50/14:05 薬師岳頂上   14:30/15:00
休憩所      16:00       薬師峠     16:20/16:40
太郎平小屋    17:00                          


5月2日 霧>曇>晴>曇>晴                        
昨日の頑張りで朝寝坊。予定では一日休養日とすることになっていたが、予報では 
晴れるとのことに太郎平小屋を8時過ぎに出る。せめて黒部五郎小屋まで行ければ 
良いと思っていた。しかし霧で視界が利かず、風も強く吹き付け、前進するにも支 
障がある程であった。迷いながらもやっと北の俣岳に到着。スキーを着けて滑降開 
始するも視界5m余り、気温も急速に下がり始め、見る間に這松に白く樹霜が発達 
する。11時に太郎平小屋へ帰ることを決定し、北の俣岳へ登り、再びスキーを着 
ける。とたんに霧が上がり、ぱっと視界が開けるが、方針通り太郎平小屋へ帰る。 
腐った雪の上面だけ凍ってフィルムクラスト状となり、曲ることは非常に困難であ 
り、ボーゲン専門の滑降となったのは、我ながら技術不足を再確認する結果となっ 
た。小林隊長は踏み替えターンで鮮やかに克服していたので、羨ましい限りであっ 
た。太郎平の小屋には富山からヘリコプターが飛来し、関西方面の人が乗ってきた。
所要時間10分、ひとり3万円とのこと。金を払えば何でもできる世の中か?。ヘ 
リのチャーター料1日60万円とのこと。めったに事故を起こしてはいけないと思っ
た。小屋で味噌汁をもらって昼食をとり休んでいると午後4時頃になり、有峰隊9 
人が到着した。マイクロが有峰湖の上まで入ったとのこと。3年前の2日掛りの入 
山とは大違い。一日で太郎平小屋まで入ったとは幸運でした。夕食後、立山・有峰 
両隊揃って交流会。                             

コースタイム                                
太郎平小屋  8:15  北の俣岳 10:30/10:45         
転進決定  11:00  北の俣岳 11:20/11:25         
太郎平小屋 11:45                           


5月3日 快晴>晴                             
天候の見通しに従い双六小屋まで行くことにする。3年前に15時間要した工程で 
あったが今回は天候・メンバー・雪質などに恵まれ、9時間半で完遂することがで 
きた。立山・有峰両隊合わせて14名の大部隊が北アルプス山中をツァースキーで 
飛ばすということは歴史上でも記録にないと思う。前代未聞の出来事。全てが快調 
順調に運ばれ我が同志会の小森宮・橋爪・藤谷・松森各氏も一パーティとして大い 
に奮闘し、心から嬉しく思った。パーティは立山隊5人、同志会4人、指導員パー 
ティ(田中悌介・橘木嘉苗・矢野敏子・鈴木裕治・長尾正二)5人で構成された。 
北の俣岳の下り、赤木岳の大トラバースの斜滑降、中の俣乗越への滑降、黒部五郎 
への登りは夏時間2時間を約半減して1時間で突破。黒部五郎岳から480m差の 
大滑降。各パーティ毎のトレーン3列縦隊で大斜面を滑り降りる。この様子を見て 
いた登山者は「もう歩くのはいやだ、スキーはいいなー」などと言ったとか?。三 
俣蓮華岳へ登り双六岳との鞍部からトラバースの大斜滑降。そして双六小屋へ滑り 
込む。時計は3時半を少し過ぎていた。3年前にもお世話になった双六小屋の支配 
人三尾氏の歓迎を受ける。今日一日のメンバーの奮闘を祝して角瓶(?レッドの角)
で乾杯、楽しく夕食。8時過ぎ寝袋にはいる。                 

コースタイム                                
起床        5:00       小屋発    6:10      
北の俣岳      7:30/7:40  赤木岳2621mトラバース8:00
2600mとの鞍部 8:10/8:25  中の俣乗越 8:55/9:10  
黒部五郎岳    10:15/10:45 黒部乗越 11:15/11:50 
這松の所一休   12:35/12:45                  
三俣手前の鞍部  13:05/13:15 三俣蓮華岳 14:35/14:45
三俣・双六間ピーク15:10/15:20 双六小屋  15:35      


5月4日 ミゾレ>霧>曇>晴                        
昨夜は風強く、雨の音、ミゾレまたはアラレの音が寝入りの間に間に聞こえ、良く 
寝られなかった。明けて外を見ると霧が濃く時々ミゾレもぱらついている。昨夜の 
天気図から何とも説明がつかず局地的な変化があるとする。そのうち次第に視界が 
利くようになり、8:30双六小屋を出発する。昨夜降ったあられ混じりの新雪が 
所々吹きだまりになり積もっている。稜線に出て弓折岳に向かう。視界が開け、ガ 
スの間に槍の穂先が時々見える。槍・穂高はいかにも高く見える。笠が岳も前方に 
見えてくる。弓折岳手前ピークよりスキーを着けて弓折岳へ登山者が4、5名登っ 
ていた。弓折岳から鏡平方面へ降る降り口は非常な急斜面であるが、雪が適当にゆ 
るんでいるため快適に滑ることが出来た。結局弓折岳から左俣谷に掛かるコンクリー
トの橋まで標高差約1000mの滑降はこの大ツァー行を締めくくるにふさわしい 
スケールの大きいものであった。抜戸岳の各沢から押し出している雪崩のデブリの 
山を乗り越え、わさび平小屋到着11:30。発電所の所までスキーは利用できた。
鎌田林道を新穂高温泉まで約2kmの行程。いろいろ楽しかったこと、苦しかった 
こと話し合いながら下る。新穂高温泉中崎山荘の露天風呂に飛び込み、一週間振り 
の汗を流し、缶ビールで北アルプスツァースキー縦走の成功を祝して乾杯する。  
同志会4人と佐藤一二氏はタクシーで高山へ、残り9人は安房峠越えで松本に出る 
ことにする。中の湯温泉の先で土砂崩れがあって通行止め。タクシーはここまで。 
歩いてトンネルを抜け、バスに乗る。小林一家・鈴木・矢野・矢口は乗鞍の桜木荘 
へ田中・長尾・橘木は松本へ直行することになる。桜木荘着17:00であった。 
2月中旬お世話になったことのお礼を述べ、ゆっくりと休養。桜木荘では十分の歓 
迎を受け、久しぶりに緊張がほぐれた感じ。                  

コースタイム                                
起床          6:00                      
小屋出発        8:30                      
稜線          9:00/9:10                 
弓折岳頂上      10:00/10:15                
シシウドがはら尾根上 10:30/10:45                
左俣谷コンクリート橋 11:00                      
わさび平小屋     11:30                      
発電所        12:00                      
左俣谷第一堰堤    12:35/12:50                
新穂高温泉      13:00/15:00                
中の湯バス停     15:50/16:10                
千石平        17:00                      


ルート図                                  
          

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