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ら・ねーじゅ No.243
1996.2月号


頚城駒ケ岳と赤禿山         
                    1996年1月13日(土)〜14日(日) 
                   L.酒井正裕、藤田英明、高村高也、吉武宗之 

(はじめに)                              
 1月定例山行として迷った挙げ句に頚城駒ヶ岳と赤禿山を選んだ。それは、両山とも標 
高が比較的低く、うまくすれば山麓からそれぞれ日帰りで狙うことが可能であることから 
だった。しかし、最近のマスコミは大変雪が多いという情報を流しており、下手をすれば 
殆ど所期の目的を果たせないまま終わる可能性があった。定例山行としては参加者の少な 
さも気に懸った。                                 
 幸いにして、天候に恵まれたことと予想外に雪が少なかったため(例年よりもはるかに 
少ない)、このことは杞憂に終わり、駒ケ岳ではそれどころか薮こぎを強いられることと 
なったが、全体としては予定の7割方を消化し、赤禿山では快適なスキーが楽しめた。  


(行動概略)                               

1月13日(土) 快晴                          
 前日に急行能登に乗り5時ごろ糸魚川につく。大糸線に乗り換え根知駅から山寺集落ま 
で歩くかあるいは糸魚川からタクシーを使うか迷ったが、結局安易なほうを選ぶ。山寺集 
落まで6千円かかった。2万5千図が頼りだったので、山寺集落の神社を過ぎたすぐ先で 
下車したが、林道は更にその先で梶山集落へ行くものと、山に向かう林道駒ケ岳線に分岐 
し、おまけに雪が少ないためか両方の道とも除雪されていた。駒ケ岳線があるのは知って 
いたが、まさか除雪されているとは知らず、地図にも載っていないことから何処へ向かう 
か分からなかったため、仕方がないことではあったが、時間にして15分以上損をした。 
駒ケ岳山麓は、この駒ケ岳線に限らず縦横無尽に林道が走り、一体何処をどのように林道 
が走っているのか皆目分からないような状態だった。それでも752mの標高点手前まで 
は林道を旨く使って比較的順調に進んだ。しかし、何度か訪れている私にはあまりにも少 
ない積雪量に上部はかなりの薮漕ぎになることは容易に想像できた。案の定、林道を離れ 
て尾根に取り付くと、杉の密植されたどうしようもない斜面を登ることになった。スキー 
が薮にとられてなかなか前に進まなくなってしまった。もともと、このルートはルート図 
集に掲載されているものの、スキーの滑りという点で疑問視されているものであることは 
十分承知していた。上部は別として、駒の南西壁横の逆三角形の斜面下からは春先の雪の 
多い時期で何とか滑ることが可能という状態であることから、如何に薮で苦しめられたか 
想像に難くないだろう。私達は、結局752mの標高点付近から、薮を嫌って障子沢沿い 
にルートを採った。ここは、ルート図通りトレースすることになったが、春先は通常であ 
れば雪崩の危険性が高く、立ち入らない所である。しかし、雪の状態がよいので最初は右 
岸沿いに本来歩くはずの尾根の下部を暫く辿った後、岸壁基部から逆三角形の斜面下へ抜 
けた。正面に駒の南西壁とその右に懸る氷瀑(十一面のかねころ)を仰ぎ見ながらの登り 
だった。空はあくまでも青く澄み渡り、右に見る雨飾り山は雪を全面に纏った神難所沢を 
正面に擁し真っ白に輝いていた。                          
 午後1時には、標高1150mの逆三角形の斜面下に着いたが、下山時の「薮漕ぎスキ 
ー」を考えるとここまでが限度だった。30分ほど休んでから登って来た沢を滑ることに 
する。この沢は広く快適な斜面で、高度差400mほど滑降可能である。岸壁の写真を撮 
りながら、また日陰では粉雪の滑りを楽しみながら、各自思い思いにシュプールを刻んだ。
ただ、雪が少なく部分的には岩が出ていることから、これを避けつつ注意して滑らねばな 
らなかった。                                   
 このような楽しい滑りもやがて終わり、752mの標高点辺りから林道を探して雑木の 
薮の斜面をトラバース気味に進む。                         
 登りの時でさえ苦労したのであるから、下りは押して知るべしであろう。ここは、帰宅 
してから考えたことであるが、そのまま谷を滑ったほうがよかったかもしれない。断言は 
出来ないが、恐らく林道に出るものと思われる。滑り始めてから3時間半、やっとのこと 
で山寺集落に着く。薮の中をよく怪我もせずに滑ってきた(下りてきた)ものだと思った。
ただ、残念ながら糸魚川行きの最終バスにもう少しのところで乗り遅れてしまい、タクシー
で根知駅へ向かう。根知駅は小滝駅より数段広く、大変快適な一夜を過ごさせてくれた。 
注)「かねころ」とはこの地方の方言で「つらら」を意味する。 白水社の登山体系では 
「カネコロン」と標記しているが、「かねころ」が正しいと思われる。         


1月14日(日) 晴れ                          
 根知駅は快適すぎて寝坊したが、藤田さんがメンバーを起こしてくれた。バタバタしな 
がら朝一番の電車で小滝駅に向かう。小滝駅で身支度を整え、暗いうちから歩き出す。当 
初から夏中集落経由で赤禿山に取り付くか、野口集落経由で取り付くか思案していたため、
道すがら出会った人に尋ねてみた。はっきりしなかったが、その人の話では、「野口の集 
落は冬場には人は住んでいないかもしれない。多分道は除雪されていないと思う。夏中集 
落へ向かったほうが確実である。」とのことだった。入りコンバ沢の橋のたもとまで歩く 
とその言葉通り野口集落へ続く林道は除雪されていなかったので、迷わず夏中集落へ向か 
う。道路は意外なほど奥まで除雪されており入りコンバ沢の橋を渡った標高500m付近 
まで続ていた。                                  
 林道はこの先も延びておりシールでのんびり歩く。林道は、すぐ先の標高520m辺り 
でY字路となり、一方は高浪池へ、一方は大峰峠付近を越えて山之坊集落へ延びているも 
のと思われる。大峰峠付近へ延びている林道は地図には記載がなく、恐らく平成7年の集 
中豪雨被害時の平岩への迂回路と思われる。                     
 このY字路を右に行き、平坦な林道を進む。林道は一旦少し下った後にわずかに登り返 
し、少し先で頂上から北東に延びている尾根を乗越して高波の池に延びている。     
 ここから、この尾根に取り付く。この尾根は、中下半部は緩く広いので快適なシール登 
高が出来る。頂上付近になると、やや狭く傾斜も急になり苦しい登りとなるが、それもす 
ぐに終わり、頂上直下の雪庇を避けて赤禿山頂上の北端に出る。ここは、明星山の展望が 
よい。赤禿山の頂上は、ここから少し南へ進んだところにあるが、頚城の山々の展望を除 
けば取りたてた特徴はなく地味ではあるが、それだけに人に出会うこともなく、のんびり 
できるところかもしれない。                            
 ただ、今回の山行は、偶然に人と出会った。上越の山岳会の人達だったが、人と出会う 
とは予想だにせず、お互いに驚いてしまった。「滑る斜面は?」と聞いてみたら、やはり 
私達と同じ北面を滑るという。考え方はやはり全く同じである。            
 山頂からは、西側の薮が比較的濃いので、薮を避けて先ほどの頂上北端に出る。ここか 
ら、向きを西に変え、赤禿山北面の斜面に滑り込む。ブナ林の緩斜面で落ち着いた雰囲気 
の中で乾燥粉雪のスキーが楽しめる。この斜面は比較的複雑であるため、小さな沢を2, 
3本渡った後、方向を変え黒姫山を目印に滑る。暫くすると正面が開け伐採地に出る。こ 
こからは、正面に明星山を仰ぎ、快適な滑りとなった。眼下正面にはゴルジュ状の沢があ 
るので、入り込まないよう、土倉沢出合いの方向を目指して林道の出会うところから左寄 
りにルートを採る。この北斜面はどこまで伐採されているか分からなかったが、この斜面 
を滑り尽くすべく、ルートをゴルジュ状の沢の西側に延びる尾根に採った。この尾根は東 
側が雑木の蜜薮になっておリスキーに向かないので、西側の伐採地を滑る。ここからは、 
送電線を目指して492mの標高点手前のコルと同じ高さまで滑り、トラバースしてコル 
に立つ。                                     
 地図ではこのまま東側に滑り込めそうであるが、実際には急斜面に加え雪庇が出ており 
上部は薮が濃いため、暫く尾根をさらに進み、鉄塔を越えた辺りで滑り込む。滑り込んだ 
ところは平坦な雪原であり、更にここを東側を歩いて急斜面を滑り降りた後、沢を渡渉す 
る。ここは、春先であればスノーブリッジを渡ることができると思う。この沢を渡り終え、
少し歩くとすぐに林道に出る。492mの標高点手前からここまでは地図上では簡単に抜 
けられそうであるが、意外と手間がかかった。林道からは東に進み、フィッシングパーク 
方面に向かう。この辺りは新しい道ができ詳しい状況は把握しづらい。         
 フィッシングパークからは、条件が良いので小滝川沿いの林道を経由して瀬野田集落へ 
向かう。もう時間も遅くなり暗くなる寸前だったが、どうにか日暮れ直前に瀬野田集落に 
着き、暗い中を小滝駅へ向かった。                         
 赤禿山は、駒ヶ岳の薮漕ぎを忘れさせてくれるほど快適で楽しい滑りができた。    



【コースタイム】                               

1/14(土)                                
山寺集落(7:00)標高1150m逆三角形の斜面下(13:00/13:30) 
山寺集落(17:10)                            

1/15(日)                                
小滝駅(6:30)尾根取り付き(8:50)赤禿頂上(12:10/12:55) 
P492m手前のコル(14:30)フィッシングパーク(16:15)瀬野田集落 
(17:00)小滝駅(17:50)                      

【概念図】
                                (酒井正裕 記) 

                                (電子化 作野) 


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